誰もが知っているゴシックロマンの名著を大胆なストーリー解釈と流麗かつメロディアスな音楽でミュージカル化した『フランケンシュタイン』。この春に幕を上げる待望の再々演に、俳優の小林亮太と島太星が初参戦。大舞台の開幕を間近に控える彼らに、本作に懸ける思いやお互いの印象などを語ってもらった。
【写真】島太星の天然ぶりがツボにハマる小林亮太 笑顔が絶えない仲良し2ショット
◆大作への抜擢に熱い思い
2017年の初演以来、メインキャスト全員が一人二役を演じるというトリッキーな演劇的作劇に加え、壮大でスピード感溢れる衝撃の物語が大反響を集める本作。2025年版には、初演から続投する中川晃教、加藤和樹、鈴木壮麻に加え、花乃まりあ、松村雄基、朝夏まなとら豪華新キャストが顔をそろえる。小林は、ビクター・フランケンシュタイン/ジャック役、島はアンリ・デュプレ/怪物役をそれぞれ中川、加藤とのWキャストで務める。
――2017年の初演から高い人気を誇る『フランケンシュタイン』。出演オファーを聞かれた時のお気持ちはいかがでしたか?
小林:こんな大作に挑ませてもらえるのかと武者震いじゃないですが信じられない気持ちと、同時にすごくやりたいという気持ちが沸き上がってきました。
島:僕はそんなに大きなキャリアを積んできたわけではないのに、こんな大作のお話をいただけて、チャレンジ精神で挑ませていただきたいなと思いました。北海道に住んでいて、いつか東京のエンタメで大きな挑戦をしてみたいと思って活動してきたので、夢の第一歩だなと感じました。
――『フランケンシュタイン』という作品にはどんな印象をお持ちでしたか?
小林:前回の映像を拝見した時には、1人の男が狂気にとりつかれていくかのような姿が強く印象に残りました。楽曲や舞台上で繰り広げられる芝居を受けて、なんとも言葉にしがたい衝撃が残る作品だなとも感じました。今は僕らがこの作品を届ける側になり、2025年に上演するものとして、どうやって演じどういう芝居をしたら、お客様に僕が感じた衝撃を残すことができるだろうと考えながら稽古に臨んでいます。
島:初見の感覚で言うと、怖い。「“生まれた時に血の匂いを感じた”ってどういう状態なの?」と歌詞も怖くて。でも面白いし、せつなくもあるんです。実際に台本を手にすると、怪物が人間にされてきた仕打ちを考えると相当苦しいものがあるし、ビクターに対して怪物と同じ感情になりかねないという気持ちにもなりました。怖さ、切なさももっと強くなってくるし、読めば読むほど深みが増して新しい解釈もできる。セリフひとつひとつにすごく意味を考えすぎて、考えすぎたあげく変に固くなってきちゃって、ちょっと頭を冷やしたりしています(笑)。
――先輩である中川晃教さん、加藤和樹さんとの印象に残っているエピソードを教えてください。
小林:和樹さんがご自宅へ招いてくださり、ラーメンを作ってくださいました。その時に、ご自身が使われた『フランケンシュタイン』の楽譜を貸してくださったんです。ラーメンを作りながら『フランケンシュタイン』を歌い上げるという、なかなかない状況だったのですが(笑)、過去2回演じられているので体に染み込んでいるんだろうなというのをひしひしと感じる時間を過ごせました。その背中を借りる気持ちで、胸に飛び込んでいきたいなと思っています。
島:中川さんは、アーティストとしても俳優さんとしてもですけど、この作品を通して大好きになって、興味が湧きすぎちゃっています。製作発表で中川さんの歌声を聴いた時に、この人にしか照明が当たっていないんじゃないかというか。中川さんが歌っていたので実際そうだったんですけど、周りの空気が止まるような感覚がしてものすごく鳥肌が立ちました。それからずっと中川さんの作品や歌を毎日のように聴いています。中川さんのすごいところは、言葉がめちゃめちゃ聴こえてくる。どの音域でもポーンと聴こえてくるので、稽古場でも中川さんの研究をしています。
◆1年以上『フランケンシュタイン』の歌稽古に向き合う日々
――ブランドン・リーさんが手掛ける音楽も魅力ですが、歌の稽古は順調ですか?
小林&島:(声をそろえて)難しいです!!
小林:難しいですし、非常に耳に残る楽曲だなと感じます。それでいて時代背景も相まって壮大でもある。稽古を重ねる中でどこで音楽に助けられたり、どこで音楽とつながっていくんだろうと楽しみです。
――島さんは、YouTubeなどでポップスなどの歌唱動画も公開されています。ミュージカルの歌稽古の印象は?
