大切な家族が誰かの悪意に深く傷つき、たったひとりで苦しんでいると知ったら、あなたはどうするだろうか。多くの人はきっと、黙って見過ごすことなどできないはずだ。家族の悲しみを少しでも和らげるため、できるだけのことをしてあげたいと願う人も多いだろう。
『復讐のアイ 不純な夫と淫らな秘密に制裁を』(さぶれ:原作、あかば:漫画/KADOKAWA)は、傷ついた姉の代わりに復讐を決意した主人公を描いた、ラブサスペンス・ミステリー。
主人公・瞳は、海外から戻ったばかりの28歳。空港に降り立ち、長い間会えなかった家族と再会できる喜びに胸を高鳴らせていたのも束の間、母親から「姉の咲子が事故に遭った」という連絡が入る。慌てて病院へ駆け付けた瞳は、姉の夫と義母が交わす信じられない言葉に耳を疑う。
引用----
咲子さんは本当にろくでもない嫁ね
「跡継ぎも産めないハズレ嫁」だから仕方ないだろ?
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重体の姉を労わるどころか、陰で冷たく嘲笑する義家族の姿。激しい怒りを感じた瞳は姉の事故に不信感を覚え、独自に調査を開始する。そして、姉の日記をもとに、姉の夫が「アイ」という人物と不倫をしていることを知ったのだった。
姉自身の調査によると、彼女を追い詰めた「アイ」は「宵飲みサロン」という飲みサークルのメンバーであるらしい。さらに、「宵飲みサロン」自体にも大きな秘密が隠されていることが明らかになるのだが――。
本作の見どころは、不倫相手「アイ」の正体がなかなか見えてこないミステリー要素だ。限られた情報を頼りに推理を進める主人公は、真実を追う中で、さまざまな人物の謎めいた行動や複雑に絡み合った人間関係にしだいに翻弄されていく。その結果、徐々に明らかになる驚くべき事実に、思わずページを繰る手が止まらなくなってしまった。
また、苦境に立たされた姉を思いやり、彼女を助けようと奮闘する主人公の強い家族愛も見どころのひとつ。姉の幸せを心から願う主人公の想いが行き着く先を、どうか見届けてほしい。
文=ネゴト / 糸野旬