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【ネタバレ解説】『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』火鼠の正体は?なぜフキは疎まれたのか?徹底考察

  • 2025.3.23

『劇場版モノノ怪 唐傘』(2024)の公開から一年も満たないタイミングで、劇場版モノノ怪 第二章 火鼠(2025)が公開。前作と同じく、大奥に所属するそれぞれの思惑が交錯する物語という点では同じでありつつも新たなキャラクターも登場し、大奥に潜む“モノノ怪”と対峙します。

前作との違い、繋がっている点、今後どうなっていくのか。 今回は、そんな作中の気になる要素について解説・考察していきます。

『劇場版 モノノ怪 第二章 火鼠』(2025)あらすじ

モノノ怪・唐傘との壮絶な戦いから程なくして、再び大奥に現れた薬売り(神谷浩史)。その大奥内では、先の事件の余波で変化が生じていた。 総取締役だった歌山の後任となった名家の出身・大友ボタン(戸松遥)は、規律と均衡を重んじて厳格な差配を振るう。その結果、天子の寵愛を一身に受ける叩き上げの御中臈・フキ(日笠陽子)との間に亀裂が生じ、両者の溝は深まるばかり。 天子の正室である御台所の幸子が産んだ赤子の後見人選定が進む中、フキに訪れる状況を一変させる大きな事態。 その結果、ボタンの父親である大友への忖度のため追い立てられた男たちの策謀がフキへと迫る。 錯綜する思惑、やがて暴走する“火消し”の策略……。時を同じくして、突如として人が燃え上がり、消し炭と化す人体発火事件が連続して発生。 モノノ怪の仕業とにらんだ薬売りは事態を収めようとするが、群れで行動し、神出鬼没の怪異に手を焼く。薬売りはモノノ怪を斬るため三様【形・真・理】を突き止めるべく大奥に巣食う闇へと足を踏み入れていく。

※以下、ネタバレが含まれます。

『劇場版 モノノ怪』シリーズはどんな体裁の作品か

TVアニメシリーズの『モノノ怪』は、エピソードごとに舞台や登場人物なども改められる特殊なシリーズでした。しかし今回の『劇場版モノノ怪』シリーズは、それともまた違った体裁となります。

三部作での制作ということで、映画ごとに起承転結は成立していつつも、物語の舞台となるのは同じ大奥であり、登場人物も前作『劇場版 モノノ怪 唐傘』と地続きになっています。

前作時点で映画のテーマが「合成の誤謬(ごびゅう)」であることを明言していましたが、そのテーマ自体は今作でも引き継がれています。

「合成の誤謬」は経済の世界で使われる、個人のレベルでは正しいとされる行為でも、経済全体で見たときには景気を悪化させてしまう悪い行いとなってしまうような、個人で見たときと全体で見たときで「正しさ」が変わってくる様を表しています。

今作では天子の寵愛を受けるフキが、家柄や立場の関係上、子供を授かることが周囲に好意的に受け入れてもらえず、毒を盛られかけたり、堕胎を迫られる中で、ある決断に臨む様子を描いています。

なぜフキの子は疎まれたのか?

今回の騒動で争点となったのは、天子の子をフキが妊娠したことでした。男児だった場合には、そのフキの子どもこそが世継ぎとなります。もし、そうなった場合、フキのお家(時田家)はたちまちに日本で一番の名家となる大出世を果たします。

しかし、もちろんそれをよく思っていない者もいるわけで、それがボタンの父である大友やそんな大友に忖度した勝沼家といった老中などの別の家の者たち。さらには、フキとはかつては同期だったはずのサヨの嫉妬心までをも燃え上がらせる結果となりました。

そんなフキへ向けた思惑や暗躍は、モノノ怪出現のトリガーとなっていくのでした。

モノノ怪“火鼠”の火元は結局どこだったのか

薬屋は火鼠との対決を迎えるワケですが、火鼠を倒すには「火の元をみつけて斬る」ことが必要だと明言されます。まさにこの『劇場版モノノ怪 第二章 火鼠』は、中盤以降は事件の火種がどこなのかを探す物語となります。

ここまでの物語を追っていると、やはりフキの懐妊こそが火種だと勘違いしてしまいますが、終盤で火鼠における“母”が居た場所というのが、老中部屋であったことが判明します。

かつてフキのように天子の子を腹に宿しながらも、老中や父の意向に従う形で子を諦め、後に自害したスズという娘。そんなスズの、老中への怒りと、本当であれば自分も産むことができたのに、子を諦めた自身への怒りが、自らを燃やすようにモノノ怪へと転じたのでした。

つまり、フキが火種であるというのはミスリードであり、そもそもの元凶は大奥の老中たちが守り続けてきた歪んだ社会構造、過去、そして依然として変わらない現在の在り様が、火元であったというわけです。

事実、同じような境遇にあったはずのフキでしたが、スズとは違ったのが、フキは老中たちに抗って子を産む決断をするのでした。

物語は『蛇神』へ!ついに挑むは“神様”

本劇場版シリーズが三部作での制作となることは以前より発表されてはいましたが、今回の第二章の公開に合わせて、次編となる『劇場版モノノ怪 第三章 蛇神』が2026年に公開されることが発表されました。

毎回どんな“妖怪”がピックアップされるのかも注目のポイントのひとつですが、ついに“神様”と称する存在との対決ということで、事態のスケールアップにも期待がかかります。

エンドロールでは、前作で描かれた御水様を取り囲む三本の柱と繋がれた綱にもさらなる変化が描かれました。日本神話に登場する“ツクヨミ”、“アマテラス”、“スサノオ”らしき姿が描かれた柱のうち、今回は“アマテラス”の綱が切れ、残るは“スサノオ”の柱を残すのみとなりました。

スサノオといえばヤマタノオロチを退治したとされる存在であり、蛇というモチーフにも通づるものがあります。モノノ怪のデザインがどうなるのかも注目点ですが、これらの意匠ももしかすると、事前に明かしていたヒントなのかもしれません。

また、ヒントという意味では第一章、第二章に登場していながら、本編には絡んでこない溝呂木家の北斗や、薬屋との対面は実現していない天子、そしてその母である水光院など、まだ“使っていないカード”がいくつかあります。やはりこれらの人物が、次回作ではストーリーに大きく関わってくるのでしょうか。

今後がどうなるのか予想しつつ、次回作を期待して待ちましょう。

※2025年3月22日時点での情報です。

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