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視聴率ワースト「おむすび」橋本環奈から「あんぱん」今田美桜へ…朝ドラは"宿命のライバル"の明暗を分けるか

  • 2025.3.28

賛否両論を巻き起こした橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説「おむすび」が完結。3月31日から今田美桜主演の「あんぱん」が始まる。朝ドラに詳しい田幸和歌子さんは「橋本さんと今田さんは同郷で同世代。そのふたりが続けて朝ドラヒロインになることに運命的なものを感じる」という――。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 おむすび Part1』プレスリリースより
難しいチャレンジをし、数字は取れなかった「おむすび」

「平成生まれのヒロインが栄養士として人の心と未来を結んでいく」という謳い文句で半年前にスタートした、根本ノンジ脚本×橋本環奈主演のNHK連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)「おむすび」(NHK大阪放送局制作)。

もともと現代設定の朝ドラはハードルが高いものだが、「ギャル」と「栄養士」、さらに「震災」「コロナ禍」などの食い合わせの難しさには、スタート時から厳しい見方が多く、数字上でも歴代朝ドラの中で平均視聴率ワースト更新という不名誉な結果になりそうだ。

その一方で、放送開始前から「力の入れ方が違う」と噂されていたのが、3月31日にスタートする中園ミホ脚本×今田美桜主演の「あんぱん」(NHK東京放送局制作)だ。

本作は、アンパンマンを生み出したやなせたかしと暢のぶの夫婦をモデルに、“逆転しない正義”を体現した絵本『アンパンマン』にたどり着くまでを描き、生きる喜びが全身から湧いてくるような愛と勇気の物語。こちらは昭和の戦前期から始まる定番の時代設定だ。

キャストのネームバリュー格差もある。何しろヒロインの夫で、やなせたかしをモデルとした嵩たかしには、映画『東京リベンジャーズ』の北村匠海、嵩の父母役は二宮和也と松嶋菜々子。ヒロインの両親には加瀬亮と江口のりこ、妹に日本アカデミー賞主演女優賞を獲得したばかりの注目株・河合優実、原菜乃華、他にベテランの吉田鋼太郎や竹野内豊、阿部サダヲなどまで投入する熱の入れようには、若干の不公平感もある。

同じ福岡出身で同年代、橋本環奈と今田美桜はライバル⁉

しかし、明暗が分かれたかに見える「おむすび」と「あんぱん」のヒロインたち――橋本環奈と今田美桜には意外に共通点が多いことをご存じだろうか。実は、宿命のライバルとも言える2人なのだ。

ひとつは、どちらも「福岡市出身」で、「ご当地アイドル」をしていたこと。

現在26歳の橋本環奈は、テレビに出たいという思いから、母親に頼んで小学3年生のときに福岡の芸能事務所に所属。ローカルCM出演やダンス&ボーカルユニット「DVL」への参加などを経て、2013年、中3のときに地元福岡のイベントに「Rev.fromDVL」のメンバーとして参加した写真が「奇跡の一枚」と言われ、その美少女ぶりがTwitter(現X)などで拡散され、名前が一気に全国に知られて、「千年に一人の逸材」と呼ばれるに至った。

橋本より2歳上だが芸能界入りは遅かった今田美桜

一方、2歳年上、現在28歳の今田美桜は2015年、高2のときにゲームセンターでスカウトされたことがきっかけで、福岡のモデル事務所に所属。翌16年には「福岡県柳川市観光PRビデオ2016」に「三人官女」を擬人化した3人組ユニット「SAGEMON GIRLS」のメンバーとして活動している。

橋本に比べると、芸能活動スタートは遅く、アイドルとしてもSNSなどを通じて全国区で有名人になった橋本に比べ、今田は「ご当地アイドル」の域を出ていなかった。また、今田にも「福岡で一番かわいい女の子」というキャッチコピーがあるが、これは今田が東京進出する際、所属する事務所「コンテンツ・スリー」社長がつけたもので、のちに今田本人も「(あのコピーは)ハッタリかましていました」と打ち明けた。「千年に一人の逸材」ほどのインパクトはない。

