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Snow Manのラウールと気鋭のモデル川崎萌菜──若き二人の才能が自然とアートとともに織りなす、美の旋律

  • 2025.3.26

アートファッションが出合うことで生まれる、冒険と創造に満ちた新たな物語。そんな表現を探しに一行が訪れたのは、アーティスト浜名一憲の千葉県にあるアトリエだった。歴史を感じさせる工房兼自宅の古民家とその庭には、陶芸家である浜名のダイナミックな壺がいくつも置かれている。

長い手足と類いまれな表現力を武器に、世界でファッションモデルとしても活動の幅を広げるラウールは、ファッションが好きな理由をこう語る。「広がっていく世界の一部に、自分も存在できること。デザイナーのインスピレーションが、こんなに大規模に発展していくところが面白いなと思うんです」アレッサンドロ・ミケーレによる、ロマンティックなディテールがちりばめられたヴァレンティノのルックを纏う二人が、のどかな情景に柔らかく溶け込む。 〈Raul〉ジャケット ¥605,000 シャツ ¥473,000 パンツ ¥231,000 ソックス参考商品/すべてVALENTINO シューズ ¥181,500/VALENTINO GARAVANI 〈Mona〉ジャケット ¥1,980,000 ガウン ¥2,970,000/ともにVALENTINO リップクリップ ¥70,400/VALENTINO GARAVANI(すべてヴァレンティノインフォメーションデスク)
ゆらめく水面のような流麗なラインが美しいドレスと、キラキラと輝く水影を連想させるバッグは ルイ・ヴィトンのコレクションから。湖面できらめく光の反射と呼応する様子はまさに、自然とファッションのセッションそのもの。 ボディスーツ付きドレス ¥2,761,000(参考価格) ピアス¥102,300 バッグ¥973,500/すべてLOUIS VUITTON(ルイ・ヴィトン クライアントサービス)

「ものすごい迫力で、かっこいいです! 僕もアートが大好きなので興奮します」。ラウールは感嘆の声を上げた。

「もちろん今はデジタルでいろいろなモノに触れることができますが、僕は生で体感する派。多種多様なアートの中でも、特に舞台芸術が一番好き。自分自身も表舞台に立ちますし、目の前に生身の人がいて作り出すアートの形の方が、幼いころからなじみがあるので」。アイドル、俳優、そしてモデルとして身体を使った表現に挑み続けている21歳は、ダンスとファッションモデルとしての経験は、自身の中で相互作用していると話す。

うららかな陽射しを浴びて過ごす、穏やかなひととき。自然になじみながらもヴィヴィッドな存在感を放つプラダのルックが、ラウールの持つアンニュイなムードを後押しする。「ときには絶対に譲れない部分もあるし、ときには譲りすぎてしまうこともある。ストイックではないですけど、頑張るのは好きです」自身の性格を聞かれると、あどけなさが少しだけ残る優しい顔つきで、彼は謙虚にこう答える。 黒のコート ¥693,000 緑のコート ¥319,000(ともに予定価格)/ともにPRADA(プラダ クライアントサービス)

「モデルの仕事をするようになってから、ダンスでもそれまでとはまた違った表現ができるようになりましたし、逆も同じです。モデルの仕事を始めたころは何も分からなかったので、カメラの前で踊ってみたらものすごくいい写真がたくさん撮れていて、ダンスに助けられました。その体験が自分の芯にあり、今はその両方を育てている段階です。今後はよりこのかけ合いを強めて、見たことのない世界観を世の中に提示できたらいいなと思っています」

襟もとに青の差し色でコントラストをつけた鮮烈な赤のトップに、大胆にいくつも円形をくりぬいたシルバーのスカートを合わせたプラダ。1960年代の雰囲気を纏いながらもそこに感じられる近未来感、そして違和感が生むアンサンブルの面白さが、ファッションの無限の可能性を描き出す。 〈Raul〉黒のコート ¥693,000 緑のコート ¥319,000 パンツ(参考色) ¥363,000 シューズ ¥225,500(すべて予定価格) 〈Mona〉トップ ショーツ ともに参考商品 スカート ¥1,265,000 シューズ(参考色) ¥214,500(ともに予定価格)/ すべてPRADA(プラダ クライアントサービス)
ドレス 参考商品 後ろに垂らしたストール ¥300,000/ ともにSNOWDON KNIT ’ COUTURE (www.snowdonknitcouture.com) 中に着たトップ ¥38,500/(UN)DECIDED (サカス ピーアール) ピアス ¥63,650/RABANNE (エドストローム オフィス)

