ブイヤベースはフランスのとても有名な魚料理ですが、白いブイヤベースと呼ばれる「コトリヤード」はあまり知られていませんよね。フランス北西部の郷土料理らしいのですが、緯度が高いため、現地では脂の多い魚を使うのが特徴だとか。そんなコトリヤードを、伝説の家政婦・志麻さんがNHKの番組『きょうの料理』で紹介していましたよ。家庭で作りやすいレシピになっているようなので、さっそく作ってみようと思います。
タサン志麻さんは、辻調理師専門学校、辻調グループフランス校の卒業生で、三つ星レストラン「ジョルジュ・ブラン」での修行後は老舗フランス料理店やビストロで15年間料理人を務めていました。その経験を活かして、家庭の冷蔵庫にある食材で1週間分のつくりおきを3時間で仕上げることから、「予約が取れない伝説の家政婦」という異名を持っています。
志麻さんの「コトリヤード」の材料と作り方
【材料】※3~4人分
シーフードミックス (冷凍)…300g
じゃがいも…4~5個(メークインがおススメ)
にんじん…2本(細めのものがおススメ)
玉ねぎ…1個
水…適量
玉ねぎは縦半分に切ってから縦に薄切りにしておきます。
じゃがいもは3cmの厚さ、にんじんは2cmの厚さの輪切りにしておきます。
バター…20g
白ワイン…50ml
固形スープの素(洋風)…1個
タイム…適宜
ローリエ…適宜
塩…適量
黒こしょう (粗びき)…適量
【作り方】※調理時間:40分
1. 鍋にバターを入れて弱火で熱します。
2. 玉ねぎを加え、じっくりと炒めます。
3. 玉ねぎがしんなりしたら、じゃがいも、にんじんを加えます。
4. 白ワイン、固形スープの素、ヒタヒタの水を加えて強火にし、ひと煮立ちさせます。
5. ポコポコと沸く程度に火を弱めてフタをし、10分間煮ます。
6. 凍ったままのシーフードミックス、タイム、ローリエを加えて再びフタをし、シーフードミックスに火が通るまで煮ます。
7. 味をみて塩と黒こしょうを加えます。
8. 器に盛りつけて出来上がりです。
作りながら、これはポトフ?それともブイヤベース?などと思っていましたが、出来上がりを口へ運んでみるととても口当たりのよいやさしい味のスープに仕上がっていました。シーフードミックスが1袋入っていますので魚介のイメージがありますが、魚介をイチから煮込んでいるわけではないので魚臭さはなく、かえって食べやすくなっている印象です。ゴロゴロと入っている野菜もしっかり味が感じられますし、タイムとローリエで香りづけと臭みけしになってはいますが香りのアクセントになっていて、いかにもフランス料理だなという感じがしました。ちょっと胃腸が弱っているときでも食べられる、とてもやさしい一品です。
コトリヤードもしくはコトリアードは、フランス北西部に位置するブルターニュ地方の郷土料理です。英仏海峡に面していますのですぐそこがイギリスという位置関係で、いろいろな魚介が獲れる地域です。大きな鍋に手あたり次第に魚介と野菜を放り込むというのは世界中の漁師町のお約束のようになっていますが、コトリヤードは魚介から出るだしとチキンコンソメ、後は塩とハーブで味を付けるといったとてもシンプルな料理です。緯度が高いため、水揚げされるサバやニシンなど脂の多い魚を使って作るのも特徴です。
コトリヤードよりもかなり有名なブイヤベースは、フランス南部のプロヴァンス地方の港町マルセイユの郷土料理で、誰が決めたのか知りませんが世界三大スープのひとつとしても知られています。マルセイユは地中海に面していますのでこちらも獲れる魚介は豊富です。作り方に共通点が多いのも漁師町の鍋料理なのだから当たり前のように思いますが、一番の違いはトマトが入るか入らないかにあると思います。コトリヤードは白いブイヤベースと呼ばれるようにトマトは入っておらず、ブイヤベースはトマトが入っていますので出来上がりが赤っぽいといった見た目にも大きな違いがあります。
ちなみに鍋料理なら何を入れてもいいように思えますが、ブイヤベースの伝統を守りたいマルセイユは1980年にブイヤベース憲章を制定しました。地中海沿岸の岩礁に生息するカサゴ、白カサゴ、ケアシガニ、マトウダイ、ホウボウ、アンコウ、オコゼの8種類の中から4種類以上入れることや、鯛、ヒラメ、オマール海老、ムール貝類、タコ、イカは入れないなどのルールを定めたものです。憲章を作ったのはいいのですが結局のところ各家庭や店によって独自のレシピがあるため、その正当性については議論が繰り返されているようです。
とてもやさしい味のスープができますので、ぜひ作ってみてください!