北海道在住の50代女性・Fさんがお礼を伝えたいのは、30年前に出会ったタクシーの運転手だ。
彼にお礼を言うために、出会った場所に何度も何度も通ったものの、再び会うことは出来ず......。
<Fさんからのおたより>
30年ほど前の、真夏の暑い日のことです。
当時2歳の娘と公園の小さな人工池で遊んでいると、娘が突然、大声で泣きだしました。
慌てて池から抱き上げると、娘の足の裏から大量の血が......。
とっさに持っていた帽子でおさえましたが、みるみるうちに真っ赤に染まってしまい、私はオロオロするばかり。すると、公園で休憩していたタクシーの運転手さんに声をかけられました。
タクシーに乗るよう言われたけれど...
「ガラス踏んだかな、深く刺さったかも知れないから病院に行った方がいいよ。タクシー乗りな」と言われたのですが、私はお財布を持っていません。
すると運転手さんが、こう言ってくれたのです。
「お金は後からでいいよ、すぐに病院行こう」
車内で泣きじゃくる娘に「アンパンマン知ってる? おじちゃん歌えるよ!」と声をかけてくれて、娘が泣き止むように一緒に歌いました。お孫さんと歌ってるのかしら? とても上手で、娘も落ち着きました。
そして病院に着いたら、「ジュース買ってあげて」と1000円札を差し出してくれて、私はタクシー代もまだ払ってないのに......。涙が出ました。
娘は足の裏を6針縫う怪我でしたが、すぐに病院に行ったので細菌の心配もありませんでした。
その後「タクシー代を払わなくては!」と思ったのですが、焦っていて慌ててたこともあって、タクシー会社がわかりません。
乗せてもらった公園には何度も何度も行きましたが、運転手さんに会うことはありませんでした。あれから30年......。
孫が「ママの足の裏には優しい傷があるんだよー!」と言っていました。運転手さん、ありがとう!
(※本コラムでは読者の皆さんに投稿していただいた体験談を紹介しています。プライバシー配慮などのために体験談中の場所や固有名詞等の情報を変更している場合がありますので、あらかじめご了承ください)