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「マクラーレン750Sスパイダー」のあくなき探求から見えてくる、自動車業界の次なる挑戦

  • 2025.3.26

カーライフその先の未来へ

マクラーレン750S

“スーパー”な性能と乗り心地を兼ね備えた「スーパーカー」の登場

 

 

ここ数年、スーパーカーに対するニーズが少し変わってきたと思う。
かつてのそれは大排気量のエンジンを積んだパワフルなマシンで、背景にはレース活躍が絡んでいた。F1グランプリやル・マン24時間レースといった世界的なフィールドでの輝かしい成績だ。
そこでの技術をフィードバックしたのがスーパーカーで、通常の市販車ではありえない“スーパー”な性能を持つ。
よって、大きな振動で乗り心地は悪かったり、扱いも難しかったりした。マニュアルトランスミッションの時代は、雑な操作で簡単にクラッチ板がすり減ってしまうような不具合を連発していた。

ところが最近のスーパーカーは違う。
乗り心地はいいし、扱いもややこしいところは一切なし。
トランスミッションは最新のデュアルクラッチで、パドルシフトで変速操作は容易だし、ブリッピングも勝手にコンピューターが作動してくれる。コーナーの続くワインディングを走っていると、運転が上手くなった?と錯覚してしまうほどだ。

オープンカーもそう。
かつては屋根の開くクルマはボディ剛性が低いと敬遠されていたが、もはや逆。クーペモデルよりも人気は高く、リセールバリューも高値維持となる。その背景には技術の進歩がある。
オープントップにしてもボディ剛性は高く保て、目に見えてヨレることは無くなった。車両重量も同じように補強材での極端な重量増加は減り、許容範囲に収まる。
つまり、走行性能についてのネガティブ要素は払拭されたのだ。

となれば、屋根が開くという付加価値的機能がある方が魅力は増す。風を感じて走る気持ちよさは格別だし、優雅な気分に浸れる。スーパーカーとて常にスーパーな走りをしているわけではないからね。
セレブがリゾートを目指すのであれば、オープントップに人気が集まる。

次世代のコンバーチブル・スポーツカーの誕生

 

前回のフェラーリもそうだが、今回ご紹介するマクラーレン750Sスパイダーもそんな一台。
世界中のセレブが熱い視線を送るスーパーカーである。
2023年4月に720S系の後継モデルとしてクーペと共にワールドプレミアされた。720Sのコンポーネントの約30%を刷新したというから本格的な進化だ。

エンジンは4リッターV8 DOHCツインターボで、最高出力は720S+30psの750psに達する。名前の数字はこの値。最大トルクも720S+30Nmの800Nmとなる。スーパーカーと呼ばれる所以のひとつはこの数字だろう。
主戦場はサーキットで、非日常を感じる。スタイリングも同じ。
ミッドシップレイアウトのワイド&ローに構えた姿は速く走るためのもの。この独特のフォルムはマクラーレンならではのデザインで、高い位置に備わるマフラーにもこだわりを感じる。

仕様の改良、素材のアップグレード、CAE解析により、従来よりも30 kg軽量化され、車重はわずか1438 kg。

そんなスタイリングだけに乗り降りするのもやっと、と思いきや実はそんなことはない。何度か乗り降りすればコツは掴める。
それに跳ね上げ式のティヘドラルドアも慣れれば恐るるに足りない。ダンパーの柔らかさはちょうどよく、少しのチカラで閉まる位置まで引き寄せることができる。とても滑らかに。
このドアを慣れた手つきで操作できればそれだけでカッコいい。

リトラクタブルハードトップはセンターコンソールにあるスイッチで操作する。走行中でも時速50キロ以下なら稼働させられるので便利。急な雨でも広い路肩を探してクルマを停止させる必要はない。それよりも風の巻き込みを最小限に抑えるよう設計されているので、髪が乱れることはない。
この“スーパー”なスタイリングにして快適なオープントップドライブが楽しめる。こういったつくりも屋根開きスーパーカーの人気が高まっている要因だろう。
一度でも助手席に座るレディの髪を乱してしまったら、二度目の乗車はなくなる。

美しくエンジニアリングされたリトラクタブル・ハードトップ(RHT)を装備することで、50 km/hまでわずか11秒でなめらかにオープンまたはクローズが可能になっている。

と言うことで、今回はマクラーレン750Sスパイダーを題材にスーパーカーのトレンドを考えてみた。
特別な領域のモデルだけになかなか掴みにくいトレンドだがそれを知る価値はある。
なぜなら「レーシングカーは走る実験室」と言われるくらい新しい技術を生む。そしてそれが市販車へと波及していくからだ。きっとその中間にあるのがスーパーカーだろう。
しかもマクラーレンはレーシングコンストラクターとしての長い経験と実績を持つ。となれば、そこで使われる技術とそこから生まれるトレンドはホンモノに違いない。

 

九島辰也 Tatsuya Kushima

 

モータージャーナリスト兼コラムニスト。現在、サーフィン専門誌「NALU」のメディアサイト編集長、メディアビジネスプロデューサーを担当。これまで多くのメンズ誌、ゴルフ誌、自動車誌、エアライン機内誌などの編集長を経験している。メディア活動以外では2024-2025日本カーオブザイヤー選考委員、(社)日本葉巻協会会員、日本ボートオブザイヤー選考委員、メンズゴルフウェア「The Duke`s Golf」のクリエイティブディレクターを務めている。

 

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