アートとファッションが出合うことで生まれる、冒険と創造に満ちた新たな物語。そんな表現を探しに一行が訪れたのは、アーティスト浜名一憲の千葉県にあるアトリエだった。歴史を感じさせる工房兼自宅の古民家とその庭には、陶芸家である浜名のダイナミックな壺がいくつも置かれている。
「ものすごい迫力で、かっこいいです! 僕もアートが大好きなので興奮します」。ラウールは感嘆の声を上げた。
「もちろん今はデジタルでいろいろなモノに触れることができますが、僕は生で体感する派。多種多様なアートの中でも、特に舞台芸術が一番好き。自分自身も表舞台に立ちますし、目の前に生身の人がいて作り出すアートの形の方が、幼いころからなじみがあるので」。アイドル、俳優、そしてモデルとして身体を使った表現に挑み続けている21歳は、ダンスとファッションモデルとしての経験は、自身の中で相互作用していると話す。
「モデルの仕事をするようになってから、ダンスでもそれまでとはまた違った表現ができるようになりましたし、逆も同じです。モデルの仕事を始めたころは何も分からなかったので、カメラの前で踊ってみたらものすごくいい写真がたくさん撮れていて、ダンスに助けられました。その体験が自分の芯にあり、今はその両方を育てている段階です。今後はよりこのかけ合いを強めて、見たことのない世界観を世の中に提示できたらいいなと思っています」
「あと、ヴォーグさんの取材だから言うわけではありませんが(笑)、最近見つけた『これ自分の世界かも!』というのが、ヴォーグ(ヴォーギングとも呼ばれるダンス表現)なんです。僕は小学校1年生のころからずっとヒップホップをやってきたのですが、1年半ほど前にヴォーグを知ったんです。もちろん、マドンナが90年代に踊っているのでなじみがある方も多いとは思いますが、僕には新しくて、踊ってみたらめちゃくちゃ得意だった。今の若い子たちにも衝撃的に映ったみたいで、すごく反響がありました。実際にヴォーグとヒップホップをミックスしたダンスが自分にはベストマッチだと感じるので、今はそこから自分らしさを生み出し、時間をかけて育てていきたいなと思っているところです」
言葉を丁寧に選びながら、心の内を話してくれるラウールからは、真面目でストイックな印象を受ける。
「それが、本当の自分はわりと怠惰というか、怠け者なんです。でも、そんな自分にも期待してくれた会社の人やファンの人たちがいた。だからその期待に応えたいというのが一番で、自分の本当の内の内から湧き出ている野心って実はそんなになくて。ただ、『みんなありがとう。だったら僕、ちゃんと結果残します!』という感じで、頑張れている。それこそ、パリでモデルを目指してみようというのも、もともとは僕発信ではなく、僕の表現に対してファンの方が半分冗談のような感じで、『パリコレみたい』と言ってくれたのがきっかけでした。でも、当時の僕はファッションの世界にまったく詳しくなく、調べてみたら面白そうだった、というのが入り口になっています。そういう導きに反抗せずに、素直に感謝の気持ちをもってやってきて今に至っている感じです」
ただ、怠惰だと言いながらも、一度決めた目標に向かう熱量は誰よりも高い。「好きだから頑張れる」と言うが、嫌なこともやらなければいけないときだってあるはずだ。
「芸能の仕事は、特に“縁”が強い力を持っていると感じているので、どんなときでも、『これは次の結果につながる何かの布石なんだろうな』と思って頑張ります。というのも、僕は結構運命的な要素を信じているから。ものすごく直感的なものなんですけど、何かが起きそうだと感じたら、その直感に従って行動します」
今年はSnow Manのデビュー5周年というアニバーサリーイヤーでもある。この5年の間に、10代から20代という年齢はもちろん、彼を取り巻く環境も大きく変化した。
