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"座って立ち上がる"動作でわかる死亡リスクの高さ…座りすぎでヨボヨボになった脚を回復させる運動2種

  • 2025.3.31

高齢者は転倒しやすく、骨折して寝たきりになることもある。理学療法士のケリー・スターレットさんは「体を自由に動かす“モビリティ能力”を高めれば転倒などのリスクを減らすことができる。あなたが動く体をもっているかどうかを簡単なテストでチェックしてみてほしい」という――。

※本稿は、ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット『すごい可動域』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

年を重ねても人生を自由に楽しめる身体

はじめに、あなたがどのくらい体を自由に動かすことができるかをテストしていただきたい。まず、床に何も置かれていない安全な場所に移動する。少し腰をかがめて片方の足をもう一方の足の前で交差させる。何にもつかまらずにそのまま膝を曲げ、お尻を床に下ろしていき、あぐらをかいて座る。

次に、あぐらをかいて座った姿勢から、バランスをとるために両手を前に伸ばして前かがみになり――可能であれば、手や膝を床についたり、何かを支えにしたりせずに――床から立ち上がる。

これであなたは今、「座って立ち上がるテスト」を受けたことになる。できただろうか? もしできなかったとしても心配しなくていい。

このように、支えなしで座ったり立ち上がったりできることは、あなたが動く体をもっているかどうかを見分ける方法になる。それは、長く生きられる体をもっているかどうかを判断する方法でもある。

※写真はイメージです

「座って立ち上がるテスト」をここで紹介する理由は、座ったり立ち上がったりできることの意味を考えてもらいたかったからだ。これを「モビリティ」という。

「フィットネス」と同じように、「モビリティ」も内容が定まっていない用語だ。本書ではモビリティを、関節、筋肉、腱、靱帯、筋膜、神経系、脳、体内を走る血管系など、体を構成するすべてがいきいきと動いている状態と定義する。今いる場所だけでなく、人生そのものを自由に動き回ることを可能にする要素だ。

「座って立ち上がるテスト」2002人の結果は

「支えなしで、座って立ち上がる」。この簡単な動作ができるかどうかで、どれくらい生きられるかがわかるかもしれない。そう考えたブラジルとアメリカの研究者グループが、先ほどの「座って立ち上がるテスト」を、51歳から80歳までの男女2002人に行い、その6年後、テストした人たちがどのような状態にあるかを調べた結果が、2014年の『European Journal of Preventive Cardiology』誌に掲載されている。

この共同研究の結果、6年の間に、被験者の179人(ほぼ8パーセント)が死亡していた。6年前のデータと照らし合わせると、床から立ち上がったり座ったりできなかった人の死亡リスクが高いことがわかった。

また、テストで良い成績を収めた人ほどモビリティ能力(体を自由に動かす能力)が高いことが明らかになった。モビリティ能力が高い人は、そもそも転倒しにくくなり、総合的な健康状態が良好だった。

ご存じの通り、高齢者は転倒しやすい。骨折して寝たきりになり、そこから体調が悪化して死に至るケースも少なくない。転ばないように気をつけることは大事だが、この研究結果は、それよりも容易に座ったり立ち上がったりできる能力を維持することのほうが大切であることを示唆している。

支えなしで立ったり座ったりできることは、体が安定していて、しなやかで、効率的に動けることを意味する。また、体が硬くなりにくいので関節の痛みを避けることができる。それは、ほとんどの人が熱望するものではないだろうか?

大切なのは股関節の可動域

では、改めて座って立ち上がるテストを解説しよう。このテストをやる主目的は、あなたの股関節の可動域が広いかどうかを判断することにある。さらに、脚と体幹の強さ、バランス力、調整力といった、座ったり立ち上がったりするのに欠かせない特性の有無がわかる。

※写真はイメージです

これらの要素が組み合わされることで、動作がスムーズで力強いものになる。そして転倒しにくくなる。つまり、歩いたり、走ったり、何かを拾ったり、きょうだいの結婚式でダンスを踊ったりするとき、自由に思うままにそれらができる体になる。

●準備

体を締め付けない服を着て、裸足になる。障害物がない場所を選ぶ。

●テスト

テストの途中で支えが必要になるかもしれないので、壁や安定した家具のそばに立つ。片足をもう片方の足の前に交差させ、何にもつかまらずにあぐらをかいて床に座る(もちろん、不安定さを感じたら支えに頼る)。次に、あぐらをかいた姿勢から、(可能であれば)手や膝を床についたり、何かを支えにしたりしないで立ち上がる。両手を前に伸ばして体を前傾させると、バランスが取りやすくなる。

