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着たいピンクは死ぬまで着る。研究の末ピンクと仲良くなった私の答え

  • 2025.3.26

うーん、しっくりこない。
鏡の前で首をひねったのは中学生のころ。

ずっと憧れていて頭の中で何度も試着するくらい欲しかったピンクのワンピースをついに買った。ヒラヒラとした薄い生地にピンクが透けて重なっている様子に舞いあがる気持ちを抑えながら袖を通したときのことだった。あれ?服自体はかわいいんだけど、なんだか私の雰囲気にしっくりこない。「いい子ちゃん」な感じで頭の中の上品カジュアルとはちがって見える。丈も悪くないし、ヒラヒラ感は好きなんだけど。多分、いや、なによりこのピンク色が私の雰囲気とズレてる気がする。そんな違和感があった。分かった瞬間、無邪気にピンクのフリフリミニスカートを履いていた小学校時代のようにはもういかないのかと少なからずショックを受けた。

ここから少しずつピンクの服を見ても「ピンクは私にはかわいすぎたから」と手が伸びなくなり、ボーイッシュなものがおそらく似合うのだと思ったので色物の服は水色や青を好むようになった。逆を選んだ理由も、「たぶん私にはかわいすぎるものは似合わないから」「ピンクはかわいいの代表だから」。そういった考えが脳にこびりついていた。

◎ ◎

その概念が変わったのは高校生も終わりのころ。制服のままふらりと立ち寄った本屋でカジュアルファッション誌を手に取り、そこにあったひとつのコーディネートに目をみはった。クリーム色のざっくりめに編まれたVネックセーターにグレーのスウェットパンツ。下手すれば部屋着にも見えそうな組み合わせが、インナーのシャツとショルダーバッグ、靴下のパッと明るいピンクが春一番コーデに格上げしていたのだ。ピンクって主役じゃなくてもいいんだ!という驚きとともに、青と水色で飽和したクローゼットが生まれ変わる予感がした。

これをきっかけに、大学生になってからはファッション誌やSNSのストリートスナップなどで上手なピンクの使い方をしている人を真似して研究した。ロンドンのおばあちゃんがピンクのタイトスカートセットアップを着こなしていた写真にはしびれた。歳を理由にせず、しかし無理をしている訳ではなく自分が魅力的に映るスタイルを知っている。一見派手だが締め色を使って上品にまとめた素敵なコーディネートだった。キュートなピンクをさらりとまとめる彼女はまさしく「大人の女性」だと感じた。

◎ ◎

大人になった今、「ピンクにも合うピンクと合わないピンクがある問題」や「年齢的にいつまでピンクは着て良いか問題」などさまざまな議題が社会をとりまいているが、私は明確にひとつ答えをもっている。それは「着たいピンクは死ぬまで着ていい」ということだ。おそらく今も中学当時のようなピンクのヒラヒラワンピースはしっくり来ない。それでもTシャツなどハリのある質感のアイテムを選んだり、魅力的だけど自分の肌がくすんで見えてしまうというピンクはボトムスや靴下に取り入れる。ピンクの固定概念から解放されてからはピンクの幅広さと自由さを楽しめるようになり、ピンクを自分の武器にできたということに気づくと大人になったなあと思う。

ピンクとケンカしたのち味方につけるため仲良くなり方を数年研究したからこそ、諦めなかった自分にも自信を持てるようになった。私はおばあちゃんになったらロックTシャツにピンクの大ぶりイヤリングとピンクのキレイめパンツをキメるかっこいいおばあちゃんになると決めている。

■白輪のプロフィール

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