今、この記事を読み始めたあなたの姿勢はキレイ?ドキッとした人は、どんな姿勢になっているだろうか。現代人は猫背や反り腰など姿勢悩みが増えている。それは座り姿勢だけではなく歩いているときの姿勢も同様。姿勢が悪いと見た目が悪くなるだけではなく、代謝が悪くなって太りやすくなったり、不調の連鎖が起きるという……。逆を言うと、正しい姿勢を保つだけで、美しい見た目を手に入れるだけではなく、痩せることに繋がるのだ。今回は、10万人以上のウォーキングを指導したウォーキングスペシャリストの山口マユウさんより、正しい姿勢を作り方やメリット、簡単に出来る正しい姿勢の作り方を教えてもらった(下記「」内、山口さん)。
姿勢が悪いことによる5つのデメリット
姿勢が悪いと下記のようなデメリットがある。
①見た目が老けて見える
「姿勢が悪くなることで、猫背になり頭が垂れ、見た目が老けてみえます。さらに、姿勢の良い状態と比べて、肩の位置が前のめりになってしまい、せっかくオシャレな洋服を着ても、本来の美しい見え方にならないデメリットもあるでしょう」
②呼吸が深くできない
「猫背なることによって、肺などの臓器が圧迫されて、その結果呼吸が浅くなってしまいます」
③血流が悪くなる
「筋肉や関節が圧迫され、血流が滞りやすくなります。また、リンパの流れも悪くなり、老廃物が排出されにくくなるため、むくみや脂肪の蓄積につながります」
④燃焼しづらい体になる
「深い呼吸ができないと、酸素の供給量が減り、脂肪をエネルギーとして燃焼する有酸素代謝が効率的に行われません。さらに、血流が悪くなると、酸素や栄養素がスムーズに供給されず、脂肪燃焼に必要な代謝が落ちてしまいます」
➄メンタルの不調
「姿勢が悪い事で肩の不調だけではなく、長期間痛みが続く不快感によってメンタルの不調へと負の連鎖が起こってしまいます」
近年は“歩く老化”が増えている
さらに、山口先生によると現代人は“歩く老化”と呼ばれる体の変化が深刻化しているという。
「歩く老化とはどんな状態かというと、歩幅が短くなって、右足と左足が開きすぎてしまう状態です。そのような状態が続くと、足が太くなる・お尻が大きくなる、下っ腹がたるんでしまうなどの症状が現れます。これは老化によって筋肉量が落ちることが大きな原因ですが、普段の歩く姿勢が崩れることも原因です。なので、歩く老化を防ぐためにはしっかりした姿勢で歩くために必要な筋肉量と柔軟性が大事になってきます」
“自称・姿勢が良い人”に多い「反り腰姿勢」
「『私は猫背ではないから大丈夫』と思っている人も、今一度自分の姿勢を見直してみてください。ご自身の姿勢に自信がある方でも、胸を開くことで良い姿勢だと思ってやっている方がいらっしゃいますが、その多くの方は反り腰姿勢になってしまっているのです。反り腰になると、体が大きく見えてしまう、スタイルダウンしてしまう、あごが自然と上がって見た目も良くないというデメリットがあり、猫背でも、反り腰でも良い姿勢とは言えないのです」
本当の「良い姿勢」とは?
では、良い姿とはどんな姿勢なのか?具体的な正しい姿勢の作り方を山口さんに教えてもらった。
足を揃えて壁にかかとを付けたときに、お尻&肩甲骨&後頭部がくっついている
背中と壁の間に手をパーにした状態(第二関節を曲げた軽いグー)が入る
肩と壁の間に指が2~3本入る
背骨の腰部分 を前傾10~15度
「肩は解剖学上、壁に付かない構造をしています。オーダーメイドのハンガーは、肩が少し前に向いていますよね。それが分かりやすい例です。
自分の姿勢をチェックするときのコツは、③でもあるように、壁と肩の間に指2~3本分が入る空間がちょうどいいのです。左右で入る指の本数が違う人は、体にゆがみがある状態。しかし、姿勢が良い人でも指4本分入る隙間があるなど、理想のバランスで姿勢を保てている方は少なく、現代人は姿勢が崩れがち。
その原因は、スマートフォンの画面を見る時に、後頭部が前のめりになってしまうことが多いため。まずは、今の自分の姿勢を知るところが、良い姿勢への第一歩なので気を落とさずに、正しい姿勢を身に付けていきましょう」
良い姿勢であることのメリット
①脂肪燃焼しやすい体になる
「血流やリンパの流れがスムーズになり、老廃物が排出されやすくなります。さらに、猫背により圧迫されていた肺がしっかり機能することによって呼吸が深くなり、酸素がしっかり取り込めることで脂肪燃焼効果アップする効果もあります」
②変形性膝関節症の予防になる
「変形性膝関節症は男性より筋肉量が少ない女性がなりやすいと言われています。さらに姿勢が悪くなることで拍車がかかることも。猫背や反り腰によって重心が正しくない位置にずれることで、それを補おうとして膝が曲がり、膝への負担が大きくなってしまいます。逆を言えば、正しい姿勢を取ることにより膝への負担がかかりにくくなるのです」
③体の重心が整い、美脚になる
「筋トレを頑張っているのに痩せたい場所が痩せないという経験はありませんか?正しい姿勢が取れていないと、重心が体の中心からずれてしまい、外側だけ発達することで、体型が崩れていってしまいます。ジムに通う前にまずはしっかり姿勢を正すことが、筋トレの効果を上げる一歩です」
正しい姿勢で歩く「美姿勢ウォーク」とは?