島:『フランケンシュタイン』のレッスンを亮太君と僕は1年くらいやらせていただいているんですけど、ポップスとは全然違います。ミュージカルのレッスンの後、ポップスを歌うとヤバいくらい下手で…。ちょうどレッスン期間に歌番組の収録があったのですが、声が裏返ったり喉が全然開かなかったりで、「なんなんだ、これ!?」と。
小林:僕は日常的に歌う仕事があるわけじゃないのですが、ボイトレをしてカラオケで好きな曲を歌えるようになっているかな?と思ったら、全然歌えないんですよ。
島:亮太くん、めちゃめちゃハイも出るんですよ。俺もローもハイも出るようになったな、きた!きた!きた!と思って、いざ歌ってみると全く出なくて。
――歌に向き合う1年を過ごされてきたんですね。
島:めちゃめちゃ準備してきました!
小林:これ書かれたら、「こいつら、めちゃくちゃ準備してきているぞ!」って思われるよ。僕は怖すぎて言わないんだけど、太星くん 素直だから言っちゃうんです(笑)。
島:頑張った分、言いたくもあって。新しい新星の光が『フランケンシュタイン』に差し込みますので、ぜひ期待してください!お待ちしてます!
小林:もうインタビュー終わり!?(笑)
◆ミュージカル界の注目株・小林&島が抱える20代後半の展望は?
――今回が初共演のお二人ですが、お会いするまでの印象はいかがでしたか?
小林:SNSっていろんな人の情報が入ってくるじゃないですか。太星くんが作品に出られている時に、太星くんがすごいという情報がすごく流れてきていたので、どんな方なのかとお会いすることを楽しみにしてました。そうしたら、めちゃくちゃ人柄がチャーミングで、愛される方で。僕はゲラなんですよ。太星くんの天然がツボで、大好きになりました。自分は頭で考えて固くなることがあるので、いつも癒やしてくれる存在です。
島:亮太くんの第一印象はたくさん知識があって、それを周りのみんなにも共有してみんなが幸せになる道を選ぶ人。と勝手に思ってました。きっと一つの作品に果てしなく探究するイメージでした。だからこそ自分も中途半端にはなれないと更にエンジンがかかりました!!
小林:いち俳優同士、一緒に頑張りたいと思います。
――同世代ですもんね。(小林が1998年12月生まれ、島は1998年1月生まれ)
小林:そうですよ!
島:いやいやいや。年齢のことは触れないでほしいです。亮太くんはかなり年上だと思うくらいの人格者なんで。いろいろ助け合いたいなと思っています。
――20代後半から30代に向けて、今後どんな俳優さんになりたいという展望をお持ちですか?
小林:小林亮太が出るなら観に行きたい、彼がいたら面白い作品になっているんだろうなと思ってもらえるような俳優になりたいです。僕は『フランケンシュタイン』が久しぶりの舞台出演となるのですが、さまざまなことから劇場に来ていただくことが難しい方も多いと思うんです。演劇も映画も大好きなのであまり区別せず、映像と舞台の垣根をつなぎ両方で戦える俳優になりたいと考えています。
島:東京でもお仕事をさせていただけていろんな人と知り合い、仲のいい人もいっぱいできているのですが、心の奥底では北海道のことを第一に考えていて、ずっと支え続けてくれている皆さんがいます。今回の『フランケンシュタイン』への出演も、北海道で待ってくれているメンバーやファンの方が大丈夫かと心配してくれているんです。そういう人たちが本番を観た時に、「太星くんがあんなすごい舞台に立って、輝かしくやっているぞ」と思っていただけるようになりたいと思っていて。今回の作品のように大きい舞台に出させていたくことで、北海道の皆さんに恩返しできるようになっていきたいです。
小林:北海道大好きなんですよ! 今度ぜひ太星くんに案内してもらおう。
島:いやいやいや。僕、全然外に出ないから北海道のことなんも知らないよ。
小林:こんなに北海道への思いを語っていたのに(笑)。
――(笑)。では最後に作品を楽しみにされている皆さんにメッセージをお願いします。
小林:我々新キャストも、過去に挑まれた先輩方に負けないような熱で作品の素晴らしさを伝えられるように精一杯頑張りますので、せひ劇場に足を運んでいただけたらうれしいです。
島:先輩方をリスペクトしているのですが、僕たちの力で新しい『フランケンシュタイン』を伝えたいという思いで稽古に臨んでいます。楽しんでいただけると思いますので、ぜひこのペアも観に来ていただけたらうれしいです。
(取材・文:佐藤鷹飛 写真:高野広美)
ミュージカル『フランケンシュタイン』は、東京公演が4月10日~30日・東京建物Brillia HALL、愛知公演が5月5日~6日・愛知県芸術劇場 大ホール、茨城公演が5月10日~11日・水戸市民会館 グロービスホール、兵庫公演が5月17日~21日・神戸国際会館 こくさいホールにて上演。