1. トップ
  2. 恋愛
  3. 引っ越し業者の「比較サイト」を使うより効果的…1円でも引っ越し代を安くする"とっておきのフレーズ"

引っ越し業者の「比較サイト」を使うより効果的…1円でも引っ越し代を安くする"とっておきのフレーズ"

  • 2025.3.27

引っ越し代が高騰していると相次いで報じられている。費用を安く抑えるにはどうしたらいいのか。12年間で合計7回の転居を経験し、「引っ越し貧乏」になったというフリーライターの大宮冬洋さんが、「たかくら引越センター」代表の髙倉弘樹さんに賢い節約術を聞いた――。(前編/全2回)

「たかくら引越センター」代表の髙倉弘樹(こうき)さん。
次の引っ越しはできるだけリーズナブルにしたい

新居探し、自治体などの各種手続き、荷造りに後片付け……。引っ越しは「やるべきこと」だらけで気が重い。そして、お金もかかる。新しい家具や家電の購入、不動産手数料に敷金・礼金、そして引っ越し業者への支払いなどだ。

筆者は大学卒業後の12年間で合計7回の転居を経験した。引っ越し好き、では断じてない。退職や離婚などのやむにやまれぬ理由ばかりで、そのたびになけなしの貯金が数十万円単位で減ってしまって苦しかった。再婚してから現在に至るまでの12年間は同じ賃貸マンションで暮らし続けており、貯金も少しだけ増えた。「引っ越し貧乏」という言葉の意味を身をもって知っているのだ。

次に引っ越さねばならないときが来たら、できるだけリーズナブルかつ気分良く引っ越したい。理想の指南役がいる。吉本興業所属のお笑い芸人でありながら、引っ越し業界歴25年。引っ越し専門会社「たかくら引越センター(以下、TMC)」代表の髙倉弘樹こうきさんだ。

福岡県出身で高校生のときから引っ越しのアルバイトに精を出していた髙倉さん。芸人になるために退職したが、引っ越し技術があまりに高すぎて前の勤務先から「戻って来ないか」と声がかかったという逸話の持ち主だ。

30歳のときにTMCを設立。「引っ越しはおもしろい!」というモットーを掲げ、人を喜ばせる引っ越しを追求しながら現在に至る。10人の社員とともに現場作業をし続けつつ、芸人の目線で引っ越しのおもしろさを常に客観視している。コストパフォーマンス最高の引っ越しをぜひ教えてもらいたい人物なのだ。

引っ越し業者比較サイトを勧めない理由

まずは大事なお金の話から。素人考えですぐに思いつく節約法は、引っ越し業者比較サイトを使っての相見積もりだ。しかし、髙倉さんは「お勧めしない」と回答。理由は2つある。1つは、いい加減な見積りでとにかく仕事を得ようとしたり、現場での融通が利かなかったりする「ハズレ」の業者に依頼してしまい、引っ越す当日になってトラブルが生じる危険性があることだ。

※写真はイメージです

「荷物がトラックに載せきれずに、別途料金がかかったり自分で運ぶ羽目になってしまったり。事前に申告していない荷物が出てくることも引っ越しにはつきものですが、ハズレの業者だとトラックの荷台が空いていても『ダンボール10個までで見積もっているので、ダメです』と言われたりします」

もう1つの理由は交渉の煩わしさ。比較サイトに連絡先などを登録して相見積もりを依頼すると、一度に10社以上からメールや電話が来たりする。また、引っ越しが終わってからもインターネットや電気などの切り替えに関する営業の連絡が来る場合もあるという。煩わしいだけでなく、個人情報管理の面でも不安が残る。

相見積もりは4社とれば十分!

とはいえ、相見積もりを取ること自体は間違っていない。髙倉さんによれば、大手の場合は相見積もりによって当初の提示金額より半額近くになるケースもある。その際、比較サイトを使うではなく、各社のホームページなどから自分で連絡すると良い。

「相見積もりは4社で十分でしょう。大手を2社、中堅を1社、うちのような地域密着の会社を1社入れるとバランスがいいと思います。その最安値で選べば、ほぼ間違いありません」

※写真はイメージです

引っ越し会社側からすれば見積りは生命線だ。実際の荷物量を慎重に推測し、引っ越し作業にかかる時間と人数を算出し、金額を顧客に提示する。高すぎると他社に競り負けてしまうし、かといって安く見積もり過ぎると赤字になってしまう。

客側として、見積りの取り方にはコツがあるらしい。荷物リストなどを送信する文面を丁寧に作成することだ。個人宅の場合は事前に業者が訪問して見積り書を作るような手間はかけられないため、オンラインでのやりとりで金額が決まってしまう。雑な記入をすると、「家具以外の荷物はダンボール20個ぐらいとか適当に書いてあるけれど、本当か? 実際に荷造りをしたら倍ぐらいはありそうな雰囲気だな」と思われてしまいかねない。

髙倉さんは「僕はメールの文面からその人の部屋の汚れ具合がわかります。特殊能力です!」と胸を張る。しかし、能力が不調のときもある。

「たまに間違えてしまい、現場に行った従業員から『荷物がトラックに乗り切りません!』と電話がかかってくることがあります。その場合は、僕が責任を持ってもう一台で応援にかけつけますが、特に繁忙期の3月4月は人手に余裕がないので見積りの間違いはできません」

特殊能力というよりも経験と必死さの賜物たまものと言えるかもしれない。なお、TMCは価格交渉に時間をかけられないため、最初から採算ギリギリの価格を提示することが多いという。引っ越し業者が安心して見積りを作るためには、客側ができるだけ正確な情報を伝えることが不可欠なのだ。

