その日、Yさんは病院で点滴を受ける娘を見ながら、涙を流していた。
娘は前日に熱性けいれんを起こし、元気がなかったのだ。
すると、見知らぬ中年女性に「お母さんがなんで泣いてるの」と怒鳴られて......。
<Yさんからのおたより>
30年ほど前のことです。私は誰も知り合いのいない仙台で、子育てをしていました。
その日、1歳半だった娘が、夕方から発熱。様子をみていたら、熱性けいれんを起こしたのです。
わたしと夫はパニックになり、救急車を呼びました。
見知らぬ関西弁の女性が...
一晩病院に泊まり、次の日、家に帰りましたが、まだどこか様子がおかしい娘。またけいれんを起こすのではないかと不安で、上の子と夫に留守番を任せ、私は娘を総合病院に連れていきました。
病院の先生は優しく、「点滴すれば元気になるよ」って言ってくださって、とてもほっとしたのを覚えています。
処置室にはベットがいくつもあり、点滴を受ける病人と、付き添いの方がたくさんいました。
そこで娘の姿をみながら、ほっとしたのもありますが、「可哀想なことをした」という思いが溢れ、泣いてしまったのです。
すると突然、50代くらいの関西弁の女性が声をかけてきました。
「お母さんがなんで泣いてるの、しっかりしなさい!」
見ず知らずの人にそう言われて、怒鳴られているのかと思って余計に悲しくなったのですが、「ママが泣いてたら具合悪くて頑張ってる娘ちゃんが不安になるでしょ」と言われ、ハッとしました。
その女性は私を励ましてくれたのです。ワンオペで誰にも頼らずに子育てを頑張っていたこと、前日の熱性けいれんで怖かったこと......そんな話も聞いてくれました。
その方は、ご自分のお母さんと旅行で秋保温泉に来ていたのですが、お母さんの体調が悪くなり、付き添っていたそうです。
娘は元気に育ち、今や30代。私はあの時の女性と同じくらいの年齢になりました。
今度は私が、不安そうな若いママさんを励まして、元気にしてあげられるといいな。
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