「あと、ヴォーグさんの取材だから言うわけではありませんが(笑)、最近見つけた『これ自分の世界かも!』というのが、ヴォーグ(ヴォーギングとも呼ばれるダンス表現)なんです。僕は小学校1年生のころからずっとヒップホップをやってきたのですが、1年半ほど前にヴォーグを知ったんです。もちろん、マドンナが90年代に踊っているのでなじみがある方も多いとは思いますが、僕には新しくて、踊ってみたらめちゃくちゃ得意だった。今の若い子たちにも衝撃的に映ったみたいで、すごく反響がありました。実際にヴォーグとヒップホップをミックスしたダンスが自分にはベストマッチだと感じるので、今はそこから自分らしさを生み出し、時間をかけて育てていきたいなと思っているところです」

ボッテガ・ヴェネタのクラシカルなスーツに身を包んだ男性と、波打ち際に映えるジュンヤ ワタナベのドレスを纏った女性。二人の物語はこれが始まりなのか、はたまた終わりを迎えているのか──。ドラマティックな海を背景に、イタリアンシネマに入り込んだかのような儚げで美しいストーリーを綴る。 ジャケット¥520,300 シャツ ¥280,500 パンツ ¥225,500 ピアス参考商品/すべてBOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタジャパン)
ドレス ¥286,000/JUNYA WATANABE(コム デ ギャルソン) ピアス ¥616,000/BUCCELLATI(ブチェラッティ)

言葉を丁寧に選びながら、心の内を話してくれるラウールからは、真面目でストイックな印象を受ける。

「それが、本当の自分はわりと怠惰というか、怠け者なんです。でも、そんな自分にも期待してくれた会社の人やファンの人たちがいた。だからその期待に応えたいというのが一番で、自分の本当の内の内から湧き出ている野心って実はそんなになくて。ただ、『みんなありがとう。だったら僕、ちゃんと結果残します!』という感じで、頑張れている。それこそ、パリでモデルを目指してみようというのも、もともとは僕発信ではなく、僕の表現に対してファンの方が半分冗談のような感じで、『パリコレみたい』と言ってくれたのがきっかけでした。でも、当時の僕はファッションの世界にまったく詳しくなく、調べてみたら面白そうだった、というのが入り口になっています。そういう導きに反抗せずに、素直に感謝の気持ちをもってやってきて今に至っている感じです」

モデルとして活動する中で、自分には似合わないと感じる服に出合うことがあると話すラウール。「着てみて『あれ、違うかも』と思う瞬間もあります。でもそんなときこそ、『服だけじゃなく、俺を見ろよ』という気持ちで乗り切ろうとする、気の強さはあります(笑)」彼からにじみ出る自信としなやかな風格は、どんなことにも誠実に、一生懸命に向き合う姿勢と精神力で培ったものなのだ。 〈Raul〉シャツ ¥275,000 中に着たシャツ ¥275,000 パンツ ¥148,500 ベルト ¥69,300 〈Mona〉ジャケット ¥649,000/すべてGUCCI(グッチ クライアントサービス)

ただ、怠惰だと言いながらも、一度決めた目標に向かう熱量は誰よりも高い。「好きだから頑張れる」と言うが、嫌なこともやらなければいけないときだってあるはずだ。

「芸能の仕事は、特に“縁”が強い力を持っていると感じているので、どんなときでも、『これは次の結果につながる何かの布石なんだろうな』と思って頑張ります。というのも、僕は結構運命的な要素を信じているから。ものすごく直感的なものなんですけど、何かが起きそうだと感じたら、その直感に従って行動します」

