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加藤浩次が語る“いまの時代”にこそ必要な「余計なお世話と無駄」の楽しみ方 映画好きの2人が語る「面白い映画」の条件

  • 2025.3.22
「加藤浩次とよしひろのサンデーシネマ」 ※提供画像

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BS10で放送中の「加藤浩次とよしひろのサンデーシネマ」(日曜夜6:00〜9:00)は、映画好きで知られるタレントの加藤浩次と映画ライターのよしひろまさみちがおススメの作品を紹介し、2人による解説も楽しめるトーク番組。よしひろも認める映画ファンである加藤とともに、それぞれが映画に抱く想いを語ってもらう。後編では「面白い映画」の条件や、加藤が映画好きになるきっかけのエピソードが明らかになった。

これだけは外せない「面白い映画」の条件

――映画好きであるお2人にとっての「面白い映画」とはどんな映画ですか?良い映画、面白い映画とはどんなものだと考えていますか?

加藤:やっぱり良くできた脚本で、それに脚本にあった俳優さんが出演されていて、カット割りが練られている…これに尽きると思います。結局それしかないですよ。

よしひろ:私が言いたいことを大体言われてしまいました(笑)。私は俳優がどうあれ、とにかく本(脚本)が良くないと絶対面白くないと思います。日本映画が面白くなくなってきたのは、本が良くないから。たとえばテレビシリーズの映画版というのは、テレビを見ている人以外は置いてけぼりじゃないですか。それって本が悪いということですよね。

本が良ければ、テレビを見ていない人だって置いてけぼりにされないものを作れるはずなんです。ハリウッドのシリーズ物だって…さすがにマーベルくらい作品が多くなってしまうと、前作を見ていないと繋がらないというのはわかるんですけども。

ただそうではなくて、「96時間」などは途中から見ても絶対に面白いはずじゃないですか。あれは本が良いからなんですよ。だから本が良くなかったら面白くない。もちろん、そこにキャストとか、監督の力はどうしても必要だとは思うんですけど、大前提は本だと思います。

加藤:どんなコメディであろうが、どんなアーティスティックな作品であろうが一緒だと思いますよ。やっぱり脚本は絶対的だなと思いますね。

よしひろ:本が良ければ大体すべて良しですよ。ピクサー・アニメーション・スタジオの取材に毎年行っていた時期がありましたが、ジョン・ラセターがまだ現役の頃は毎回のように言われました。「良い映画には良い本、それしかない」と。

加藤:設計図ですからね。

よしひろ:そうなんです。設計図がしっかりしてないと。たとえばハリウッドの映画がどれだけ設計と開発にお金と時間を注ぎ込んでいるかということを、意外と皆さん良くわかっていらっしゃらない。

――番組で取り上げる映画に関してのトークでも、やはり脚本に着目したトークが多かったりするのでしょうか?

よしひろ:あんまり話してないですね(笑)。それを言い始めると、小難しい話になってしまいますし。

加藤:そうですね。あと、それだけで終わっちゃいますから。

よしひろ:もうちょっとキャッチーなところを3つぐらい取り上げて、そこを掘り下げていく。でもその中であっても、本の話は絶対に入っていますね。

加藤:脚本の話は全部入っていますよ。

加藤を映画の世界に引き込んだ“厳しい”客

――加藤さんが映画をそこまで好きになった原体験、きっかけみたいなものはありましたか?

加藤:そこまで「映画好き」と言われるほど、大して見ていないですよ。

よしひろ:いやいや、めちゃくちゃ見ていますよ(笑)。北海道時代に娯楽として見に行っていたんじゃないでしょうか?

加藤:行ってましたね。小樽で見ましたよ。ワーナーマイカルができる前は、「スカラ座」など昔の劇場へ行っていました。それにテレビで映画をやっていたらなんとなく見る。子どもの頃は、正月の深夜に「エマニュエル夫人」や「ポーキーズ」などを毎回見ていました。

よしひろ:「ポーキーズ」、ありましたね。あの時代、最高(笑)

――気がついたら好きになっていたという感じですか?

加藤:僕の中学校2年生くらいから、ビデオが普及し始めました。僕の家にも僕が高校1年の時にビデオが入りました。その当時、ものすごい量のビデオを持っている同級生がいたんです。親の影響だと思うのですが、映画好きで。その同級生と知り合いになってから、見る本数が増えましたね。

よしひろ:お友達に感謝ですね。

加藤:東京に出てきてからも、中目黒のバーでバイトをしていたときに映画と縁がありました。映画関係の仕事でもないのにすごく映画を見ているお客さんがいて、その方から「お前さあ、芸人目指してるのか知らんけど、映画も好きなんだよな?ヒッチコックの映画全部見たのか?」と聞かれたんです。

それで「鳥」「サイコ」「めまい」は見ましたと答えたら、「え?それしか見てないの?全部見なきゃ駄目だよ」と言われて。

よしひろ:厳しい。

加藤:「え?」と思いましたね。そこから毎日バイトが終わったあとにレンタルビデオ店で3本ぐらい借りて帰って、見て寝て、またバイトに行くという生活になったんです。

そうしたら「この監督でずっと見てみよう」という感覚がやっと自分の中にでき始めました。仕事も全然なく、バイトと寝るだけの生活だったのも関係しているかもしれません(笑)。

――それは苦ではなくて、楽しんでやられていたんですよね?

