『これって虐待ですか 自己肯定感が低くて怒りを止められなかった私が息子と一緒に笑えるようになるまで』(あさのゆきこ/KADOKAWA)は、育児に苦悩する母親の姿をリアルに描いたコミックエッセイだ。
「ダメな母親」「ポンコツ」初めての子育てに苦戦し、憂鬱な日々を送る主人公のみずきの頭の中は、常にそんな言葉で占領されている。
家事も育児もしてくれる優しい夫と、気軽に頼れる実家。そして育てにくさのない息子。周りと比べ、恵まれた環境なのに辛いと思ってしまう自分を責め、上手くいかない育児に苦しむ。周りには頼れず、やがてイライラを子どもにぶつけてしまう。
「もしかしてこれって虐待? でも殴ってないからセーフだよね」
子育ては、自身と向き合わざるを得ない場面に多く出くわす。自己肯定感が低い人は育児に向かないのだろうか? 何度となく繰り返される、自分を否定する内なる声にみずきも苦しむ。
「◯◯しなくちゃ…」と自分を追い詰めていくみずきの姿からは、彼女の辛さと自己肯定感の低さが痛いほど伝わってくる。
やがて心身のバランスを崩したみずきは、ついに最悪の言葉を夫にぶつけてしまう。しかし夫からの指摘によって、「私はちゃんとこの子を見ていたのか?」と我に返る。そこから徐々に、目線を自分から息子へと向けることができるようになっていく。
育児に正解はないと言われるが、年齢ごとの大変さを抱えながら親業は続いていく。だからこそ、いつからでも関係の修復は可能なのかもしれない。みずきと息子の関係が変わっていく過程をぜひ見届けてほしい。
巻末で描かれる成長した息子とみずきの姿は、悩みを抱える子育て世代に勇気を与えてくれるはずだ。育児で苦しさや罪悪感を抱えている人に、ぜひ手にとっていただきたい。
文=ネゴト / Ato Hiromi