「美姿勢ウォークとは、作ったままの良い姿勢で歩くことです。正しい歩く姿勢とは、頭が骨盤の上に乗っている状態を保てていること。現代人の多くはかかと重心の人が多いのが現状です。下記の歩くときの意識するポイントをチェックしてみましょう」
① 適正歩幅で歩く
「適正な歩幅は、身長の45%と言われており、(身長)-100cmで求めることが出来ます。現代人は歩幅が狭い人が多いため、歩幅を広く意識しましょう」
② 肘と肩の中心(二の腕の中心)から引くようにする。
「腕は真後ろにひく肘を引くというよりも、自然と落ちてくるように引きましょう。それをすると肩甲骨周りから引くことが出来ます」
③ 右足と左足を開きすぎない。
「スニーカーの場合は、両足を揃えたときにそのまま前にでるようにするのが理想。ハイヒールの場合は一線を歩くように両足を運ぶと見た目の美しくなります」
スタイルアップも叶う!「ボーリングウォーク」
「上記の歩く老化でも説明したように、美しい姿勢で歩くためには、筋肉量と柔軟性が必要です。そこで効果的なトレーニング『ボーリングウォーク』を説明します」
<やり方>
① 1歩目2歩目は普通に歩く
② 3歩目で、腰を真下に落としてボーリングのボールを投げるポーズを取る
<ポイント>
まっすぐ前を見る。
「このボーリングウォークは一言でいえば『歩くスクワット』。3歩目を大きく踏み込むことにより、鼠径部をしっかり使う・脚を踏み込む力・指で地面をとらえる感覚が身に着くのです。このボーリングウォークは即効性が高く、上記の①~②を4回やってみると、普通に歩く時の歩幅がいつもより広くなっているが実感できると思います」
3秒で正しい姿勢に導く!「アップ・スクウィーズ・パンチ」
「毎回正しい姿勢を取るために壁を使ってチェックするのはなかなか大変なこと。簡単に正しい姿勢に導く方法があります。それが『アップ・スクウィーズ・パンチ』。元々は、舞台役者さんが舞台に上がる前に姿勢を正すためにやってもらっていたもので、続けていくと脚が動きやすくなる、前に出しやすくなる効果があります」
<やり方>
① 耳の後ろに両手をのばした状態(体幹がグッと上に上がる)
② 体の前でうでを交差して、肘から後ろに引く
③ 拳をお腹の前に持ってきて、お腹に力を入れる
<ポイント>
・座ってやってもOK
・毎日こまめに行う(トイレに行くタイミング、休憩時間など)
正しい姿勢で歩くためには続けることが大事
「自然に正しい姿勢を取れるようになるためには、続けることが大切。まずは20日間続けてみましょう。20日間続けられたら、次は2ヵ月……と期間を延ばしていくと体がどんどん正しい姿勢を覚えていきます。『歩く』と『ウォーキング』は全くの別物。『歩く』は移動ですが、『ウォーキング』には目的があります。正しい姿勢で歩けるようになると、上記で述べたような体への変化が出てくるだけでなく、美しい姿勢を取れているというだけで自信にもなるのです。まずは、会社やスーパーまでのウォーキングの仕方を変えてみましょう。未来のステキなあなたのために」
お話を伺ったのは……
山口マユウ(やまぐち・まゆう)さん
日本DFWALK協会代表。和歌山県出身、証券会社に就職後、モデルの道へ進む。その後、「90歳になってもゴルフのできる人生」をコンセプトにウォーキングを通じて活力寿命延伸活動を推進。大阪梅田と和歌山にウォーキング専門スタジオ『WDS』を運営しながら、講演やイベントで全国各地へ行脚している。今年開催されるEXPO2025大阪・関西万博 ヘルスケアパビリオンへの出展も決定。著書に『医者が絶賛する歩き方 やせる3拍子ウォーク』(ダイヤモンド社)