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「ほとんど人がいない駅前、駆け込んだ交番も無人。通り過ぎていく車に泣きながら助けを求めたら...」

  • 2025.3.30

23歳のYさんが旅行から帰ってきたのは、骨折で入院している父の退院予定日の、前日だった。

しかし、父親はその日、昏睡状態に陥ってしまう。

知らせを受けたYさんは病院へ急いだのだが......。

<Yさんからのおたより>

20年ほど前、23歳の頃の話です。旅行帰り、大阪行きの新幹車内で妹から電話がかかってきました。

当時骨折で入院していて、翌日には退院予定だった父が、脳幹出血で意識がない、と。

私は急いで在来線に乗り換え、大きい荷物を抱えてたまま病院へ向かいました。

病院の最寄り駅で降りたけれど...

自宅の最寄り駅は、父が入院していた病院の最寄り駅を1つ通りこした大きい駅でした。

そこにはタクシー乗り場があることもわかっていましたが、少しでも早く病院に駆けつけたかった私は、病院の最寄りの小さな駅で下車しました。

そして、すぐに後悔しました。

駅前にはタクシーどころか人もほとんど居なかったのです。交番に駆け込んでみても、そこも無人でした。

当時は携帯電話が普及し始めた頃で、今のような検索機能などもありません。

駅から病院までは2キロ近くあり、荷物を抱えて走っていくしかないのか、次の電車を待ってもう一駅進むか、困り果てていました。

そのとき、同じ駅で降りた女性を家族が車で迎えに来られて、私の横を通り過ぎていきました。

私は泣きながら「お願いします。待ってください」と頼んでいました。

車に乗っていたのは...

ほとんど声も出ていなかったと思います。でも人通りもないところで、藁にもすがる思いで、必死でした。

すると車は数十メートルほど先で停まって、中から先程の女性とそのお母さんが降りてきて駆け寄ってきてくれたのです。

2人に父が危篤で病院に向かいたいんだけれどタクシーもなく途方にくれていたことを話すと、私の鞄をトランクに積み込み病院まで送ってくださいました。

車にはお父さん、お兄さんも乗っておられ、ご家族みんなで病院に着くまで、「お父さんもあなたが着くまで頑張ってるよ! 気をしっかりね! 大丈夫、すぐ着くからね!」とずっと声をかけてくれていました。

病院の入口では、妹が待っていてくれていました。

私がトランクに入れてもらった荷物を受け取ろうとしたら、運転してくれていたお父さんが「先に妹さんのとこ行き!」と言ってくれました。

荷物はお母さんがトランクから降ろし、後から持ってきてくださいました。

「早くお父さんのところに行ってあげて」と言ってくださり、私はそのときに満足にお礼も言えないままお辞儀して別れてしまいました。

父は1週間の昏睡状態の後、息を引き取りました。その間、病院でつきっきりのお世話をすることができました。

骨折の退院予定日は迎えに行こうと思っていましたが、まさかその前日に倒れて、そのまま亡くなるなんて思ってもいませんでした。

今でも、当時のことをよく思い出します。

あれほど困ってパニックになっていた場面で助けて頂いたことは感謝してもしきれません。

セダンに乗った4人のご家族が元気でおられますように。

本当にありがとうございました。

(※本コラムでは読者の皆さんに投稿していただいた体験談を紹介しています。プライバシー配慮などのために体験談中の場所や固有名詞等の情報を変更している場合がありますので、あらかじめご了承ください)

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