こんにちは。フリーキュレーターのSEIJIです。価値観や表現方法が多様化しているアートの世界を、ニュースや展覧会、作家や作品に注目したコラムにしてお届けする「今どきのアート」。近頃気になったのがこちら。
モーリス・ユトリロ ≪雪のサン=リュスティック通り(冬のサクレクール)≫ 1940年頃、山王美術館
マリー・ローランサン、モーリス・ユトリロ、アメデオ・モディリアーニ…、ここでしか会えない「山王美術館コレクションでつづる エコール・ド・パリ展」が開催中!
20世紀のはじめ、世界の芸術家が注目した「芸術の都・パリ」。
芸術やモードの活動の華々しさと新風の予感を漂わせるパリの魅力に吸い寄せられるように世界各地から多くの芸術家が集ったのです。
若き芸術家たちは、モンマルトルの「バトー・ラヴォワール(洗濯船)」や、モンパルナスの「ラ・リューシュ(蜂の巣)」といったアトリエ集合住宅で交流を深めながら制作に励んでいました。
マリー・ローランサン ≪真珠で装うエヴァリン≫ 1936年 山王美術館
「エコール・ド・パリ」
のちに「エコール・ド・パリ」と呼ばれた一群の芸術家たちですが、その多くはフランス国外からパリへと渡り、モンパルナスを中心に集まった画家・彫刻家。
後に世界的な名声を得るロシアのマルク・シャガール、シャイム・スーティン、ブルガリアのジュール・パスキン、ポーランドのモイーズ・キスリング、日本の藤田嗣治がそうでした。
さらに、絵画好きな人には知られているモーリス・ユトリロやマリー・ローランサンらが代表的な画家です。
「エコール・ド・パリ」に集った芸術家たちは、それまでのアカデミックな規範や様式から解放されました。
一方で、鮮烈な色合いと迫力ある筆のタッチから絵画の野獣派ともいわれるフォーヴィスムやピカソの作品で知られるキュビスムなどの新たな芸術様式に刺激をうけながら自らの表現を模索していったのです。
マリー・ローランサン≪少女たち≫ 1929年 山王美術館
ときには、アフリカをはじめとする原始美術を着想源としつつ、それぞれが母国の伝統や民族性に根ざした独自の表現を探究していきました。
ふたつの大戦のはざま「レ・ザネ・フォル(狂騒の時代)」に花開いた「エコール・ド・パリ」。
画家たちの活動は1920年代に最盛期をむかえ、第二次世界大戦により終焉を迎えますが、その活動のうねりはパリに百花繚乱の新たな花を開花させたのです。
アメデオ・モディリアーニ≪ほくろのある女性≫ 1906-1907年頃、山王美術館
選ばれた6人の作品を展示
同展では、選りすぐりの山王美術館コレクションの中から、エコール・ド・パリを代表する6人の画家の作品を展示。
マリー・ローランサン、モーリス・ユトリロ、アメデオ・モディリアーニ、ジュール・パスキン、藤田嗣治、モイーズ・キスリングの多彩かつ独創的な絵画の世界を存分に楽しめます。
ここでもう少しだけ深掘りすると、
例えば、グレーの諧調に淡い色調、やわらかな筆づかいによる優美な女性像を描くマリー・ローランサンの作品。
哀感ただようパリの街並みを描きつづけたモーリス・ユトリロの作品。
細長く引きのばされた人体、官能的な裸婦像と独特のスタイルを確立したアメデオ・モディリアーニの作品。
「真珠母色」と称された淡い色彩とふるえるような線描が印象的なジュール・パスキンの作品。
なめらかな白いカンヴァスに細くしなやかな線描を生かした独自の画風で人気を得た藤田嗣治の作品。
鮮やかな色彩のコントラストと、つややかな質感をもつマティエールが特徴的なモイーズ・キスリングの作品。
などなど、エコール・ド・パリを舞台に、独自のスタイルを確立した画家たちの絵画約30点が鑑賞できるのです。
モイーズ・キスリング≪ドリー≫ 1933年、山王美術館
ここでしか会えない芸術作品たち
さらに、近年収蔵したというマリー・ローランサンの作品5点、モーリス・ユトリロの作品1点、アメデオ・モディリアーニの作品1点、ジュール・パスキンの作品1点、藤田嗣治の作品2点、モイーズ・キスリング3点の絵画が初公開。観るしかないですね!
モイーズ・キスリング≪庭園の裸婦≫ 1947年、山王美術館
学芸員からのひとこと
「印象派以降、次々と新しい技法や主義がおこり、最新の芸術が生みだされたパリを舞台に活躍した「エコール・ド・パリ」の画家たち。山王美術館のコレクションのみでお届けする本展は、日本でも人気の高い画家たちの個性が際立つ、多彩で魅力的な芸術を一堂にご覧いただける機会です。お好きな画家や作品との出会いの場となれば幸いです」
(担当学芸員 亀井さん)
モイーズ・キスリング≪路上の女性≫ 1916年、山王美術館
「エコール・ド・パリ」の芸術家たちが織り成す類まれなる感性の表現。きっと、新しい刺激になることでしょう。
そして、梅田や難波や天王寺、通天閣や道頓堀、鶴橋や京橋や大阪城などなど大阪には楽しめる観光地がいっぱい。大阪万博も開催される今の時期に「推しのスポット」です!
エントランス
会期は2025年7月31日(木)まで。展覧会の詳細は下記のURLからご確認ください。
山王美術館
https://www.hotelmonterey.co.jp/sannomuseum/exhibition/202503.html
プロフィール/SEIJI(小太刀正史)
フリーキュレーター。MeDEL個人事務所主催。学芸員の目線から美術館の情報を発信する活動を始める。自身もオブジェ作家として活動歴あり。
OBJECT東京展入選 From A The art日本オブジェ部門佳作 日本文化デザイン会議
ETDA展参加など。