『すごい可動域』P.33より
習慣化すれば自然にできるようになる

●結果が意味するもの

10点満点でスタートし、以下の“支え”を使ったり問題があったりしたごとに1点ずつ減点する。

・壁などの固い面に手をついて体を支えた
・床に手をついた
・膝を床につけた
・脚の側面で体を支えた
・バランスを崩した

スコアが良くても悪くても、それは単純に「ありのまま」を知るためのものだ。このスコアは、今後の進捗状況を測るための基準値にすぎない。改善が必要であれば(ほとんどの人がそうだろう)、出発点からどれだけ進歩したかがわかる値にもなる。最終的なゴールは、支えを使わずに床に座り、立ち上がることにある。

後から説明するモビライゼーションなどを取り入れることでスコアを向上させ、10点になるまで再テストし続けてほしい。また、スコアが何点であろうと、座る・立つ能力を改善する方法と今の能力を維持するための方法は同じものになる。モビリティ能力の改善と維持のどちらが目的であっても、床に座る・立つ動作やモビライゼーションは毎日やったほうがいいということだ。


◆10点――股関節の可動域が広いのは明らかであり、他のモビリティ能力にも恵まれている。しかし、現状に満足してはいけない。今の状態を維持するためにモビライゼーションを続けてほしい。

◆7~9点――あと少しの努力だ。バランス力や股関節の柔軟性を向上させれば10点に届く。

◆3~6点――正しい方向に進んでいるが、改善の余地が大きい。不足している股関節の可動域を改善するため、モビライゼーションに励んでほしい。

◆0~2点――床に座ったり立ったりするのが難しいか、まったくできない状態だ。しかし、落胆しなくていい。私たちの体は、もともと、座って立ち上がれるようにつくられているからだ。練習すればできるようになる。支えなしで立ち上がるには、股関節の可動域、脚と体幹をコントロールする力、バランス力が必要になる。モビライゼーションを行うとともに、床に座ったり立ち上がったりすることを習慣化すれば、この能力を開発できる。

床に座る機会があるごとにこの「座って立ち上がるテスト」を行うことが理想だ。その都度、どれだけ改善しているか確かめよう。

「座る力」を伸ばすモビライゼーション

今回は、2つのモビライゼーションを紹介しよう。モビライゼーションをやることも、座って立ち上がる技術を上達させる助けになる。床座りもモビライゼーションも、股関節の前方への動きである股関節屈曲に取り組むものであり、この動きにおける可動性を向上させる。

※写真はイメージです
1.シーテッド・ハムストリング・モビライゼーション

座りすぎて機能が低下した筋肉の表面やその他の組織を回復させるのに役立つ動きだ。

片方の脚を体の前に伸ばし、もう一方の脚を座面の横に出せる硬い椅子やベンチ、テーブルを使う。その上に座り、最初に伸ばす側のお尻のすぐ下にボールかローラーを置いて、その脚を伸ばして曲げる。

ノコギリを引くような動作で同じ部分をボールやローラーの上で左右に移動させる。その際、筋肉を収縮させて膝を伸ばし、筋肉を弛緩させて膝を曲げるようにする。股関節から膝に向かってボールやローラーを脚の下で少しずつ移動させて同じ動作を繰り返す。片脚につきこの動作を2分間ほど、長くできるなら5分間ほど続ける。

『すごい可動域』P.46より
太ももの筋肉を収縮・弛緩させるモビライゼーション
2.ハムストリング・ロックアウト
ケリー・スターレット、ジュリエット・スターレット『すごい可動域』(かんき出版)

この姿勢で脚の筋肉を収縮・弛緩させれば、ハムストリングスの硬直に対抗するように働く大腿四頭筋(太ももの前の大きな筋肉)を伸ばすことができる。このモビライゼーションは、エンドレンジで2分間(片側ずつ)維持するための方法にもなる。ストラップやバンドがなければ、ベルトやロープを使う。

床に横になり、ストラップやバンドを脇に置く。片脚を床に対して90度に近い角度で上げ、上げた足の土踏まずにストラップを巻きつける。脚ができるだけまっすぐになるよう太ももを締め(収縮させる)、その足を頭のほうに引き寄せる。

無理をせずに緊張を感じればそれでいい。太ももを緩めた後、再び締めて足を頭のほうに引き寄せる。2分間、できれば4~5分間、締めたり緩めたりを繰り返し、左右を入れ替える。力を緩めるときには、ハムストリングスの緊張を保つようにする。

『すごい可動域』P.47より

これらのモビライゼーションを生活に取り入れて、年齢を重ねても健康な体を保ってほしい。

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