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見た目も家庭環境も正反対な、2組の子持ち夫婦。幸せな家庭は、そして最後に崩壊する家庭は一体どっち?【書評】

  • 2025.3.21

【漫画】本編を読む

「人の不幸は蜜の味」とはよく言ったもの。とはいえ、現実世界で泥沼劇に巻き込まれるのは御免だが、ストレスなく楽しめるのがフィクションならではの大きなメリットだろう。

『どちらかの家庭が崩壊する漫画』(横山了一/KADOKAWA)は、「リアルすぎて怖い」とSNSで話題となった、ファミリーサスペンス漫画だ。

本作で描かれるのは、子どもを持つ2組の夫婦の暮らし。エリートサラリーマンの夫を持つ薬師寺家と、無職でガラの悪い風体をした夫を持つ毒山家。タイトルどおり「どちらかの家庭が崩壊していく」様と、そこに関わるもう1組の夫婦、という形で物語のストーリーは展開していく。

バリバリ働く夫を専業主婦として子育て中の妻が支える、という関係の薬師寺家は、それだけを見れば非常にありふれていて、ともすれば生活の安定した“普通の幸せ”に生きる夫婦のようにも思える。

一方の毒山家は生まれたばかりの子どもを抱えながらも、夫は無職かつパチンコ三昧。就職しようにもどの仕事もなかなか長く続かず、結果として妻の方が働きに出て、主夫が家事育児を主に担当していた。

そんな2組の家庭だが、正直な印象として、「崩壊しそう」に見えたのはどちらだろうか。物語を構成するメタ的視点で、ゆくゆくはどちらの家庭が崩壊するかうっすら予想がついた人もきっといたはず。だが見た目や家庭状況の第一印象から、明らかに一方の家庭を「崩壊しそう」と判断した価値観から、我々は目を背けてはいけないようにも思う。

夫婦の泥沼劇以上に、この作品が内包するのは「人を見た目や第一印象で判断してはいけない」というメッセージだ。もちろん、結果として見た目や第一印象どおりのことだって多々ある。だが同時に、そういった思い込みで「見たいものしか見えない」状況になっているケースも、もしかしたら同じぐらいあるのかもしれない。当事者が最後まで、まったく気づかないというだけで。

私たちが無意識に持つ“見た目への偏見”を示唆しつつも、2つの家庭で巻き起こる泥沼劇は、着々と片方の夫婦の崩壊へと進んでいく。薬師寺家と毒山家、それぞれの夫婦の行く末は? 結末は、ぜひ自身の目で確かめてほしい。

文=ネゴト/ 曽我美なつめ

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