日本三古湯のひとつ、愛媛県松山市の道後温泉。そのシンボルである「道後温泉本館」は、2019年から行われてきた保存修理工事が完了し、2024年7月に5年半ぶりに全館での営業がスタート。今回は待望の営業再開で入浴コースが充実し、活気に満ちている「道後温泉本館」の新たな魅力、楽しみ方をお届けします。
風格あるたたずまいの重要文化財の外湯
道後温泉は『古事記』や『日本書紀』にも登場する歴史ある名湯。その外湯のひとつである「道後温泉本館」は、夏目漱石の小説『坊っちゃん』に描かれていることでも知られています。1994年に公衆浴場としては初となる重要文化財に指定された建物は、木造3階建の風格あるたたずまい。今回の工事では、重要文化財ならではの意匠や趣は変えることなく、耐震補強や修繕が施されています。
1894(明治27)年の改築以来、何度も増改築が繰り返されてきた「道後温泉本館」。館内には廊下や階段が迷路のように複雑に配置され、異なる時代の建物が見事に調和した空間が広がります。屋上には「ギヤマン」と呼ばれる赤色のガラスが輝く太鼓櫓の「振鷺閣(しんろかく)」、あちらこちらに飾られている湯玉のモチーフ、湯治にまつわる言い伝えのある白鷺をあしらった優雅なランプなど、美しい意匠の数々も見逃せません。
源泉かけ流しで入浴できる美人の湯、「神の湯」と「霊(たま)の湯」
道後温泉の泉質はアルカリ性単純泉。刺激が少ないやわらかな軟水で、無色透明、無臭の湯。温度の異なる18本の源泉をブレンドし、42度前後に調整されています。肌ざわりなめらかな美人の湯として知られ、「道後温泉本館」では浴槽だけでなく、浴室洗い場の蛇口からも源泉かけ流しで満喫することができます。
そんな美人の湯が楽しめるのは、「神の湯」と「霊(たま)の湯」の2種類の浴室。浴室では砥部焼の美しい陶板壁画が眺められるほか、印象的な湯釜も見どころ。湯を注ぐ湯釜は道後温泉独特のもので、浴室ごとに意匠が異なります。庵治石の浴槽や大理石の壁が使われた高級感漂う「霊の湯男子浴室」など、それぞれに趣のある浴室が特長です。
入浴プランは6コース、はじめてなら「神の湯二階席」コースがおすすめ
本館では2つの浴室と5つの休憩室を組み合わせた6コースの入浴プランから選べます。入浴のみのシンプルなコース「神の湯階下」もありますが、入浴後に浴衣を着て休憩室でくつろぐのが「道後温泉本館」ならではの過ごし方。2つの広間やプライベート感のある個室など、個性豊かな休憩室がそろいます。なかでもはじめて利用するなら、大広間でくつろげる人気コース「神の湯二階席」がおすすめ。本館らしさあふれる大広間は、まるでタイムスリップしたかのような雰囲気。気候のよい時季には障子が開けられ、開放感も抜群ですよ。
湯上がりには用意された浴衣に着替えて大広間へ。入浴後にお茶とお茶菓子が運ばれてくるスタイルは、120年以上続く伝統のおもてなし。「神の湯二階席」では松山の名所を写した「名所煎餅」が味わえます。昔ながらの茶釜で沸かしたお茶は輪島塗の天目台で提供され、おかわり自由です。
2種類の浴室と個性豊かな休憩室を楽しむならこちら
そのほかのコースでは、「神の湯」と「霊の湯」の2種類に入浴することができます。「霊の湯二階席」は南棟2階の広間で休憩できるコース。約23畳のモダンな空間は少人数でくつろぐのにぴったり。お茶菓子はこちらも「名所煎餅」です。
プライベート感のある個室で休憩できるのが「霊の湯三階個室」。小説『坊っちゃん』でも「上等」と称された空間です。2・4・6人部屋があわせて8室あります。こちらのコースのお茶菓子は、3色の餡の中にお餅が入った「坊っちゃん団子」。
予約して利用したい、2つの貸切室が新しく誕生
今回の保存修理工事で、3階「飛翔の間」と「しらさぎの間」2つの貸切室が新しく利用できるようになりました。貸切室は事前予約制で、広々とした空間なのでグループ利用におすすめ。「神の湯」「霊の湯」ともに入浴でき、湯上がり後は心地いい風を感じながらゆったりとした時間が過ごせます。こちらでは、生地に伯方の塩やはだか麦、ジャムに紅まどんなを使用した新たなお菓子「道後 湯上がり乃しらさぎ」がいただけますよ。
湯上がり後には、館内の見どころも見学しましょう
本館の歴史をたどる貴重な資料が見られる展示室、夏目漱石ゆかりの品を展示する「坊っちゃんの間」、日本唯一の皇室専用の湯殿「又新殿(ゆうしんでん)」など、館内には見学できるスポットも多数。また、かつての脱衣所を改装した売店では、みかん石鹸やうちわ、タオルといったオリジナルグッズを販売。おみやげ選びに立ち寄ってみてくださいね。
日没にあわせてガス灯が灯り、幻想的な雰囲気となる夜の本館もすてき。その周辺には、伝統工芸に彩られたアートな入浴施設「道後温泉別館 飛鳥乃湯泉」、地元の人たちから愛されている「道後温泉 椿の湯」の2つの外湯も。新たな魅力が増した道後温泉で、湯めぐりはいかがですか?