自身の待ち時間も惜しまず、「勉強させてほしい」と熱心に撮影を見学するラウール。そのひたむきな姿からは、モデルという仕事への熱い情熱が伝わってくる。普段はトップアイドルとして活躍する彼に、ファッション撮影について聞いてみる。「どちらかと言えば、リアルクローズに近い服よりも、非現実的で普段着ないデザインのものを纏うほうが、別の次元へと移るような感覚が得られるのでテンションが上がります」そう答えるまなざしには、決して曇ることのない、まぶしいほどの純真さが宿る。 トップ ¥204,600 パンツ ¥183,700 ベルト ¥154,000(すべて予定価格)/すべてDOLCE&GABBANA(ドルチェ&ガッバーナ ジャパン)

今年はSnow Manのデビュー5周年というアニバーサリーイヤーでもある。この5年の間に、10代から20代という年齢はもちろん、彼を取り巻く環境も大きく変化した。

「僕が実感している一番の変化は、アイドルの在り方です。本来アイドルは誰かにプロデュースされるものだと思うんですけど、今のアイドルたちは、それぞれが頭の中で考えたことを形にしなくてはいけない。セルフプロデュースの時代になっているんですよね。本当だったら僕も、プロデュースしてもらった方が楽だからその方がいいんですけど。セルフプロデュースだと、失敗しても人のせいにできないし(笑)。でも、こういう時代だからこそ、なんとか人一倍リードできるように、日々その責任と向き合っています。アイドルは素晴らしい職業ですが、新しいことをやっていかないと消えていってしまう。そもそも僕は心配性で、もっと安定した職に就きたかったので、1年後に仕事がなくなることだってあり得る世界では、必要以上のことをしていかないといけない……。仮に、じゃあ明日何もなくなったとしても、生きていける自分でいたいなというのは、常に思っています」

パステルブルーとふんわりした素材が相まって、まるでコットンキャンディのようなドリーミーさを印象づけるシャネルのセットアップ。リボンやパールなどフェミニンな要素が、凛としたまなざしと混ざり合いアンビバレントな魅力を放つ。 ジャケット ¥1,113,200 トップ 参考商品 スカート¥814,000 ヘアクリップ ¥137,500 ピアス ¥137,500 ネックレス ¥575,300 ベルト ¥436,700/すべてCHANEL(シャネル カスタマーケア)

多忙な日々を乗り切るために意識しているのは、睡眠と食事。心身の美を保つために大切なのは、健康的な生活サイクルだと悟った。

「結局、健康な人が一番美しいなと思うんです。特に女性はどうしても、美しさと痩せているをイコールで結んでしまうことが多いと思うんですけど、僕はそれが近道ではないんじゃないかと感じている。減量は体に無理を強いているわけですから、目に覇気がなくなったり、元気なオーラがなくなってしまったりする。よくSNSなどで、『ライブ行くために頑張ってダイエットする』といった投稿を目にしますが、結局ライブで目に留まる人がいるとしたら、それは健康的なエネルギーに満ちた人。だから、無理なダイエットとかはしないでほしいということは、よくファンの人たちにも伝えています」

ボリューミーなスカートと対比するようにトップはミニマルにすることで、アートピースのようなシルエットを描くアライアのドレス。横に佇むのは、浜名一憲が主宰するアーティストレジデンシーに滞在している宮城県出身のアーティスト、工藤玲那の作品「でこぼこにときどき膨れ」。かつて宮城県の多賀城跡を訪れた松尾芭蕉が、『奥の細道』の旅の間に体得したといわれる「不易流行」という概念にインスパイアされた作品だ。「不易流行とは、世の中は変わらないもの、そして時代に合わせて変わっていくものでできているという言葉なのですが、私はその先に共存があると思っています。今作はそれを表現した三部作の内の一つで、変わっていくもの(流行)を表現しています」と工藤は話す。今作は、宮城県多賀城市、市役所前の道路沿いに常設展示予定。 トップ スカート ともに参考商品 シューズ ¥212,300/すべて ALAÏA(リシュモン ジャパン) ピアス(右耳) ¥132,000 ピアス(左耳) ¥187,000/ともにSHIHARA(シハラ トウキョウ)

