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あのときなんて言えばよかったの? 父の死への後悔を抱えていた私は、緩和ケアナースに救われた【書評】

  • 2025.3.24

【漫画】本編を読む

『大切な人が死ぬとき 〜私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた〜』(水谷緑/竹書房)は、父をがんで亡くした経験とその後を描いたコミックエッセイだ。著者は、ドラマ化も話題となった『まどか26歳、研修医やってます!』の水谷緑氏である。

まだまだ元気でいると思っていたのに、突然告げられた父のがんと余命宣告。本人はもちろん、家族の誰も現実を飲み込めない。

次第に衰弱していく父を前に、家族は死を強く意識していく。本作では大切な人が亡くなるまでの日々と、遺された者の日常が描かれる。

父を亡くして数年たっても悲しみを引きずってしまっていた著者は、自分が抱える後悔や罪悪感を緩和ケア看護師と話すことにした。

「緩和ケア」と聞くと、終末期の痛みを和らげたり、安らかに逝けるような支援をイメージするだろう。それだけではなく、支える側である家族のケアも含まれている。さまざまな患者さんとその家族を支えてきた緩和ケア看護師の話によって、著者の後悔や罪悪感が薄れていく。その様子から、大切な人の死が遺すものの大きさが伝わってくる。

筆者も、まったく同じ病気で父を亡くした。緩和ケアの存在の大きさも実感しているつもりだ。緩和ケアでの時間や看護師とのやりとりがなかったら、もっと罪悪感や後悔が残っていたかもしれない。本作を通し、改めて父の死と向き合うことができたように思う。

身近な人の死を描くため、目を背けたくなるようなつらいシーンもあるかもしれない。しかし「大切な人が死ぬなんて、想像しただけでつらくなる」そう思う人にこそ、ぜひ読んでもらいたい1冊だ。

文=ネゴト / Ato Hiromi

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