CM契約は橋本が14社で今田が12社、女王の座を争う

ふたつ目の共通点は、いずれも多数のCMに出演していること。2024年テレビCM会社数ランキング(ニホンモニター調べ)によると、橋本環奈が14社で、今田美桜が12社と、共にトップ5入り。「新社会人世代の女性」というポジションが同じなので、クライアントが競合することもある。橋本がアサヒビールなら今田はキリンビール、フレッシャーズ向けのスーツでは橋本が「洋服の青山」、今田が「スーツのAOKI」というバッティングぶりだ。

出典=「ニホンモニター2024タレントCM起用社数ランキング」
「洋服の青山」プレスリリースより

ただ、今田の人気の勢いはすごく、Instagramのフォロワー数は、今田が529万人なのに対し、橋本は245万人(2025年3月27日現在)。倍以上の開きがある。このあたりは、男性誌の水着グラビアに出ながらファッションセンスも磨き、同性にもファン層を広げてきた今田の戦略が成功しているようだ。

橋本環奈は東京進出時から「主演女優」のポジションだった

では、俳優としての2人はどうか。

東京進出時、すでに有名だった橋本は、まるでアニメキャラかAIのように整った顔立ちを最大限に生かし、映画『暗殺教室』(2015年)シリーズで人工知能搭載の新型兵器の転校生「自律思考固定砲台 律」というオイシイ役柄を演じて、話題を集めた。その翌16年には映画『セーラー服と機関銃―卒業―』で主演、さらに翌年の映画『ハルチカ』でも主演を務めている。

さらに橋本の役者としての認知度が一気にあがったのは、空知英秋の人気コミックを福田雄一監督が実写化した映画『銀魂』(2017年)シリーズ(ヒロインの神楽役)。そこから映画『斉木楠雄のΨ難』(2017年)、『新解釈・三國志』(2020年)、ドラマ「今日から俺は‼」(2018年)シリーズなど、“福田組”の主力の一人として活躍するようになった。

橋本の整った容姿と、“顔芸”連発のコメディエンヌぶりや、私生活での酒好きエピソードのギャップに親近感を覚える者は多く、ネット上では「中身はおっさん」「中身は俺たち」などと言われ、男性を中心に支持層を獲得していった。

また、映画『かぐや様は告らせたい~』(2019年)シリーズや、ドラマ「王様に捧ぐ薬指」(2023年)など、ラブコメが得意だが、ドラマ・映画好きの層が好む作品への出演や、本格的な芝居経験が乏しい感はあった。

第35回日本ジュエリーベストドレッサー賞での橋本環奈、東京都江東区、2024年7月12日
紅白の司会も朝ドラヒロインもクリアした橋本の今後

おそらく役者・橋本環奈にとってこれまでで最大の壁は、ロンドン公演もあった舞台「千と千尋の神隠し」だったのではないか。千尋役のダブルキャストである上白石萌音(27歳)は演技力に定評があり、その上白石の芝居を見て「すごい」と驚嘆しつつも葛藤する橋本の姿が、メイキング映像に映っていた。

朝ドラ主演も無事にクリアし、NHK紅白歌合戦の司会など、なんでもソツなくこなす橋本だが、自身の内面をさらけ出すような演技を見せてくれるのは、これからかもしれない。

「おかえりモネ」など性格きつめの役で注目された今田

一方、今田美桜は高2でモデル事務所に入ったものの、当初は「学業優先」で、高3のときには「東京で俳優になりたい」という思いが強まっていたが、両親には伝えられず、その葛藤を知った担任が三者面談で両親を説得。「タイムリミットは、みんなが大学を卒業する22歳」という条件で俳優への挑戦を認められるが、そこから福岡でモデル活動をしながらオーディションを受け続け、約1年の“芸能浪人”を経て現事務所の社長に声をかけてもらい、上京したという苦労人だ(Yahoo!ニュース特集2020年2月9日)。

また、最初から主演など華々しい道を歩んできた橋本と違い、今田は演技仕事においても地道なキャリアを重ねている。朝ドラ「おかえりモネ」(2021年度上半期)では、華やかな雰囲気ながらガツガツした野心家の気象予報士・神野マリアンナ莉子役で強い印象を残し、晴れて今回、朝ドラヒロインとなったわけだが、そもそも役者として注目されたきっかけは“悪役”での巧みさだった。

