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私が生まれる前からの家族の思い出が詰まった、死ぬまで通いたい店

  • 2025.3.23

私は現在大学二年生で、実家から東京にある大学まで毎日通っていて、夜は地元にあるビストロでアルバイトをしている。食べることが大好きで、身体は小さめだが、お寿司は四十皿近く食べたこともある。

私の家族は五人で、両親と弟が二人。きょうだい揃ってスポーツをやっていたため、全員揃って食卓を囲めば、そこは戦場になるくらいだ。

私は今パパが建てた一軒家に住んでるが、二人目の弟が生まれるまではパパの会社の社宅に住んでいた。
そして、その前住んでいた社宅の近くに、私の大好きなご飯屋さんがある。そのご飯屋さんはどさんこという名前のラーメン屋さんで、そのお店を知ったきっかけはパパだ。

◎ ◎

パパとママにとっての第一子である私がまだお腹にいる時、二人で社宅に住んでいたママは出産が不安で、パパを置いて私が生まれる三ヶ月ほど前から自分の実家に里帰りしていたらしい。

置いて行かれたパパは一人暮らしの経験があるといっても、自分でご飯を用意することが面倒になってきていた。社宅から駅は少し離れたところにあったので、毎日バスに乗って行き来していたパパは、バスからよく見ていた、いつも行列のできているラーメン屋さんを思い出し、ふとそこに行ってみようとなったそうだ。

優しそうなお母さんにいらっしゃいと言われ中に入ると、厨房を囲んだカウンター席と右側にお座席が二つ、厨房の奥にはフライパンを振るうお父さんの姿。パパは初めて注文した料理は覚えていないというが、久しぶりに会社以外の人と話し、温かいご飯を実家のような雰囲気の中食べたあの記憶は忘れないと言う。

そして、私が産まれ、帰ってきたママを一目散にどさんこへ連れて行ったそうだ。ママは少し偏食で、お肉と生魚は食べられないので初めて行くご飯屋さんには少し抵抗がある人だが、そこで食べたナスピーマン炒めは衝撃だったと言う。

値段もとてもリーズナブルで、ご飯はどれを頼んでも絶品で、こここそ地元に愛されるご飯屋さんだと言えるだろう。

◎ ◎

私が小学一年生の時、パパが家を建てて引っ越すことになる。どさんこからは距離はできたがさほど遠くはないところである。しかし、弟もニ人生まれて、きょうだい三人とも部活やクラブチームに所属して、だんだんと外食をするのにも大変でお金もかかって家でご飯を食べることが多くなり、我が家では「外食は贅沢なこと」というのが身についた。

だからこそ、誰かが誕生日の日、誰かが試合で活躍した日はどさんこに行ってご飯を食べることが楽しみであった。ほかにも例外として、誰かが失敗した日、パパとママが喧嘩した日などにもどさんこに行くことがあった。

結局どんな時でも私の家族はどさんこに行きたいのだ。

頼むものも決まっていて、私は塩ラーメンのわかめトッピング、弟たちは中華そばと醤油ラーメンの大盛り、ママはちゃんぽん麺、パパはウーロンハイ、あとはみんなでナスピーマン炒めと餃子四皿、シメに唐揚げとチャーハン。ちなみにこれだけ頼んでも、一万円出してお札が何枚か返ってくる。

◎ ◎

私が大学生になった今でも、どさんこに家族で行くし、関西で寮生活をしている弟も帰省したときには一回は必ず行くくらい私たちはどさんこが大好きなのだ。

どさんこがなくなったら、私たち家族はどうかしてしまうだろう。なぜそこまで好きなのか不思議に思ったのはこのエッセイで書いてみようと思ったことがきっかけで、それまでは考えたことすらなかった。

私がいつも頼む塩ラーメンは一杯五百円、ニンニクたっぷりで、お父さんの気分で量が多かったり少なかったりするが、いつまで経っても変わらないその味と中毒性に私はやられているのだと思ったと同時に、どさんこには自分が産まれる前からの私たち家族の思い出がたくさん詰まっているお店だからだと改めて認識した。

実は一年ほど前に当時の彼氏にどさんこを食べてもらいたくて連れて行ったことがある。でも私はそれを後悔している。なぜなら、私にとって彼は家族でも家族同然の関係値でもなかったのに、思い出の場所であるどさんこに連れていくことは失敗だと思ったからだ。

あと単純に教えたくなかったなと。

◎ ◎

私も大人になって自分のお金でいろんなご飯屋さんに行って、時には高級レストランで食事をすることだってある。別にそこで食べる物が不味いわけでもないがそこに何回だって通おうとは思わないだろう。

きっと私がこれから社会人になってどさんこから離れたとしても、自分から近づきに行ってしまうのだろう。お皿の余白の多い料理をゆっくり食べるより、器ギリギリのスープに入ったラーメンを啜りながら餃子を取り合う方が私には合ってるなと思う。

家以外に懐かしさを感じられる場所を持っている私は幸せ者だと感じた。そして、いつか自分の旦那さんをどさんこに置いていきたい(=妻が里帰り中だった父と同じ状況)な、なんつって。

■ラッキーたぬきのプロフィール
食べることが得意で、片付けや計画を立てることが苦手。すき焼き大好き。筋肉質で、ロングブーツが入りません。涙もろくて泣いている人を見ると泣きます。今年は人としてレベルアップすることが目標。

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