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Nスぺ、戦後80年ドラマ『シミュレーション』制作開始 主演は池松壮亮 舞台は“総力戦研究所”

  • 2025.3.27
ドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』主演の池松壮亮 (C)NHK

池松壮亮が主演するNHKスペシャル終戦80年ドラマ『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』の制作が決まった。NHK総合にて前・後編で8月の放送を予定している。

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本作は、猪瀬直樹のロングセラー・ノンフィクション『昭和16年夏の敗戦』を原案に、命をめぐる“頭脳と心の闘い”を描く人間ドラマ。主人公・宇治田洋一(研究員)役に池松壮亮を迎え、石井裕也監督が初めて戦争ドラマに挑む。

1941(昭和16)年4月。真珠湾攻撃の8ヵ月前。国の指示の下、日本中のエリートたちが秘密裏に集められた。対米戦をあらゆる角度からシミュレートするためにつくられた「総力戦研究所」のメンバーたちだ。若手官僚、報道人、軍人…次世代の日本を担うまさに〝ベスト&ブライテスト〟たち。模擬内閣を作り、軍事、外交、経済など、さまざまなデータや情勢を分析。米国と戦った場合のありとあらゆる可能性を探っていく。そして最終的にエリートたちが導き出した結末は、“圧倒的な敗北”という、あまりにも厳しい結論だったー。

彼らはどのようにして、対米戦必敗の結論へと至ったのか。そしてなぜ、未来を的確に予見していた彼らの結論が顧みられることなく、国家や軍は、勝ち目のない戦争に突き進んでいったのか-。国土を灰じんに帰し、310万もの戦没者を出すに至った戦争は決して“結果論”で片付けられない。日本敗戦までのプロセスは、原爆投下以外ほぼ全て、総力戦研究所の若手エリートたちが開戦前にシミュレートしていたからだ。

それから80年。今なお世界から銃砲の音が鳴りやむ日はない。戦争の時代に、理性を超えて人びとを突き動かしていく“危うい空気”の正体とは何なのか。それがこのドラマのテーマである。

池松演じる主人公・宇治田洋一は、産業組合中央金庫(現・農林中金)の調査課長。東大法学部を首席で卒業したエリート。経済全般に明るいだけではなく、地方の農家など、中央からは見えにくい厳しい現実を肌で知っている。ある日突然「総力戦研究所」へ招集される。模擬内閣を作り、軍事・外交・経済などあらゆる角度から開戦予測を立てよと言われ、その議論をまとめる“内閣総理大臣役”を命ぜられる。そこには満州で亡くなった洋一の父の“過去”が絡んでいた。

洋一たちが、陸軍大臣・東條英機らから求められたのは米国に“勝つためのシミュレーション”。しかし、日本を取り巻くデータや情勢が突きつけるのはどれも日本にとって不利な結果ばかりだった。軍部への複雑な感情から当初消極的だった洋一だが、シミュレーションが厳しい現実を示し始めると、「国を破滅に導く対米戦に踏み切るべきではない」という思いに駆られていく。

池松は「この国に生まれ、戦後80年という年に俳優として今作に出逢えたことは、大きな大きな使命と責任をもたらしてくれるものでした。言論や精神や命までも戦争のために国家の統制下に置かれた時代に、研究員の彼らは感情論ではなく、精神論ではなく、事実にたどり着き、事実に畏怖し、結論を出しました。この世界に無数にある黙殺の歴史の物語となっています。世界歴史史上唯一の被爆国の戦後に生まれたことの責任が、私自身にもきっとあるはずだと信じて、石井監督のもと、素晴らしいスタッフ、キャストと共に、毎日祈るように撮影しています」とコメント。

石井監督は「開戦前夜の人間たちの様々な葛藤は、今の私たちにとって決して無関係ではありません。当時の日本社会に漂っていた不気味な『空気』は、確実に引き継がれて今の社会にも存在するからです。日本を代表するキャスト、スタッフと共に今この作品が作れたことの大きな意義を感じています」としている。

NHKスペシャル『シミュレーション~昭和16年夏の敗戦~』は、NHK総合にて前・後編で8月放送予定。

※コメント全文は以下の通り。

<コメント全文>

■主演・池松壮亮

なぜこれほどまでに平和は遠いのか。
平和だけでなく、なぜこれほどまでに良き未来への道のりは険しいのか。
2025年に今作を撮影する日々の中で、この問いが頭から離れません。
この国に生まれ、戦後80年という年に俳優として今作に出逢えたことは、大きな大きな使命と責任をもたらしてくれるものでした。
言論や精神や命までも戦争のために国家の統制下に置かれた時代に、研究員の彼らは感情論ではなく、精神論ではなく、事実に辿り着き、事実に畏怖し、結論を出しました。この世界に無数にある黙殺の歴史の物語となっています。
世界歴史史上唯一の被爆国の戦後に生まれたことの責任が、私自身にもきっとあるはずだと信じて、石井監督のもと、素晴らしいスタッフ、キャストと共に、毎日祈るように撮影しています。
どうかよろしくお願いいたします。

■脚本・演出 石井裕也

これまで作られてきた日本の戦争ドラマ・映画は、終戦間際に一般市民が不幸な目に遭う、いわゆる戦争被害者の視点に立つものが多かったと思います。私が知る限り、その大元となった「なぜこの国は無謀な日米開戦に踏み切ったか」にフォーカスしたものはほとんどありません。あまりにも事態が複雑でドラマ化が困難だったのも一因でしょうが、ここまで手出しできなかった理由は、正直に言ってしまえばほとんどタブーに近かったからだと思います。

開戦前夜の人間たちの様々な葛藤は、今の私たちにとって決して無関係ではありません。当時の日本社会に漂っていた不気味な「空気」は、確実に引き継がれて今の社会にも存在するからです。日本を代表するキャスト、スタッフと共に今この作品が作れたことの大きな意義を感じています。

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