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博士たちの頭の中と人生を覗く。研究者たちの個人記念館 6選

  • 2025.3.23

樫尾俊雄発明記念館(東京/成城学園前)

発明をしていた部屋。行き詰まると窓から庭園を眺めていた。

名品を生んだ発明家の閃(ひらめ)きの源

電卓からG‒SHOCKまで、世界的人気を誇るブランド〈カシオ〉。その生みの親をご存じだろうか。樫尾家の4兄弟の次男として生まれた俊雄は、部品の下請け加工をする兄の町工場で商品開発を開始。後に歴史的製品となる世界初の小型純電気式計算機や電卓、デジタル式腕時計、電子楽器を作り続け、生涯で313件の特許を取得した。細部にまでこだわった彼の私邸で、貴重な製品や資料、遺品を展示。「0から1を生み出す」発明家の小宇宙のような空間だ。

Information

樫尾俊雄発明記念館

屋根の形やステンドグラスの窓など、建築デザインの細部に鳥好きだった俊雄のこだわりが。
住所:東京都世田谷区成城4-19-10
TEL:なし
完全予約制。開館日時は公式HPを確認。入館無料。

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樫尾俊雄

かしお・としお/1925~2012年。東京府生まれ。エジソンに憧れ発明家を志す。最初の発明品「指輪パイプ」がヒット。その資金で計算機を開発。

北里柴三郎記念館(熊本/小国町)

〈北里文庫〉では、博士ゆかりの品や資料を展示し、学びの場に。

“近代日本医学の父”の軌跡

令和の新紙幣、千円札の肖像となったことが記憶にも新しい医学博士・北里柴三郎。医学校在学中に、医者の使命は病気を予防することであると考えた北里は、破傷風菌の純粋培養に成功し、血清療法を確立。「感染症学の巨星」といわれた彼の記念館には、少年時代を過ごした生家や、帰省の際の居宅、私財を投じて子供たちのために建設した図書館〈北里文庫〉が保存され、見学できる。伝染病と闘い続けた博士の歴史と功績を未来に伝え続けている。

Information

北里柴三郎記念館

デジタルコンテンツを取り入れた施設も2023年開館。最新技術と大正時代のノスタルジーが融合するミュージアム。
住所:熊本県阿蘇郡小国町北里3199
TEL:0967-46-5466
営:9時30分~16時30分
休:無休
入館料:一般600円

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北里柴三郎

きたさと・しばさぶろう/1853~1931年。肥後国(熊本県)生まれ。日本に最初の伝染病研究所を設置。日本医師会の設立にも携わった、細菌学者。

練馬区立牧野記念庭園(東京/大泉学園)

牧野が執筆や描画に勤しんだ書斎。当時書庫には45,000冊の書籍が。

植物を愛した博士の面影を見る

NHK朝の連続テレビ小説『らんまん』の主人公のモデルにもなった牧野富太郎が、晩年の約30年間を過ごし、「我が植物園」として愛した庭園が今も残る。敷地内の記念館では、牧野の遺品や資料を展示、書屋展示室では実際に使用していた書斎と書庫の一部を当時の様子に再現し、公開。スエコザサ、サクラ‘仙台屋’など、自ら植えた植物を含む300以上の種類が生育。晩年、自宅の庭で観察や採集、標本の整理をして過ごした博士の面影が感じられる場所だ。

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練馬区立牧野記念庭園

記念館は高知県の〈牧野富太郎記念館〉と同様、内藤廣による設計。博士にまつわる常設展や、植物の面白さを伝える企画展も。
住所:東京都練馬区東大泉6-34-4
TEL:03-6904-6403
営:9時~17時
休:火曜休
入園料:無料

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牧野富太郎

まきの・とみたろう/1862~1957年。土佐国(高知県)生まれ。日本植物分類学の基礎を築いた植物学者。1,500以上の植物を発見、命名。

中谷宇吉郎 雪の科学館(石川/加賀市)

博士は、あらゆる形の雪の結晶を顕微鏡写真に撮り、分類した。

“雪は天から送られた手紙”を体感

世界で初めて人工雪を作ることに成功した中谷宇吉郎の、雪の研究について学ぶことができる科学館。博士の研究や芸術活動、人となりについて知る展示はもちろん、冷凍庫の中で、ダイヤモンドダスト(氷晶)を再現する実演や、氷のペンダントを作る実験など、体験を通して雪の研究に触れることができる。「雪は天から送られた手紙である」との言葉を残した博士の、素朴に率直に自然と向き合う人柄と、彼が夢中になった雪の世界を堪能できる施設だ。

能登半島地震影響での施設修繕工事のため、2025年4月1日より約1年程度休館。

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中谷宇吉郎 雪の科学館

雪をイメージした3つの六角塔から成る記念館は磯崎新の建築。宇吉郎の娘、芙二子による《霧の彫刻》も。
住所:石川県加賀市潮津町イ106
TEL:0761-75-3323
営:9時~17時
休:水曜休
入館料:一般560円

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中谷宇吉郎

なかや・うきちろう/1900~1962年。石川県生まれ。随筆家、物理学者。気象条件と結晶形成の関係を解明するなど、低温科学の新しい分野を開拓。

野口英世記念館(福島/猪苗代町)

釣りや絵画、チェスなど野口の趣味から素顔を垣間見られる展示も。

誰もが知る世界的医学者の生家も

旧千円札の肖像である野口英世は、幼少期に受けた左手のやけどの手術に感銘を受け、医師を目指し、黄熱病の研究に尽力した。記念館では、彼の研究対象であった細菌の世界を学ぶことができるのはもちろん、研究室での一日を紹介するマンガや、母からの手紙、野口が描いた妻の肖像画などの展示も。さらに、国登録有形文化財の生家も公開しており、やけどを負った囲炉裏、医学の道に進む決意文を刻んだ床柱など、当時の生活を垣間見ることができる。

Information

野口英世記念館

ゲーム感覚で遊びながら細菌の世界について学ぶことができる体験型の展示も。
住所:福島県耶麻郡猪苗代町大字三ツ和字前田81
TEL:0242-65-2319
営:9時~17時30分(11月~3月は~16時30分)
休:無休
入館料:一般1,200円

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野口英世

のぐち・ひでよ/1876~1928年。福島県生まれ。アメリカのロックフェラー医学研究所を拠点に世界で活躍。ノーベル賞候補にもなった細菌学者。

南方熊楠記念館(和歌山/白浜町)

採集箱、写生用具、デスマスクなど南方の遺品等を展示。

博物学の巨星の偉業を辿る

明治時代の終わりに、神社合祀による生態系の破壊を訴えた南方熊楠は、環境保護の先駆者だ。研究は菌類学から天文学、民俗学など多岐にわたり、科学雑誌の最高峰といわれる『ネイチャー』の論文掲載数は51本を数える。南方が調査研究を行った地にあるこの記念館には、彼が遺した文献や標本類、遺品約800点を展示。彼の足跡を辿る貴重な資料として、昭和天皇、民俗学者・柳田國男、中国革命の父・孫文らの時代を象徴する人々との交流の記録も公開する。

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南方熊楠記念館

神島(かしま)や白浜温泉街、遠くは四国まで見渡せる開放的なデッキも備える。
住所:和歌山県西牟婁郡白浜町3601-1
TEL:0739-42-2872
営:9時~17時
休:木曜、6月28日~30日休(7月20日~8月31日は無休)。
入館料:一般600円

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南方熊楠

みなかた・くまぐす/1867~1941年。紀州(和歌山県)生まれ。今日的エコロジーの先駆者で博物学の巨星。地域の自然保護にも力を注いだ。

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