「花のち晴れ~花男Next Season~」(2018年)では、いじめっ子役として、ぶりっ子と小悪魔の二面性を声のトーンや表情、仕草などで見事に演じ分け、話題になった。また、「3年A組―今から皆さんは、人質です―」(2019年)でも読者モデルの“女王様”キャラである高校生を熱演。

「カルティエと日本 半世紀のあゆみ『結 MUSUBI』展」を訪れた今田美桜、東京都台東区、2024年6月10日
今田は脇役からスタートし、2022年に初めて連ドラ主演

そうして群像劇や学園ドラマで、アンサンブルキャストのひとりとして徐々に知名度を上げていき、2022年の「悪女(わる)~働くのがカッコ悪いなんて誰が言った?~」(2022年)で連続ドラマ初主演。そこからは生方美久脚本の「いちばんすきな花」(2023年)でカルテット主演、「花咲舞が黙ってない」第3シリーズ(2024年)と順調に主演を重ねている。

今田の場合、アイドル活動はほとんどしておらず、もともと俳優を目指して上京しただけに、芝居に対する高い熱量と、作品選びの巧さが大きな武器となっている。

たたかれやすい名作リメイクにおいてもそうだ。例えば、「花咲舞~」では前シリーズ主演の杏の評判が良かっただけに、放送開始当初はネガティブな意見もあったが、回を重ねるごとに今田の全力の元気ぶりと正義感の強さに惹かれる人が増え、結果的に今田の認知度と人気をさらに高めることに。かつては石田ひかりが演じた「悪女~」もそうだった。

非メジャー映画にも出て、晴れて朝ドラヒロインになった

その一方、規模や予算・注目度ではなく、作品の内容・質で出演作を選んでいると思えるところに、芝居への本気度が見える。

例えば、初主演映画は、LGBTをテーマとした中川駿監督の短編『カランコエの花』(2018年)で、これは数々の映画賞を受賞。

さらに役者としてのすごみを見せたのは奥山由之監督の映画『アット・ザ・ベンチ』。今田は好きな人に一方的に執着し、家出した女性を演じ、姉を連れ戻しに来た森七菜演じる妹と激しく言い争い、叫び、髪を振り乱し、全身で感情をぶつけ合う壮絶なきょうだいゲンカを見せた。途中まで今田であることがわからないくらいのすさまじい熱演ぶりだ。

ちなみに、「おむすび」は橋本と共演経験があり、仲良しの佐野勇斗が夫役を演じていたが、「あんぱん」はその信頼関係をさらに上回る相手との共演となる。

ご存じ、北村匠海とは『東京リベンジャーズ』シリーズでの共演のほか、半沢直樹スピンオフドラマSPや映画『君は月夜に光り輝く』など6度目の共演で、相性抜群だ。

「あんぱん」は定番の時代設定で、史実ベースという安心感

また、完全オリジナルのストーリーで「ギャル」「栄養士」「震災」「コロナ禍」など盛り込む要素が多く、取材した情報、キャストのスケジュール、ドタバタコミカルな演出の手クセなどを調和させ、まとめ上げるのに難儀した感のある「おむすび」と違い、「あんぱん」は、やなせたかしという著名なモデルがいて、ベースの史実があるという安心感はある。

『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 あんぱん Part1』プレスリリースより

やなせは遅咲きで、漫画家デビュー後も本のヒット作が出ずに苦しむ中、妻が「なんとかなるわ。収入がなければ私が働いて食べさせるから」と言い、支えてきた。

今は夫婦共働きが当たり前の時代。また、結婚しない選択肢も当たり前になった。そんな令和の今にも通じる物語として、夫をただ健気に支えるのではなく、ときには主導権を握ることもある自立したヒロインを今田美桜がイキイキと元気に明るく演じるのではないかと期待している。

田幸 和歌子(たこう・わかこ)
ライター
1973年長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーライターに。ドラマコラム執筆や著名人インタビュー多数。エンタメ、医療、教育の取材も。著書に『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など

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