ハル・ベリーが挑む“セカンドアクト”と更年期の壁を壊す挑戦
女優のハル・ベリーは、58歳で人生の“セカンドアクト”に挑む準備が整い、その旅路を多くの女性たちと一緒に歩みたいと考えている。だからこそ、彼女はウェルネスブランド「Respin」を再発足させ、更年期に関する教育やコミュニティの形成、中年女性のエンパワーメントに力を入れている。
先月、米TV番組『Today』に出演した彼女は、ブランドの立ち上げと加齢に対する自身の向き合い方について語った。「40歳を過ぎたからといって、無名になる必要なんてない。私たちにはまだ、人生の半分以上が残っているんだから」と話す彼女は、中年以降こそが最も過小評価されている“全盛期”だと信じている。40歳を過ぎた女性たちはすでに豊富な経験を積んでおり、そのエネルギーを引き出す手助けをしたいと語った。「今こそ、私たちが輝けるとき。これまで一生懸命働いて、子どもを育て、キャリアを積んできた女性はたくさんいる。まだまだ立ち止まるときじゃないわ。むしろ、再出発のときよ。美しく輝く、人生の第二幕を迎えるために。ただ、それを実現する方法を知る必要があるだけ」と。
更年期のサポートコミュニティ「Respin」立ち上げ
「Respin」では、世界中の医師や科学者の専門知識をもとに、更年期の健康に関する最新情報を提供。食事や運動のアドバイスからホルモン補充療法の詳細まで、幅広い知識を学ぶことができる。何よりも重要なのは、同じステージを生きる女性たちが互いに支え合えるコミュニティがあること。ベリーは、「Respin」を自分の“第二の人生”の重要な一部だと語ったが、その決断には周囲から反対の声もあったという。「本当にそんな話をしたいの? 更年期と自分を結びつけるつもり?それがキャリアにどう影響するか心配じゃないの?って。だからこそ、私は話さなきゃいけないと思うの。中年でいること、58歳であることに何の問題もない。社会がそう思い込んでいるだけ。だから私は、それが間違いだと証明してみせるつもり。私たち女性は一緒にこの時期のスティグマをなくして、文化を変えていかなきゃならないわ」と。
もちろん、これは口で言うほど簡単なことではない。更年期という言葉には、長い間ネガティブなイメージがつきまとってきた。でも今は、ベリーをはじめ、ナオミ・ワッツ、ジェニファー・アニストン、ヴァレリー・バーティネリなど、多くのセレブたちがその壁を壊そうとしている。ベリー自身もその難しさを理解しているが、彼女のアドバイスは至ってシンプル。それは、「とにかく始めること」。
「まずは小さな一歩を踏み出すこと。自分の健康に向き合い、自分の体で何が起こっているのかを理解することが大切。学び始めると、女性たちは自分で力強い選択ができるようになる。そうすると、無力感が消えて、エンパワーされた気持ちになれるのよ」と。
更年期との向き合い方
「もう一度あの話をするつもりはないわ。聞いたことがある人もいるだろうから」と、ベリーは58歳の笑顔で語った。彼女が言っているのは、更年期の始まりに関すること。最初はヘルペスと誤診されていたが、実際には膣萎縮(膣の乾燥)が原因だったという。この体験こそが、更年期に関する知識を根本から見直すきっかけになったと彼女は語っている。
10月、ネバダ州ラスベガスで開催されたHLTHカンファレンスでは、アメリカ版『ウィメンズヘルス』誌の元編集長リズ・プロッサーと共に、彼女が手がけるウェルネスプラットフォーム「Respin Health」の再ローンチについて語り、今後は更年期に特化していくことを明かした。「更年期ほど、リスピン(再設計)に値するものってある?と思ったの」と彼女は言った。
コミュニティの力と治療法
「Respin」では、コミュニティ、コンテンツ、コマース、ケアという4つの機能を提供している。女性たちは、更年期の過程を支え合いながら、体に起きている変化を学び、更年期関連の商品を購入したり、ヘルスコーチと共に自分に合った治療プランを見つけることができるという。「Respin」に所属するコーチたちは全員中年女性で、それぞれの専門分野に応じた学位や資格を持ち、「看護、栄養学、運動科学、機能医療、心理学などの分野で、数年にわたる経験と高度な教育、資格を有している」とのこと。
彼女が特に注力しているのは、コミュニティの力だ。更年期症状の一つであるブレインフォグに悩まされていた彼女は、他の女性たちと話すことでかなり救われてきたという。「頭がボーっとして、洗濯機を三回も水浸しにしたことがある。水を出して犬のご飯を温めている最中、気が散って忘れてしまうの。その後、水浸しになってアラームが鳴り、『もう二度としないように気をつけよう』と思うけれど、3週間後にはまた同じことをして、翌月も繰り返しちゃった。これを他の女性に話して、『私も同じことをした』と言われた瞬間、気持ちがすごくラクになったの」と。
更年期研究と社会変革
また、ベリーは「Respin」への取り組みにとどまらず、更年期の研究を議会で提唱している。今年5月には、超党派の上院議員グループに参加し、更年期に関する研究や教育に2億7500万ドルを充てる法案を推進したと報じられている。この法案は、更年期や、かつて否定的に扱われていたホルモン療法に関する臨床試験の予算を増やすことを目的としている。
「これは政治の問題じゃない。人権の問題よ。私たちは、自国だけでなく、世界の半分を占める人口にもっとお金を投じるべきだわ」と語る彼女は、誰も自分のように一人で苦しむことがないよう、更年期への認識と治療法の進歩を願っている。
「Respin Health」独占のワークアウトを試してみよう
「Respin Health」が提案する「ムーブメントスナック」とは、日常の習慣を変えることなく、服を着替える必要すらない簡単なエクササイズのこと(2021年の研究では、運動はその強度にかかわらず、更年期症状の軽減に役立つことが示されている)。「Respin Health」が推奨する独占エクササイズはこちら。
座る前にスクワットを10回:デスクやソファ、テーブルに座るたびに、スクワットを10回やってみよう。
ドアに向かってプッシュアップ:部屋を出るときは、ドアに向かって素早くプッシュアップを数回をこなして。
洗濯物ランジ:洗濯物をたたんだり運んだりする合間に、ランジを数回取り入れよう。
歯磨きをしながらバランス感覚を鍛える:歯を磨いている間は片足立ち。途中で足を替えて、バランス感覚を鍛えよう。さらに挑戦したいなら、腰を回す動きも加えてみて。
キッチンカウンターでカーフレイズ:コーヒーができるのを待ったり、お湯が沸くのを待っている間に、かかとを上げてカーフレイズをしよう。
椅子ディップ:頑丈な椅子に座っているなら?立ち上がる前に、手を椅子の先端に寄せて、トライセプスディップを数回やってみよう。
※この記事は『Prevention』と『アメリカ版ウィメンズヘルス』の翻訳をもとに、日本版ウィメンズヘルスが編集して掲載しています。
Text: Charlotte Walsh, Kayla Blanton Translation : Yukie Kawabata