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綺麗なだけ、理性だけでは済まないこの世界で呼吸するためのスパイス

  • 2025.3.31

今まで綴ったエッセイたちをふと読み返すと、自分の人生に関する話のはずなのにどこか遠い誰かの人生に感じるのはどうしてだろう。
きっと、世界は切り取り方次第でなんとでも表現ができるのだ。
どんなに煌びやかなSNSの世界も、側から見たら明るいあの子の笑顔も、実はほんの一面でしかないのかもしれないのだ。

◎ ◎

人生のどん底を味わい、それらをバネにして華麗なる転生をしたようなドラマチックな人生を歩んでいるように見える私の人生も、365日のうち330日くらいは仕事に忙殺され呼吸だけをする日々だとエッセイから飛び出したリアル世界の私がいう。

そんな呼吸をする日々の中でも感じる仕事や趣味の活動での満足感の間に少しだけ生まれるのが恋愛というスパイスだ。たった少しのスパイスを全身全霊で楽しむ姿が、きっと私のエッセイからご覧頂けるだろう。

悲しきかな、私の恋愛はきっと手に入らないからこそスパイスとして成立する。
ボーダーラインを越えたこともないし、これからも越えるつもりは絶対にない。
一種のアイドル的な感覚に近いと言えるが、アイドルではないという認識はある。
これまでの恋愛に関するエッセイにひとつだけ追記をするのであれば、対象の異性は、必ず誰かのもの、ということをここで言ってしまおうと思う。

◎ ◎

学生の頃、高校生まではこういった状況になったことは一度もなかった。
100%健全な恋心、相手も私も綺麗な状態の恋心だった。
誰かのもの、というしがらみが私に纏わりつきだしたのは大学生からだろう。
今でもたまに胸が締め付けられるほど、本当に好きだった男性と付き合うまでの過程で彼は一度他の女性の彼氏になった。

恋心を抱いたタイミングでは彼女がいなかった彼に彼女ができた時、文字通り心臓がえぐられるほどの衝撃と、悲しみと耐えられない苦痛が私を襲った。
凄まじいほどの感情の波が時間をかけて濾過された結果、残ったものは、まだ好き。ただそれだけだった。
彼女がいる間は決してボーダーラインは越えないから。
伝える気もないから、好きだと想うことは許してほしい。
そんな小さく、誰にも知られることのない感情を温めながら現実を生きた。
彼女ができてもただの先輩後輩という関係で関わりが減ることはなかった私は結果として好きだった男性と付き合うことができた。

◎ ◎

あの時の感情や状況がトリガーになったのかはわからない。
歳を重ねるにつれ、相対的にボーダーを越えてはならない人の割合が増えていることも要因の一つではあるだろうが、彼と別れた後に好きになった人はもれなく全員が、好きだと想うこと、ただそれだけを許してほしい、と思わざるを得ない人だった。

他人が持っているものを欲しくなること、奪ってまで手に入れるという感覚は子供の頃から今まで持ち合わせたことはない。
一方で、性格上私は人から求められることは得意ではない。
だからこそ、私は完全に好意を向けられることがないと安心しきっている彼らを好きになってしまうのかもしれない。一種の病気だ。
そして文章化すると非常に気持ち悪くて、齢29の女が痛いなと思うが、恋愛ソングなんか聞いたりして、この絶対報われない恋心に嘆いたりするのだ。
客観的に見たら隣にいるだけでもおぞましい笑。

◎ ◎

エッセイだけでは見えない、背景がトリミングされていたこれまでの恋愛エッセイが今回の告白で一気にチープなものへと変化して見えるのだろうか。
歪んでいる人間だと罵られるのだろうか。
それはそれで、ネタあかしのようで面白いと思えるのは私だけだろうか笑。
現在進行形で恋心と呼ぶにもおこがましい不純な気持ちを隠しながら今を生きる私は、綺麗なだけでは、理性だけでは済まないこの世界の中で呼吸する。
このエッセイを読んだあなたが、少しでも本当の姿で生きることができますようにと、そう願って。

■睡蓮のプロフィール
休みの日の相棒はスタバ。いろんなことに興味が湧くので次の瞬間には別のことを考えてます。

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