ピーナッツバターは何世紀にもわたり世界中で愛される定番アイテム。パンに塗るというオーソドックスな使い方をしても、手の込んだプロテインボールにしても美味しい。
実のところ、米国ではピーナッツバターがタンパク質の同義語になっている。米NPRによると、ピーナッツバターは1800年代の終わり頃に登場し、第二次世界大戦で肉が不足した1920年代に人気が上昇。当時の米国人にとってピーナッツバターは、不足している栄養素を補うための代替品に過ぎなかった。しかし、その影響は今日の米国の家庭に根強く残っている。
そう言われると気になるのがピーナッツバターの栄養価。世間には、ピーナッツバター“パウダー”のほうが低カロリーでいいのでは、という声もある。そこで今回は栄養士の力を借りて、その真の効果を徹底調査!
ピーナッツバターに含まれるタンパク質の量は?
肉の代替品として使われていただけあって、ピーナッツバターにはそれなりのタンパク質が含まれている。全米ピーナッツ協会のマーケティング&コミュニケーション担当で公認管理栄養士のマルキタ・ルイス氏は、「ピーナッツとピーナッツバターには1食あたり7gと、他のナッツより多くのタンパク質が含まれています」と説明する(ほとんどのメーカーの1食分は大さじ約2杯分だが、念のため成分表で確認を)。
ただし、ピーナッツバターは“完全”タンパク質ではないので、タンパク質の供給源をピーナッツバターだけにするのはNG。「完全タンパク質には9種類の必須アミノ酸が含まれていますが、ピーナッツバターにはそれが全て含まれているわけではありません」と、栄養カウンセリングサービスNutrition by RDの創設者で公認管理栄養士のレベッカ・ディトコフ氏は注意を促す。
アミノ酸はタンパク質の構成要素で、私たちは食事から9種類のアミノ酸(ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン)を摂取する必要がある。
米国立医学図書館によると、この9種類は体内で自然に作られないため、“必須アミノ酸”と呼ばれることが多い。ピーナッツバターはメチオニン、リジン、スレオニンを欠いているため、“不完全”タンパク質。
ピーナッツバターはタンパク質の良質な供給源?
YES!“不完全”だからといって質が悪いわけではない。「ピーナッツバターは、とてもヘルシーな食品です」と語るのは、電子書籍『Meal Prep for Weight Loss 101』の著者で公認管理栄養士のジンジャー・ハルティン氏。「あまり知られていませんが、ピーナッツバターには他の多くのナッツバターよりタンパク質が多く、ビタミン、ミネラル、抗酸化物質も含まれています」。この点については、今回私たちが取材した他の栄養士も同じ意見。
米国食品医薬品局(FDA)によると、1日の推奨摂取量の約10~19%を含んでいる食品は、その栄養素の“良質な供給源”とみなされる。ピーナッツバターは1日に推奨されるタンパク質の約16%を含んでいるので、間違いなく良質な供給源。
タンパク質の含有量が最も多いピーナッツバターは?
本物のピーナッツバターのタンパク質の含有量は、どのメーカーでもほぼ同じ(通常は1食あたり7~8g)。しかし、購入前には不必要な添加物が含まれていないかをチェックするべき。「原材料名は必ず確認するようにしてください」とハルティン氏。「砂糖が添加されていないピーナッツバターを見つけるのは大変ですが、私はいつもそのタイプを探します」
ハルティン氏いわく、タンパク質が特に多いピーナッツバターが欲しい人には、スキッピー®プロテイン(1食あたりタンパク質10g)がおすすめ。他の商品より「2g多いだけですが、タンパク質のニーズが満たせず困っている人にとっては、少しでも意味があるかもしれません」
家族の中にピーナッツアレルギーの人がいる場合は、ピーナッツ不使用の代替品にトライしてみて。例えば、海外で人気のWowbutterはピーナッツの代わりに大豆を使用している(1食あたりのタンパク質は4g)。
ピーナッツバターパウダーとピーナッツバターの違いは?
ピーナッツバターパウダーはピーナッツバターの親戚のような存在。ルイス氏とハルティン氏によると、ピーナッツから油分を抜いて乾燥させ、粉砕して作られる分、脂質とカロリーが少なめ。つまり、タンパク質はピーナッツバターと同じだけ含まれているけれど、脂質とカロリーは少ないということ。
しかし、だからといってピーナッツバターより優れているとは言い切れない。
「低脂質・低カロリーであることが、その人にとって必ずしも良いとは限りません」とハルティン氏。「実際、私の顧客の中には、もっとカロリーを増やさなければならない人がたくさんいます。子どもやアスリートにも多くのカロリーが必要です」
ピーナッツバターパウダーは、どんな人に向いている?
まず、ピーナッツバターパウダーはピーナッツアレルギーのない人なら誰でも使える。ルイス氏によると、トレーニング前後の食事に加えるといいだけでなく、小麦の代わりとしても使えるので、小麦アレルギーの人にもおすすめ。
また、他のマクロ栄養素(糖質と脂質)の摂取量に気を付けている人は、ピーナッツバターの代わりにパウダーを使うといい。「カロリーを抑えつつタンパク質を摂りたい人には、間違いなくピーナッツバターパウダーがいいでしょう」とハルティン氏。「使うと風味も良くなるのはいいですよね」
とはいえ、最後は個人の好みと健康状態次第。「ほとんどの人は、カロリーと脂質を十二分に摂っています」とハルティン氏。そう考えると、ピーナッツバターパウダーを選んだほうが栄養バランスはいいかもしれない。
結論:専門家いわくピーナッツバターはタンパク質の良質な供給源。ピーナッツバターの味を残しつつ脂質とカロリーを抑えたいという人は、ピーナッツバターパウダーを試してみるといいかもしれない(ただし、ピーナッツバターパウダーはピーナッツバターほど腹持ちしないことを忘れずに)。最終的にどちらがいいかは、味の好みや健康上の目標をベースに判断しよう。
※この記事はアメリカ版ウィメンズへルスからの翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。
Text:Olivia Evans
Translation: Ai Igamoto