「僕が実感している一番の変化は、アイドルの在り方です。本来アイドルは誰かにプロデュースされるものだと思うんですけど、今のアイドルたちは、それぞれが頭の中で考えたことを形にしなくてはいけない。セルフプロデュースの時代になっているんですよね。本当だったら僕も、プロデュースしてもらった方が楽だからその方がいいんですけど。セルフプロデュースだと、失敗しても人のせいにできないし(笑)。でも、こういう時代だからこそ、なんとか人一倍リードできるように、日々その責任と向き合っています。アイドルは素晴らしい職業ですが、新しいことをやっていかないと消えていってしまう。そもそも僕は心配性で、もっと安定した職に就きたかったので、1年後に仕事がなくなることだってあり得る世界では、必要以上のことをしていかないといけない……。仮に、じゃあ明日何もなくなったとしても、生きていける自分でいたいなというのは、常に思っています」
多忙な日々を乗り切るために意識しているのは、睡眠と食事。心身の美を保つために大切なのは、健康的な生活サイクルだと悟った。
「結局、健康な人が一番美しいなと思うんです。特に女性はどうしても、美しさと痩せているをイコールで結んでしまうことが多いと思うんですけど、僕はそれが近道ではないんじゃないかと感じている。減量は体に無理を強いているわけですから、目に覇気がなくなったり、元気なオーラがなくなってしまったりする。よくSNSなどで、『ライブ行くために頑張ってダイエットする』といった投稿を目にしますが、結局ライブで目に留まる人がいるとしたら、それは健康的なエネルギーに満ちた人。だから、無理なダイエットとかはしないでほしいということは、よくファンの人たちにも伝えています」
こう語る彼の心の軸となっているのが、Snow Manというグループだ。アイドルの在り方が変わっても、グループの考えは一致している。
「応援してくれるファンの人と、言葉だけではない関係を築くために、どうやったら喜んでもらえるかをグループみんなでずっと考えてきました。今でもみんなでいい環境を保とうという意識をしています」。そういえばこの日も、ロケバスを降りた彼はスタッフに、「メンバーにも今日の撮影のことを話しました。メンバー同士スケジュールを把握していて、みんなで喜び合うんです」と話していた。
個の仕事を大切にしながらも、メンバーの仕事も把握し互いを応援し合うその姿勢からは、グループの風通しの良さと強い絆を感じる。そんなメンバーたちと共有する、未来のヴィジョンを教えてくれた。
「グループとしては、国内では幅広い世代の人たちにもっと自分たちを知ってもらえたらいいなと思っています。一方で、ライバルたちが世界で活躍の幅を広げている中で、そこに負けていられない気持ちもある。今年は少しずつではありますが、アジアでの活動も増えていく気がしています。そして、それがいつかツアーという規模になったときに、日本のグループがこんなにすごいことをやっているんだと、Snow Manのファンであることに誇りに思ってもらえるような、デカいニュースを持ち帰りたいなと思っています」
では、ラウール個人が頭の中で描くこの先の世界は?
「僕は普段からデジタルか紙のメモのどちらかに、『何年までにはこうしたい』という目標を書き留めているんです。実はそこに、17歳のころに書いた『いつかヴォーグのカバーを飾りたい』という目標があって。だから、本当に今日の撮影が夢みたいなんです。それもあって、本当はこんなことを言うのはおこがましいんですが、せっかくなので言わせていただきますね。個人的には、いつかMETガラにも参加できたらなと思っています。それこそ、今僕がNYに行っても自分のことを知っている人なんていないけど、『日本からやばいヤツが来たな』と思われるくらいの存在になりたい。そういうときに勝負できる自分でいたいなと思ったりします。なので、ひとまず(METガラ名物の)階段に慣れるために、階段を上る練習だけはしておこうと思います(笑)」
Styled by Yoko Miyake Hair: Yu Nagatomo Makeup & Manicure: Rie Shiraishi Talent & Model: Raul from Snow Man and Mona Kawasaki Produced by BABYLON Producers: Taka Arakawa, Shion Kimura and Ino Yu Interview & Text: Rieko Shibazaki Styling Assistants: Miyabi Nara and Miki Matsuda Special thanks to Kazunori Hamana and BLUM Gallery