時間刻みで現場に向かう社員のためにも、荷物の見積もりは絶対に間違えられないと語る、「たかくら引越センター」代表の髙倉弘樹さん。
「この期間で一番安いタイミングはありますか」が正解

相見積もりを取って引っ越し業者を決めるのにはタイミングも重要。引っ越しのコストはほとんどが人件費であるため、社員を抱える会社側としては「作業をしていない時間を作らない」ことが経営の必須課題となる。「引っ越しの閑散期」もしくは「すき間」を狙うことが価格を下げるポイントだと髙倉さんは強調する。

「子どもがいる家庭の引っ越しは春・夏・冬の長期休みに集中します。特に学年が変わる3月がピークで、ゴールデンウイークまでが繁忙期です。ゴールデンウイーク明けから落ち着き始め、6月は暇。もう一つの閑散期は10月です」

実際にはこうした時期に都合良く引っ越せるとは限らない。また、年間を通して金曜日土曜日や月末は予約が多かったりする。大安などのお日柄にこだわる人も少なくない。髙倉さんによれば、「今週の土曜日に引っ越したい。先勝だから午前中にすべての作業を終えてください」などとピンポイントで依頼されても安くできる余地は少ない。

「繁忙期である3月であっても、『26日から30日の5日間ならば御社の都合に合わせられます。一番安く引っ越せる日時をご提示ください』などと交渉してみると良いでしょう。その日程の中ですき間があれば安くできます。相見積もりを取り始めるのは引っ越したい時期の1カ月~3カ月前ぐらいがおすすめです。余裕を持って交渉ができます」

「不要品無料回収」のチラシは危険

時間的な余裕を持って引っ越し準備を始めると他にもいいことがたくさんある。荷物の量を正確に把握して見積りを取れるだけではなく、不要品を廃棄して荷物を減らし、それだけ引っ越し費用を安くできる。

ただし、ポストに入れられる「不要品無料回収」的なチラシを安易に信用して連絡してはいけない。不法投棄をする業者が多いだけでなく、自宅にやってきたコワモテに「これは無料では持って行けない」と法外な回収費用を請求されたという話も聞く。髙倉さんは自治体による粗大ごみ回収サービスを利用することが最も安心かつ安価だと断言する。例えば東京都江東区では食器棚(高さと幅の合計が270cm以下)の回収費用は1300円。ネットか電話で回収日を予約し(江東区の場合は週2日)、コンビニで粗大ごみシールを購入して貼り、当日の朝8時までに所定の場所に置いておけば良い。こんな公共サービスがあるのだから利用しない手はない。

タワマンは引っ越し費用も高くつく

節約編の最後に、「どんな家に住むと引っ越し費用は安く済むのか」について髙倉さんに聞いた。大きな一軒家の引っ越しが最も高くつくと筆者は思っていたが、プロの判断は異なる。繰り返しになるが、引っ越し費用は「作業員が何人必要で、どれぐらいの時間がかかるのか」で決まるからだ。

「最も高くつくのは、タワーマンションの高層階からまた別のタワーマンションの高層階への引っ越しです。搬出用のエレベーターは入口から遠い場所にあることが多く、すべてに養生シートを貼らねばなりません。作業員は最低でも4人は必要で、駐禁を取られないための見張り、マンションへの作業申請などの事務処理もあります。うちは3月だけでも100万円の引っ越しを2件受注しました。荷造りから荷解きまでのオプション付きですが、引っ越し作業自体も通常の3倍は手間がかかります」

タワーマンションに住む芸能人のような顧客も多いTMCだが、高い客ばかりを相手にしているわけではない。アパートの1階に住んでいる人がまた同じようなところに引っ越す案件は数万円で済む。単身者の家具だけの引っ越しを3万円で請け負ったこともある。引っ越しはとにかく「人数×時間」なのだ。

「エレベーターの有無にもよりますが、集合住宅は4階以上になると引っ越し費用が格段に上がっていきます」

さて、髙倉さんに伝授されたノウハウをまとめよう。


(1)準備:引っ越しの準備は1カ月以上前から始めると良い。不要品は自治体の粗大ごみ回収サービスを利用して減らし、自分で少しずつ荷造りをする。

(2)交渉:おおよその荷物量を把握したら、引っ越し業者比較サイトは使わず、大手2社・中堅1社・地域密着1社の合計4社から自分で相見積もりを取る。その際、荷物量を把握できていない人だと思われないために、丁寧な文面作成を心がける。引っ越し日時を指定して料金を聞くよりも、一番安く引っ越しできる日時を各業者に聞くほうが良い。

(3)余談:引っ越し費用を下げたいのであればタワーマンションの高層階は避ける。
※タワマンには住む人は100万円程度の費用は気にしないという説もある。

以上が引っ越し費用の節約編だが、安いだけでは「引っ越しはおもしろい」「最高の引っ越しだ」とは思えない。髙倉さんには、気分がウキウキして新生活の運気が上がるような引っ越しも教えてもらいたい。近日中に「気分高揚編」をお届けする。

大宮 冬洋(おおみや・とうよう)
フリーライター
1976年埼玉県所沢市生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリング(ユニクロ)に就職。退職後、編集プロダクションを経て、2002年よりフリーライターに。著書に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せの見つけ方~』(講談社+α新書)などがある。2012年より愛知県蒲郡市に在住。趣味は魚さばきとご近所付き合い。

元記事で読む
の記事をもっとみる