よしひろ:その常連さんのためと言うより、自分のためですよね?

加藤:自分のためでもあるんですけどね。でもその常連さんに「あれ見ましたよ」と伝えると、「どうだった?」「そういうところか、あの映画はなあ」と始まる。その会話が好きだったんです。映画オタクの解説や考察が大好きだったんですよ。

――ひょっとしたらその人がいなかったら今の加藤さんないかもしれないですね?

加藤:そうですね。本当にあれだけ見る生活にはならなかったと思うなあ。

よしひろ:映画をたくさん見たことでお笑いの仕事に影響ってありました?

加藤:「このワンシーン面白い」という、そのワンシーンから派生させたネタとかは結構作りました。

よしひろ:やっぱりそうなんだ。映画、見ておいて良かったですね。

加藤:本当に。全てのエンターテイメントの土台みたいなものが、僕は映画だと思っているので。

映画ライターも舌を巻く「オタクの人たち」のすごさ

――これほど映画好きの2人が、好き勝手に話すのがこの番組のすごいところですね(笑)

よしひろ:そんなに映画好きかと言われたら、そこまで好きじゃないはずなんだけど…。

加藤:好きでしょ?いや、でも仕事になっちゃうとそうなるのか。

よしひろ:酒の方が全然好きですけど(笑)

加藤:わかりますよ。お仕事にするときついなというのはわかります。

よしひろ:映画が嫌いという話ではないんです。好きなんですけど、酒や飯といったそれよりも好きなものがすぐに出てくるということですね。嫌いだったら多分仕事にはしていないので、良かったなとは思います。

加藤:結局、数じゃないですよね。

よしひろ:どう見るかですよ。今は好きな映画を突き詰める人がすごく多いし、それを発信するSNSもある。オタクの人たちはやはりすごいなと、いつも尊敬しているんですよ。

我々の仕事は幅広く見なければいけないので、全部見た上で“自分のタイプの映画”“自分が持っている媒体に合う映画”を探すことは経験的にできるようはなりました。でも楽しめているかというと、「楽しいのかな?」というような気持ちにはなりますよね。

加藤:いっぱい見ていれば良いというわけでもないですしね。

よしひろ:よく「年間で何本の映画を見た」みたいなことを冠につけたいと言われるんですよね。私は400前後と言っているのですが、見た本数は別に冠でも何でもない。仕事だからみんな見ているわけです。新作ベースで400、旧作も入れれば7~800はいくと思いまけど、それは仕事のためのリサーチであって、カウントするつもりもないですし。

加藤:数じゃないってことですね。

吉浦:全然数じゃない。紹介の仕方と、どう見るかだけだと思います。その点で言えば、本当に加藤さんはすごい。面白いと紹介すれば何でも見てくださいますし、自分の考えをちゃんと持っていらっしゃる方なので。

加藤:いやいや、好き勝手に言っているだけです。

現代にこそ必要な「余白」

――改めて、番組について見どころを教えてください。

加藤:暇な方とか、映画好きの方とか、好きな俳優さんが出ているから見る方とか、映画を見る動機はいろいろあると思います。その映画を見たあと、「このおっさんたちは何を言うんや?」「この2人はこの映画をどう語るんだろう?」「いや違う、こうだと思うよ!」といった切り口で楽しんでもらえればなと思います。…おっさんって言って良かった?(笑)

よしひろ:全然いいです(笑)。おっさんですもん。間違っていないです。

初回でしたっけ、お互いの“映画のタイプ”の違いみたいな話をチラっとした覚えがあります。でも基本的に被らないんですよね、好きな映画が。

――喧嘩にならなくて良いかもしれないですね(笑)

よしひろ:私はただただいらない情報も含めながら解説をするだけです。

加藤:面白いんですよ、その情報が。

よしひろ:蛇足が多いんですけど。なので編集の方には、大変申し訳ございません…。

加藤:皆さんにとって無駄な番組だと思います。余計なお世話とか無駄。でもいまの時代、余計なお世話と無駄が必要なんじゃないかなと思います。

よしひろ:余白ですよ、余白。

――意味のあるものばかりでは疲れてしまうと思います。

よしひろ:お土産を持って帰ってもらいたいんです。私が映画の試写会で登壇するときは、必ずそれを考えているんですよ。それは「サンデーシネマ」をご覧になった方にもできることだと思います。見たあとになにか、知識のお土産を私達が持たせられればいいなと思ってやっています。

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自然体で映画を楽しむ2人が贈る「加藤浩次とよしひろのサンデーシネマ」。次回3月23日(日)の放送では1976年のF1レースで争った2人の天才を描いた実話「ラッシュ/プライドと友情」を、4月6日(日)の放送では「アルマゲドン」の脚本家が放つ決死のレスキュー・エンターテインメント「アイス・ロード」を深掘りする。

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