子育て世代の乳がんについて考えます。
闘病を乗り越えた経験から、同じ立場の女性たちを支えている人を取材しました。
子どもの成長を見届けられるのか…
滝澤ひとみさんは、38歳で乳がんと診断されました。
頭に真っ先に浮かんだのは、「2人の子どもの成長を見届けられるのか」という不安でした。
さらに、右胸を摘出し、抗がん剤治療の副作用で髪が抜けると…。
「1人の人間としてというか、女性としての喪失感。表には出さなかったが、自分の中で感じていた」
出産、子育て、仕事などライフイベントが重なる30代。
一方で、乳がんになるのは60代がピーク。
滝澤さんが抱える不安を、同じ立場で分かち合える人はいませんでした。
子育てと治療…相談できる場所を
その後、1年半にわたる闘病を乗り越えた滝澤さん。
自分と同じように、子育てとがんの治療を両立する女性が悩みを相談できる場所を作りたいと、10年前にがんサロン「ラクシア」を立ち上げました。
この日、訪れたのは42歳の女性。
自分ががんであることを、小学生の子どもにいつ伝えたらよいのか悩んでいました。
「『早めに伝えないと』とは思いつつ、タイミングを見計らっていて…どうしようかなと」
すると、ほかの参加者から、経験談やアドバイスが。
「私はすぐに子どもに伝えてしまったけど、子どもは『自分がいっぱい迷惑をかけたから、お母さんががんになってしまったのではないか』と思っている。子どもから『ごめんね』と言われて…」
「『あなたのせいじゃない』と説明してあげたほうが、子どもは安心するのかも」
女性はそんな話に耳を傾けることで心強さを感じたようです。
「感情の波がフラットに保てないところがあったけど、『ラクシア』に来てからは話も聞いてもらえるし、皆さんの経験談がかなり力強い」
髪の毛や乳房…見た目が変わっても
滝澤さんの活動はもうひとつあります。
その拠点は、北海道がんセンターのアピアランスケアルームです。
ここは、がん治療で見た目が変わっても安心して過ごせるためのケアグッズを揃えていて、実際に触れて確かめることができます。
例えばこちらは乳がん患者のための、パッド。
重みがあって、触り心地もすべすべしています。
滝澤さんが「重みもある程度ないと体のバランスがとりにくくなるんです。下着にこのパッドを入れて使うんですよ」と教えてくれました。
滝澤さんは、自分の経験を生かしてこうしてピア・サポーターとして勤務し、患者の相談に応じています。
「自分だけが誰かに支えられているのではなく、自分も誰かを支えている。それもすごくパワーになる」
当事者どうしが悩みを話し合うことで、それぞれが前向きになれる「ラクシア」の活動。
どんな悩みでも、吐き出せる場所を見つけることが、心の元気につながるかもしれません。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年3月7日)の情報に基づきます。