Text by Ryo
[J3第7節、栃木シティ 1-1 栃木SC、3月30日、カンセキスタジアムとちぎ]
栃木Cは栃木SCに1-1で引き分け、リーグ戦での無敗を5試合に伸ばした。
この日、左ウイングで先発起用された栃木SCのFW田中パウロ淳一は、足下の技術を生かしたドリブル突破や高精度のクロスでチャンスを作り、存在感を放った。
Jリーグでは初となる『栃木ダービー』は、両チームとも序盤からダービーらしい激しい試合展開となった。
初の栃木ダービーは劇的ドロー
ここまで6試合4勝1分1敗と好調の栃木Cだったが、ホームで負けられない栃木SCの素早いプレッシャーに苦しみ、なかなか前線にボールを配給できなかった。
対して栃木Cも、ショートカウンターを仕掛けてくるホームチームを守備陣が体を張って防ぐ拮抗した試合展開が続いた。
今季7試合1得点3アシストを記録している田中は「(自分たちのサッカーは)あまりできていなかったですね。相手のウィングバックが躍動しすぎだなって感じですね。そこをできるだけ無効化したかったんですけど、逆に相手のウイングバックに勢いを持っていかれた場面もあった」とホームで負けられない栃木SCの勢いに圧倒された試合を振り返った。
前半36分に栃木SCに先制点を奪われた栃木Cだったが、後半45分にコーナーキックの流れからFW藤原拓海が右サイドから上げた浮き球の折り返しをMF岡庭裕貴がトラップ。右足でコントロールショットを放つと、ゴール右上に吸い込まれ栃木Cが土壇場で同点に追いついた。
栃木Cの背番号77は「(栃木SCの)1点取ったときの守備はJ2の時代からすごいというのは分かっていたので、そこをこじ開けられなかったのは自分の反省点です。でも、そこを引き分けに持っていけたのは栃木Cの大きな一歩になっているんじゃないかと思います」と苦しい試合内容の中で得た価値ある勝点1獲得に自信をつけた。
プレイングインフルエンサー田中の『栃木ダービー』への想い
田中はサッカー選手として活躍する傍ら、インフルエンサーとしての一面を持つ。
自身のTikTok(動画配信SNS)の投稿で「バスケ(B1宇都宮ブレックス)に勝つためには僕たち栃木Cと栃木SCが頑張って『栃木ダービー』というので盛り上げなあかんと思っています」と話していた。
「今年や去年感じたのは、宇都宮ブレックスが盛り上がっているってこと。(宇都宮は)トップのレベルなのですごいと思うんですけど、僕らはJ3でこれだけ盛り上がっていることはすごくいいこと。(将来的に)J1で栃木ダービーができたら1番いいので、その始まりをきょうつくらなくちゃっていう気持ちでいました」と栃木県のサッカークラブ同士でともに同県のサッカーを盛り上げていきたいと語った。
また、試合中にはホームサポーターからブーイングを受けると、客席に向けて手を仰いで煽っていた田中。
このような挑発をした理由も、同選手が『栃木ダービー』に懸ける想いが人一倍強いが故だった。
「栃木SCの方はあまり反応しづらいと思う。僕はけっこうアンチが来ても平気なタイプなので、僕が盛り上げて、子どもたちも観られるような『栃木ダービーは悪いものではない』っていうこと。なおかつ熱いダービーはこれから観られるんじゃないかなっていう兆しは感じた」と話し、ダービー前までのSNS投稿や試合中の煽りは、伝統のあるライバル栃木SCをリスペクトしつつ、このダービーを盛り上げたい一心での行動だったと明かした。
実際にこの試合は1万2807人の観客が集まり、プレイングインフルエンサー田中がJリーグ史上初の栃木ダービーを最高の雰囲気で迎えられた一因を見事につくった。
次の栃木ダービーは「お互い上の順位で」
栃木Cが次に栃木SCと対戦する7月26日は、大勢の栃木Cサポーターが集まるホームでの開催となる。
栃木Cの背番号77は「(栃木SCに)1点取られてからしてやられたような展開にさせられたので、ホームでは僕たち栃木Cの良さがどんどん出ると思う。逆に栃木SCの守備はすごいので、それをこれから分析して、もっと栃木Cの良さを出せるようにしたい。そのときには栃木Cも栃木SCも上の順位で昇格争いをしているところで試合をできたらと思います」と両チームが上位で対戦してさらに盛り上がるシチュエーションでのダービーを熱望した。
栃木Cは次節、4月6日午後2時より、ホームのCITY FOOTBALL STATIONに福島ユナイテッドを迎える。
7月開催のダービーに向けて進化し続けるチームは、次こそ本拠地で白黒をはっきりつけてみせる。
(取材・文 Ryo)