先日、京都に行ってきました。
思い返してみれば、母と祖母と三人で旅して以来だから、実に30年ぶり?です。ここ数年は観光客であふれた印象もありますが、実は今だからこそ出会える、静かで新しい時間があります。今回は、そんな京都で味わった5つのとっておきの出来事をそっとおすそ分けします。まずは観光から!
01:時を超えて味わう、宇治の特別な一杯
京都に行ったら、いつか訪れたいと思っていた宇治。ぶらぶらと歩いているとあちらこちらにお茶屋さんが並び、香り高いお茶の世界へと誘ってくれます。私が足を止めたのは、創業450年を誇る宇治の老舗茶舗「堀井七茗園」。趣ある店内にはお抹茶や煎茶、茶器など、お土産にしたくなる品物が品よく並んでいて早くもワクワク……!
こちらで購入できるのは、室町時代から伝わる、本ず(ほんず)栽培で育まれた茶葉。その製法は茶園に覆いをかけ、日差しを遮ることで茶葉にぐっと旨みと香りを閉じ込めるというもの。雨に濡れた葉は、まるで果実が熟したように豊かな香りをまとい、ワインでいうところのフルボディのような深みを感じさせてくれます。
特別に成里乃(なりの)という希少なお茶を点てていただきました。宇治茶の最高峰ともいわれる一服は苦みがなく、まろやかでやさしいお味。世界中探しても、ここでしか味わえない特別な一杯は染み入る美味しさです。静寂に包まれたお茶室でゆっくりとお茶をいただく時間は、せわしない日常を忘れられる、そんなひとときでした。
02:400年の歴史を誇る窯元巡り
宇治の街を散策しながら朝日焼の工房へ。
400年以上の歴史をもちながら、どこか新しさも感じさせる器づくりが魅力の窯元です。土を練り、ろくろを回し、形を整える。丁寧な手仕事の積み重ねが朝日焼ならではのあたたかさと品のある佇まいを生み出していて、素敵!
工房近くにひっそりと佇むギャラリー&ショップでひとつひとつの作品と向き合う時間は、心がほどけていくような感覚を覚えました。静かでとてもいい気が流れていて…。こんな余白のある旅こそ、大人の贅沢なのかもしれませんね。
03:京都らしいエッセンスが散りばめられたホテル
さて。せっかく京都に泊まるなら、話題のホテルに滞在したい。せわしないスケジュールに追われるより、限られた時間をゆったりと楽しみながら、食事もホテルでスマートに完結させたい。欲を言えば、この場所でしかできない特別な体験も。そんなわがままを描いていたとき、ここだ!と思わせてくれたのが「チャプター京都 トリビュートポートフォリオホテル」 でした。
京都の中心、河原町エリアに佇むこのホテルは、“一人ひとりの京都の物語を紡ぐ”をテーマにしており、京都市役所前駅から徒歩約4分という抜群のロケーション。
茶室の美意識を取り入れた落ち着きのある客室、京都の名水を汲み上げた大浴場など、モダンで洗練されたデザインの中にさりげなく京都らしいエッセンスがちりばめられていたのも大きな決め手に。
04:美食とクラフトジンのマリアージュを楽しむ
食いしん坊に欠かせないのが京都での食事。
私が訪れた日は、ホテル1階のダイニング「チャプターグリル」でクラフトジン「季の美」のグローバルアンバサダー、佐久間雅志さんが手がけるスペシャルなペアリングディナーが開催されているとのこと。さっそく、参加することに。丁寧に作り込まれた料理と繊細な香りをまとったジンの絶妙な組み合わせは、まさにここでしか味わえない美食体験。
まずは、前菜。モッツァレラにみかん、かぶ、生ハムを合わせた爽やかなサラダが到着です。手で大胆にちぎったチーズは食べごたえ抜群。新鮮な京野菜も力強くて、しみじみ美味しい。
そこにペアリングされたのは、トマトジュースとライムジュース、そして「季の美」。さらにアクアファーバー(ひよこ豆の煮汁)やバジル、オリーブオイル、パルメザンチーズをひと振りしたスペシャルカクテル。
一口飲めば、まるでガスパチョのようなフレッシュさとコクが広がります。思わず「これ、お酒だった?」と驚いてしまうほど飲みやすく、お酒があまり強くない私でも、するっと飲み干してしまいました。お料理とジン、それぞれの個性が引き立て合い五感で感じるひととき。
ここでぜひ味わってほしいのが、シグネチャーメニューでもあるフィッシュ&チップス。といっても、私たちがよく知るクラシックなスタイルとはひと味違うんです。外はカリッとなかはふっくらとした白身魚ではあるものの、付け合わせのソースや京野菜とのバランスが絶妙で。う、美しい…! 思わず感嘆のため息がもれてしまったほど。
この一皿を生み出しているのはヘッドシェフの桝直人さん。東京や京都の名店で腕を磨き、外資系ラグジュアリーホテルで培った経験をもとに、2024年からこのレストランの指揮を執る実力派。
ペアリングはコースだけでなく、アラカルトでも楽しめるそうなのでふらりと立ち寄って、軽く一皿と一杯を楽しむもよし。しっかりとディナーコースで味わい尽くすもよし。それぞれのスタイルに合わせて、気負わず楽しめるのがうれしいですよね。
04:京都の夜は「季の美House」でしっとりと
せっかく京都に来たのなら、その土地ならではの一杯を味わいたいもの。そんな気分に寄り添ってくれるのは、ホテルから歩いて2〜3分のところに佇む「季の美House」。入口を見ただけで期待が高まります。
こちらは京都蒸留所による初のブランドハウスで、バーだけでなく、季の美のつくりが学べるセミナーやジンの歴史、店舗限定のグッズ販売など、世界観が堪能できる空間になっていました。
柚子や山椒など、和のボタニカルをふんだんに使った一杯は香り高く繊細。ここでしか味わえない特別なメニューも多く、どれにしようか迷ってしまうほど。京都での夜、静かにグラスを傾けながら自分だけの時間に浸るバーを知れることができて、ホクホク♡
05:知られざる京都にふれる体験を
メジャーな観光スポットもいいですが、まだ知らない風景や隠れた名店にも行ってみたい。そんな欲張りな私の心を満たしてくれたのが、ホテル1Fにある「チャプターファクトリー」でした。滞在した方々の旅の記録が手のひらサイズの一筆箋で並べられています。
旅の記念に私も手のひら一筆箋の製作を体験することに。
宿泊プランについていたデザートセットをいただきながら、この旅で初めて出会ったうば玉という京都の伝統菓子と、それを教えてくれた宇治のお茶屋さんのことを綴りました。誰かがこの一筆を手に取り、私と同じ場所を訪れてくれたならうれしいし、またいつか自分自身が読み返して、新たな旅を紡いでもいい。
私の京都のチャプターは、まだ始まったばかり。
次はどんな新しい景色に出会えるのか。今からワクワクしています。
写真・構成/川口ゆかり
*この記事は2025年3月22日現在の情報です。