私は小学生の頃、ピンク色が苦手だった。
"女の子らしい"と言われる類の子が好きな色は大抵ピンク色。
女の子らしい=ぶりっ子
そんなふうに思っていた。
ピンクを纏う子には苦手意識があったし、私は絶対に選ばない色だった。
◎ ◎
私が小学生の頃、女の子は赤いランドセル、男の子は黒いランドセルと決まっていた。
いや、決まっていた訳ではないけど9割そうだった。
かく言う私も赤色のランドセルを背負って学校へ通っていた。
1人だけピンク色のランドセルを背負っていた子がいたけど、その子は揶揄われていた。
みんなと違う、ただそれだけの理由で揶揄われていた。
今思えば、好きな色のランドセルを背負いたかった気持ちは分かる。
でも、ピンク色のランドセルを背負っていた子は学年に1人だけ。
たったそれだけの理由で揶揄われていた。
◎ ◎
現在はカラフルなランドセルが主流だ。
でも、あの時代は、数年前は、それがおかしかったのだ。ランドセルの色が人と違うことはかなり目立っていたのだ。
今思えば、あの子は好きな色を纏っていただけだし、何ら問題はない。
それなのに当時の私は、ピンクのランドセルを背負う女の子を変わっていると思っていた。別にみんなと揶揄うわけではないが、心の中では変わっていると思っていたのだ。
そう思っていたのは私だけではなく、小学校という狭い世界では受け入れられなかった。
しかも、その子のランドセルの色は私が苦手なピンク色。
ピンク=目立ちたがり屋、ぶりっ子
そんな印象が私にはあった。
◎ ◎
小さい頃ピンクを選ばなかった、いや選べなかった理由は他にもある。
私の名前はあおいだ。
"青"という色が私の名前の中に入っている。
あおい=青が好き
そんなふうに思われることが多かった。
「あおいちゃんは青が好きなの?」
小さい頃から友達によくそう聞かれた。
「そうだよ。青が好きだよ」
私はそう答えていた。
青とピンクは対照的だから、私はもっとピンクから遠のいていった。
最早、私はあおいだから好きになってはいけない色とすら思っていた節がある。
小さい頃、ピンク色を避けてきたのだ。
本当は素敵な色だと思っている自分もいたかもしれないのに。
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正直に言うと、私は自分が好きな色が何色か分からなかった。
随分と大人になってやっと何色が好きなのか分かったくらいだ。
大人になって分かったことは他にもあった。
私はピンク色も好きだったのだ。
偏見でピンク色を避けてきた幼少時代。
名前があおいだから青が好きなのかと聞かれて、訳もわからずそうだと言っていた幼少時代。
自分の好きな色なんて何色だって良いのに、私は何に遠慮をしていたのだろう。
好きな色すら発信できない私は、さぞ生きづらかったと思う。
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それから、あおいだから青色が好き?
そんなことはない。
寒色はあまり好みではないし、青色は好きでも嫌いでもない。
きっと小さい時もそうだったように感じる。
好きでも嫌いでもなかった。
それが言えたらどれだけ生きやすかっただろう。
それから、ピンク色を懸念していた私だけど、それはピンク色自体が苦手なのではなく、人の目が気になるから纏わなかったのだ。
ピンクはぶりっ子の色!そんな決めつけを自分がしていたから、避けてきていただけだった。
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この先、もっと大人になると、またピンク論争って出てくると思う。
「良い年してそんな可愛らしい色」
そんなふうに言われたり思われることがあるのかもしれない。
年相応の色合いなんて、そんなの気にしていたら人生損だ。
好きな色は纏って良いのだ。
幼少時代受け入れられなかったピンク色を、私は今素敵な色だと思っている。
それから、幾つになっても自分が素敵だと思う色は纏っていたい。
もう少ししたら、桜の季節が始まる。
ピンク色に染まる景色が待ち遠しくてたまらない。
大好きな季節、春の到来だ。
■天竺牡丹あおいのプロフィール
アラサー未婚女性、それが私の肩書きです。世間が言う結婚適齢期に属しているのがこの私。しかしながら私はこう思う。「婚期なんて未来永劫あるだろ。死ぬまで一生婚期だろ。結婚に年齢制限なんてないだろ。」そう思いながら強く生きています。