こう語る彼の心の軸となっているのが、Snow Manというグループだ。アイドルの在り方が変わっても、グループの考えは一致している。

「応援してくれるファンの人と、言葉だけではない関係を築くために、どうやったら喜んでもらえるかをグループみんなでずっと考えてきました。今でもみんなでいい環境を保とうという意識をしています」。そういえばこの日も、ロケバスを降りた彼はスタッフに、「メンバーにも今日の撮影のことを話しました。メンバー同士スケジュールを把握していて、みんなで喜び合うんです」と話していた。

ディオールが提唱する、エレガンスと強さを兼ね備えた女性像にふさわしい、どんな色にも染まらない誇り高きブラック。知的で洗練された雰囲気を纏うパールのアクセサリーが、気品あるレディな装いをさらに美しく昇華する。 ジャケット ¥710,000 パンツ ¥300,000 ピアス ¥93,000 ネックレス ¥340,000 ブレスレット ¥255,000/ すべてDIOR(クリスチャン ディオール)

個の仕事を大切にしながらも、メンバーの仕事も把握し互いを応援し合うその姿勢からは、グループの風通しの良さと強い絆を感じる。そんなメンバーたちと共有する、未来のヴィジョンを教えてくれた。

「グループとしては、国内では幅広い世代の人たちにもっと自分たちを知ってもらえたらいいなと思っています。一方で、ライバルたちが世界で活躍の幅を広げている中で、そこに負けていられない気持ちもある。今年は少しずつではありますが、アジアでの活動も増えていく気がしています。そして、それがいつかツアーという規模になったときに、日本のグループがこんなにすごいことをやっているんだと、Snow Manのファンであることに誇りに思ってもらえるような、デカいニュースを持ち帰りたいなと思っています」

銀色の花が無数に咲き誇りそれぞれが儚げな光を放つノワール ケイ ニノミヤの一着。どこまでも続く青い地平線を背景にモードな人魚が一人、風にたなびく。 ベスト ワンピースともに参考商品/ともにNOIR KEI NINOMIYA(コム デ ギャルソン) イヤーカフ ¥3,509,000/REPOSSI(レポシ 日本橋三越本店)

では、ラウール個人が頭の中で描くこの先の世界は?

「僕は普段からデジタルか紙のメモのどちらかに、『何年までにはこうしたい』という目標を書き留めているんです。実はそこに、17歳のころに書いた『いつかヴォーグのカバーを飾りたい』という目標があって。だから、本当に今日の撮影が夢みたいなんです。それもあって、本当はこんなことを言うのはおこがましいんですが、せっかくなので言わせていただきますね。個人的には、いつかMETガラにも参加できたらなと思っています。それこそ、今僕がNYに行っても自分のことを知っている人なんていないけど、『日本からやばいヤツが来たな』と思われるくらいの存在になりたい。そういうときに勝負できる自分でいたいなと思ったりします。なので、ひとまず(METガラ名物の)階段に慣れるために、階段を上る練習だけはしておこうと思います(笑)」

寄せては返す、静かな波打ち際。光沢のあるエルメスのジャケットをさらりと羽織るラウールの隣を、夕陽に照らされ幻想的に輝くシルバーのドレスを纏う萌菜が歩く。夕暮れ時の砂浜に映る長く伸びた二人の影が、センチメンタルな余韻を残す。 〈Raul〉パーカ ¥861,300 パンツ ¥181,500 シューズ ¥141,900/すべてHERMÈS(エルメスジャポン) 〈Mona〉ドレス ¥286,000 シューズ ¥165,000/ともにJUNYA WATANABE(コム デ ギャルソン)

Styled by Yoko Miyake Hair: Yu Nagatomo Makeup & Manicure: Rie Shiraishi Talent & Model: Raul from Snow Man and Mona Kawasaki Produced by BABYLON Producers: Taka Arakawa, Shion Kimura and Ino Yu Interview & Text: Rieko Shibazaki Styling Assistants: Miyabi Nara and Miki Matsuda Special thanks to Kazunori Hamana and BLUM Gallery

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