1. トップ
  2. メイク
  3. ピンクは高潔で強い、主人公の色。それを纏って人前に出る勇気がない

ピンクは高潔で強い、主人公の色。それを纏って人前に出る勇気がない

  • 2025.3.23

魔法少女っていつでもかわいい。
フリルたっぷりのスカートに、大きなリボン。キャラクターによって担当の色はあれど、ピンクは「主役の色」と言ってもいいのではないだろうか。
可愛さの暴力を具現化したような彼女らは、いつでも真っ直ぐで強い。そんな彼女たちに憧れて、多くの女の子はフリルやリボン、「憧れ」が担当している色を好んで身につける。そういうものだと思う。
私にとってピンクは高潔で強い、主人公の色。故に、似合う人が限られると思う。

◎ ◎

私が持っている服は、大抵茶色や黒の地味な色ばかり。アクセサリーでも、無難な色ばかりを選んでいる。身につけてもなるべく浮かないように、服に着られている感が出ないように、冒険は絶対にしない。メイクだって、失敗が怖くてすっぴんのまま、マスクで隠すようにして過ごしている。ファッションに無頓着というより、自分に自信がなさすぎる。着る服の選択をしているのは自分だし、その自分が信用ならないので、前からずっと着ている地味な服か、人に選んでもらったものばかり着ている。

メイクなんて、服選びの数十倍、選択を迫られる行為だ。
下地やファンデーションの色は?使うのはパフ?ブラシ?アイシャドウやリップの色は?アイラインはひく?ひくならどのぐらい伸ばす?

うんざりするほどの選択を経て、人の顔面は形作られている。私はその選択を最後までやり切る自信も無ければ技術もない。それなりに勉強もしてみたけれど、やっぱり自分を着飾って人前に出るのが怖い。

◎ ◎

「あれ?こいつこの前まですっぴんだったのに急にメイクしてる。好きな人でもできた?てかめっちゃ下手だし(笑) 初心者丸出しだわ〜」とか思われたらどうしよう。
変な邪推をされるのもごめんだし、慣れないことをして失敗するのも怖い。
見た目で褒められたことの無い私は、せめて見た目だけでも人並みになろうと努力はしているけれど、それを発揮出来ていない。勇気がないのです。
それでもメイクの勉強をしたり、ドラッグストアのコスメコーナーに立ち寄ってみる私の涙ぐましい努力を、誰かに讃えてほしい。

◎ ◎

キラキラした夢みたいなコスメの中で、いちばん私の目を引くのがピンクだ。
淡い色から濃いものまで、「ピンク」というのはすべからく可愛い。羨ましい。
わぁとマスクの中で小さい吐息を漏らして、ピンク色の魔法がつまった小さい箱を持ち上げて、しばらく見つめて、棚に戻す。コスメコーナーでは、こんなことの繰り返しだ。
可愛いな、欲しいなと思っても、すぐに「こんな色似合うわけない」「いつ付けるの?」という声がどこからか聞こえてきて、浮き上がった心の熱はたちまち冷えて、結局何も買わずに家に帰る。
それを購入する勇気、身につける勇気、ピンクを纏って人前に出る勇気。勇気が足りない。

心の中では、ピンクをこっそり愛しているのだけど、ピンクの高潔が、私という汚泥に触れることに耐えられない。
だって主役の色だもの。もっと可愛くて、細くて、目が大きくて、二重で、美人な子が主役であるべき。私みたいな醜悪なモブキャラは、なるべく目立たずにいなさい。

◎ ◎

でも、いつだってピンクに憧れている。フリルに、リボンに、あの時の魔法少女に、憧れている。
いつか、もう少し時間が経って、酸いも甘いも経験したおばあちゃんになった頃、桜みたいなピンク色のリップを付けて、すれ違う人に微笑みかけたい。
そんな実現できるかもわからない幻想を抱きながら、今日もコスメコーナーに、街角のショウケースに、テレビの中に、スマホの画面に、あらゆる場所に「ピンク」を見かけては、小さくため息をついて歩いています。


■あたらよのプロフィール
気が向いた時に文章やイラストなど、色々作っています。
甘納豆が好きです。普通の納豆も好きです。
Twitter:https://x.com/atarayo_1?s=21

元記事で読む
の記事をもっとみる