シワやたるみの改善が期待できるダーマルフィラー(フェイシャルフィラー)の人気が急上昇しているイギリスでは、その市場は2028年までに約8100万ドル(約120億円)規模に達すると見込まれている。
「ボトックス」や「ジュビダーム」の開発で知られるアラガン社によると、施術を受けた人は、過去1年間だけでもおよそ550万人にのぼっているという。
ただ、これらの施術にリスクがないわけではない。特に、急成長を遂げるなかで規制が行き届かないイギリスの美容業界では、施術後の合併症や、死亡例も報告されている。
研究結果
アメリカの研究者たちは、フィラーの注入と死亡の危険性もある腎臓の炎症との関連性について、研究を行っている。テキサス州オースティンで開催されるアメリカ美容外科学会の年次総会に向け、研究結果を発表したハーバード大学のアグスティン・ポッソ医師は、「憂慮すべき数の“無資格、または身元が確認できない施術者”がフィラー注入を行っており、腎臓疾患のリスクを劇的に高めている」と警告している。
現在の状況は、「施術が有資格の専門家によって行われることを確実にするための、厳格な規制と教育の必要性を強調するものだ」という。
ポッソ医師によると、研究チームは1984~2022年に報告された29件の症例について、分析を行った。患者の平均年齢は47歳で、そのうち21人が臀部(お尻)、ほか8人はそれぞれ、顔や脚、胸部、腰などにフィラーを注入する施術を受けていた。
また、これらの施術に最も多く使用されていたのは、深いシワや傷跡の改善に使用され、半永久的に効果が続くとされているシリコンとメタクリレートの2種類だった。
シリコンベースのフィラーは、長期的にみた場合の深刻な健康リスクへの懸念から、アメリカでは美容目的での使用が承認されていない。いっぽう、イギリスではその提供が、法的に認められている。
関連性は確実?
専門家らによると、フィラーの注入によって起きたとみられる腎臓の炎症は、報告されている症例数が少なく、「十分に理解されていない」という。だが、報告されていないだけで、影響を受けている患者は「これまでに考えられていたより多い可能性がある」と指摘されている。
発表された研究によれば、施術後に腎臓に起きた問題によって、少なくとも3人が死亡している。また、施術の合併症は、注入からわずか3時間後までに発生する可能性があるという。
いっぽう、イギリスの美容外科医、ソフィー・ショター医師はこうした結果について、次のように述べている。
「はっきりとした原因を説明することができないまま、40年近い間に報告されたわずかこれだけの症例に基づき、推論を公表するのは非常に危険だと思います」
ただ、今後さらに研究を行う必要性を否定するものではなく、「その価値はある」と考えているという。
私たちはどうすべき?
そのほかショター医師は、次のように付け加えている。
「今のところ、このように因果関係を推測し、不安をあおるような見解を公表すべき段階にはないと思います。専門医が取り扱う限り、フィラーは患者の自己肯定感を高めるための、力強いツールだと考えます。実際に、最も人気のある施術方法のひとつであり続けるでしょう」
「重要なのは、質の高い製品を使用した施術を安全な環境で、経験豊富な有資格の医療専門家から受けるということです」
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
From Women’s Health UK