自身に関するエッセイや、フォロワーの体験談を基に描いた漫画をブログで発表しているしばたまさん。ゆるかわいいタッチながら人間の本性を鋭く突くような作風が注目を集めている。今作は悪人が嫌いな主人公のある願いから巻き起こる、不可思議な出来事を描く。正義とは? 悪とは? 人間が逃れられない本質に迫る作品を生み出した著者のしばたまさんにお話をうかがった。
森田は毎日繰り返される暗い事件のニュースに辟易していた。そこで神様に悪い人を消してほしいと祈ったところ、身近な不良のクラスメイトに始まり、刑務所にいる受刑者までも姿を消していくということが起き始める。
悪や悪人の定義に試行錯誤。核にあるのは主人公の普通な残酷さ
――人が消えてしまうことに対して、主人公は自分が願ったことが原因ではと考え、自問自答します。彼の人物像はどのように想定されたのでしょうか?
主人公は一般的な残酷さを持った人物にしました。
――刑務所の失踪者に関する基準が提示されますが、線引きが難しかったのではないでしょうか?
これは本当に難しかったです。刑務所には犯罪者がいるわけですが、まずは冤罪の人は罪人ではないので線引きできました。
「最低などうしようもない犯罪者」を消してほしいという願いだったので、正当防衛の人(過剰防衛になっても)や家庭内暴力を受けていた人など、いわゆる情状酌量の余地がある人は消さないべきだと考えました。
――「神様、まじでいるのかも……」というモノローグがありますが、しばたまさんが神頼みをした体験があれば教えてください。
特別宗教を信仰しているわけでもないのですが、何か試験があったりコンペに出したりするたびに「受かりますように!」と神頼みしていますね。神様ではないですが、亡くなった祖父母にもお願い事をする始末です(笑)。
暗いニュースが嫌いで、とにかく明るい話題を……と願った主人公の葛藤を描いた本作。悪人がいなくなったら世界はどうなるのか。そもそもどこからが悪といえるのか。ラストまで読むと、そんなことを考えてしまうはずだ。
しばたま
デザイナー&イラストレーター。大人気アイスのパッケージデザインなどを手がける。Instagramでフォロワーさんから体験談を募集し「ゾッとした話」「ほっこりした話」などのマンガを描き、話題に。著書は『1万人がいいね!した 心ゆさぶる本当の話』『身の毛がよだつゾッとした話』。
Instagram:@shibatamaa
X:@shibatamaaaa