1. トップ
  2. レシピ
  3. 【"並"でも十分に美味しい!むしろ狙って食べたい】噛み応えと濃厚な味わいが楽しめる"並"の魅力を再発見「上野・焼肉乃 富士吉」

【"並"でも十分に美味しい!むしろ狙って食べたい】噛み応えと濃厚な味わいが楽しめる"並"の魅力を再発見「上野・焼肉乃 富士吉」

  • 2025.3.27

この数年、東京の町焼肉が劇的に進化している。今回ご紹介するのは、東上野の通称コリアンタウンと呼ばれるエリアの路地裏にお店を構える、上野の「焼肉乃 富士吉」。

【"並"でも十分に美味しい!むしろ狙って食べたい】噛み応えと濃厚な味わいが楽しめる"並"の魅力を再発見「上野・焼肉乃 富士吉」

■「今日の“特上”・“上”・“並”を教えてください」

JR上野駅から昭和通りを渡った東上野エリアは焼肉の町だ。昭和通りの一本裏手の通りには焼肉用の生ホルモンが気軽に買える肉店や、自家製キムチを販売する店が軒を連ねている。

夕刻にはその建物と建物の間を抜ける、路地裏の焼肉店にぽつぽつと明かりが灯る。数年前の代替わりとともに内装を調えた「焼肉乃富士吉」もその一角にある。

外観

実はこの店は表通りにある老舗キムチ専門店「共栄」の親族の店。2020年、店主の牧野徹さんは長く店に立っていた叔母からバトンを渡され、「東上野で味で一番になる」。そう決めて仕入れも仕込みも変えたが、キムチだけはいまも変わらぬ「共栄」仕込み。人気の「ネギキムチ」は誰もが注文する品だ。

「さすがにキムチは変えられません(笑)。キムチ目当てのご常連もいらっしゃいますし」

肉のメニューを開くとタン、カルビ、ハラミ、ロースがそれぞれ「特上」「上」「並」と揃っている。正肉のカルビとロースはどのグレードを選んでも「すべて和牛のA5」。やわらかく味わい深い部位は「特」、比較的噛み応えのある肉は「並」になる。

「モノと状態次第ですが、例えば今日は特上ロースがシンシンで並ロースはシンタマのマルカワ。特上カルビはザブトンで、今日の並カルビは小三角で日によってはインサイドスカートを使っています」

正肉は黒毛和牛のA5。といっても、カルビ・ロースともに並肉はサシがほどほどで、噛んで味が伸びる部位が選ばれている。小三角は強い食感と肉の濃い旨味が特徴だ。

インサイド(スカート)は横隔膜の近くでウチハラミとも言われる部位。その名の通り、正肉なのにハラミやサガリに近い食感がある。マルカワは内ももに近いシンタマの一部。中心部のシンシンを覆うような部位の肉で、いずれも和牛のA5ならほどよい噛み応えと濃厚な味わいが楽しめる。

軸は決まった。カルビとロースの並を軸に一通りを注文して、編集部・Sさんとわりとまじめに打ち合わせをしながら肉を待つ。

真っ先に到着したのはもちろんビールと「共栄」のキムチ。エースはシャキシャキとした浅漬けのネギキムチ。清涼感ある食感とネギと唐辛子の辛味が絡み合い、ビールがグイグイ進む。

キムチ盛り合わせ

一方の盛り合わせは白菜、オイキムチ、カクテキというクリーンナップ。しっかり浸かったカクテキをはじめ、いずれも浸かりの塩梅がとてもいい。一杯目のビールを飲みながら、マッコリもほしくなる(が、序盤ということもあり、自重する)。

次は注文しておいた、人気のミノ刺し。味つけを「赤」の唐辛子ダレと「白」のねぎ塩ダレで悩んでいたら、ハーフでも注文できると聞いて紅白のハーフ&ハーフに。唐辛子の辛味は優しく風味が豊かで、サクサクと心地いい歯切れの食感と奥から立ち上る香りが楽しい。フルサイズにしなかったことをもう後悔しているあたり、組み立てたつもりなのに、欲望に引きずられて場当たり思考になっている。我ながら情けなくもあるが、人生とは選択の連続だ。小さな後悔さえも楽しめるメンタルを身につけたい。

[dancyu]

■”並”が美味しい焼肉店は最高だ!

肉はもちろん牛タンから。オーストラリア産の「上タン」にじりじりと焼き色をつけザクッという強い食感を引き出す。並カルビ(この日は小三角)はタレ味の食感と味わいを満喫し、マルカワの並ロースは塩で肉自体の味わいを楽しむ。どちらも白飯との相性がとてもいい。ここでもライスを小にしたことを小さく後悔したものの、眼の前の白飯を大切に食べていこうと決意する。すぐ脇には2杯目のビールだってあるのだ。

牛タン
カルビ
ロース

続いて提供された「赤スープ」の正体はユッケジャンスープ。軽く4人前はありそうな丼になみなみと注がれている。韓国スプーンのスッカラを差し込んで取り分けようとしたら、中から具材が次々登場。もはやスープというより、カルビ&野菜の旨辛煮込みという風情に近く、満足感がぐんぐん膨らんでいく。

ユッケジャンスープ

しかし「そろそろラストオーダーです」の声がかかると積み残しを解決したくなる。まずは後半に取っておいたホルモンミックスを忘れずに。それに「ユッケが好き」だというSさんのたっての希望で「炙りユッケ」も注文だ。

ホルモンミックスはレバー、ギャラ、センマイ、コブクロなどが盛り込まれる。塩も捨てがたいが、今日はタレで注文。ギャラやコブクロのように深めに火を入れるものとセンマイのようにサッと火を炙りたいものを部位ごとに取り分けながら焼いていく。

ホルモンミックス

「内臓の基準としているのはレバーとセンマイ。レバーは一目瞭然だし、いいセンマイはサクッとした歯切れのいい食感があるんです」

焼き方次第で味が変わる内臓肉は、じっくり焼いて旨味を引き出したり、サッと炙って持ち味を活かしたり。気づけばこの日食べた「上」はタンのみで、「並」ばかりを頼んでしまっていた。

そういえば、焼肉ってこういう肉をジュウジュウ焼いて思いきり食べるごちそうだったっけ。並が美味しい店って、つくづくいい店だ。


◇店舗情報

「焼肉乃 富士吉」
【住所】東京都台東区東上野2‐15‐7
【電話番号】03‐3839‐4129
【営業時間】17:00~22:00
【定休日】日曜日
【アクセス】東京メトロ「上野駅」より4分


文・写真:松浦達也

元記事で読む
の記事をもっとみる