アレッサンドロ・ミケーレが提案する、「ボウワウ」という新アイコン
「時代遅れって言われるものにこそ、未来があるんだ」
そう『VOGUE』に語るのは、ヴァレンティノ ガラヴァーニ(VALENTINO GARAVANI)の新クリエイティブ ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレ。
グッチ(GUCCI)時代からミケーレが一貫して貫いてきたのは、“古さ”を恐れない姿勢。アーカイブの奥底に眠る美をすくい上げ、ひねりと遊び心を添えて、現代に蘇らせる——そんな彼の美学は、ヴァレンティノでもしっかりと息づいている。まずそのエッセンスが注がれたのが、パンプスだった。
「Bowow(ボウワウ)」と名付けられたその一足は、丸みを帯びたトゥにリボンモチーフ、ヒール高はわずか4.5cm。クラシックで上品、それでいてどこか肩の力が抜けた、愛らしい佇まいが魅力だ。しかし、これは単なる“可愛いパンプス”ではない。ミケーレが仕掛けたのは、パンプスというアイテムそのものへのアップデートだった。
ここ十数年、パンプスはファッションの主役からやや遠ざかっていた。スティレットヒール、尖ったトゥ、ストイックなシルエット——美しさの象徴でありながら、現実的な日常とはどこか乖離していた。だが1960〜70年代の女性たちは違った。スニーカーという選択肢がまだ一般的でなかった時代、女性たちは朝から晩までヒールで過ごしていた。だからこそ、足に優しく、それでいて美しい靴が求められていた。
「ボウワウ」は、そんな時代の記憶をたぐり寄せながら、2025年の“リアルな足もと”として再構築されたシューズだ。どこか懐かしくて、それでいて新しい。ミケーレの「古く見えるものが、1ヶ月後にはトレンドになる」という言葉通り、その魅力は確実に広がりを見せている。
すでに、感度の高いファッショニスタたちは動き始めている。アリアナ・グランデは白のレースタイツと合わせてスタイリング。キャロライン・ダウアーやナラ・スミスなど、ファッションの最前線にいる面々も、フロントロウで「ボウワウ」を選んでいた。
「ボウワウ」のラインナップも多彩だ。ブラックやホワイトのソフトレザーはもちろん、花柄やクロコ型押し、ビジューをあしらったものまで、素材とディテールで無限に表情を変える。「次はバックル? それとも彫刻的なヒール?」——ミケーレの次の一手は、誰にも予測できない。
でも、ひとつだけ確かなのは、「ボウワウ」は今のムードを象徴する、新しいアイコンになるということだ。
Text: Selene Oliva Adaptation: Saori Yoshida
From: VOGUE.IT
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