1. トップ
  2. 舘ひろし「3回くらい観ています」見る人によってエンディングの受け取り方が変わる傑作「鑑定士と顔のない依頼人」<舘ひろし シネマラウンジ>

舘ひろし「3回くらい観ています」見る人によってエンディングの受け取り方が変わる傑作「鑑定士と顔のない依頼人」<舘ひろし シネマラウンジ>

  • 2025.3.21
「舘ひろし シネマラウンジ」 ※提供画像

【写真】舘ひろしをトリコにした伏線の妙が光る「鑑定士と顔のない依頼人」

映画をこよなく愛する俳優・舘ひろしがナビゲーターを務める「舘ひろし シネマラウンジ」(毎週土曜よる6:00〜9:00)。映画評論家・伊藤さとりと数々の名作映画を紹介していく。3月15日の放送では、2013年に公開された映画「鑑定士と顔のない依頼人」を取り上げた。本作の注目ポイントや制作秘話に加え、舘の楽曲誕生秘話も明かされたボリューム満点の内容となっている。

感情の機微を映し出す名手が描く「鑑定士と顔のない依頼人」

本作について、まず「僕ね、3回くらい観ていますね」とコメントした舘。何度も巻き戻しては“この芝居はここに繋がっているんだ”と見返しているのだそう。舘が注目ポイントとして挙げたのは、細部に散りばめられた伏線。伊藤もその言葉には大いに納得したようで、「細部を見るのが面白いですよね。部屋だったりとか、椅子の位置だったりとか…」とうなずく。「全て意味があるんですね」と笑う舘の表情は、本当に楽しげだった。

舘と伊藤は本作について、さまざまな考察を打ち交わす。たとえば物語のラストについてであっても、舘と伊藤の考察は異なっているのが面白いところ。人によって受け取り方や感じ方が違う撮り方、映し方について、伊藤は「想像させるような不思議な作り」と論評する。

「鑑定士と顔のない依頼人」の“とっておきの話”と題して挙げられたいくつかのキーワードから、舘は「あのセリフの真実」をチョイスした。クレアがヴァージルと別れる前に「たとえ何が起きようとーーあなたを愛してるわ」というセリフだ。

ヴァージルを騙していたクレアが、別れのひと幕で告げた言葉。舘は「すごく必死というか、本当に真実を言っているじゃない」と振り返り、「芸術品の贋作に本物が潜むなら、偽りの愛にも真実が」という作中のセリフを引用してみせた。偽りの愛に混じった本当の愛が垣間見える、感慨深いシーンだ。

トルナトーレ監督はインタビューで「わたし自身 この映画の結末は非常にポジティブなものだと思っています。愛を信じる人たちには勝利ですが 愛を信じない人には暗いエンディングに思えることでしょう」と語っているのだが、舘は「僕は愛を信じてるけど、暗いエンディングだと思った」とコメント。対する伊藤は「彼(ヴァージル)にとってハッピーエンドだと思いました」と答えるなど、映画好きの間でも印象が180度異なる描き方に名作の妙味がある。

黄金バディが描く緻密なストーリーライン

「鑑定士と顔のない依頼人」の監督であるジュゼッペ・トルナトーレ監督は「“教授”と呼ばれた男」(1986年)で映画デビューを果たし、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1989年)「海の上のピアニスト」(1998年)、「マレーナ」(2000年)などの傑作を手掛けた名監督だ。そんなトルナトーレ監督の「鑑定士と顔のない依頼人」は、天才オークション鑑定士であるヴァージル・オドマン(ジェフリー・ラッシュ)と“姿を現さない依頼人”クレア(シルビア・フークス)の愛とミステリーの物語だ。

天才的な審美眼を誇り、世界中の美術品オーディションを取り仕切る鑑定士バージル・オドマン。彼に舞い込んだのは、資産家の両親が残した絵画や家具を査定してほしいという依頼だった。屋敷に到着したヴァージルだったが、依頼人の女性クレアは屋敷内の隠し部屋にこもったまま。だが彼女が隠れる部屋を突き止めたヴァージルは、部屋をのぞき見たことで彼女の美貌に心を奪われてしまう。そんななかヴァージルが美術品の鑑定を進めていると、歴史的発見ともいえる美術品を見つけるのだが…。

本作の音楽を担当している作曲家のエンニオ・モリコーネとトルナトーレ監督は、「ニュー・シネマ・パラダイス」(1988年)以来タッグを組んできた黄金バディ。イタリアの映画賞であるダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞において、「作品賞」「監督賞」「音楽賞」をはじめとする6部門に輝いている。舘もエンニオ・モリコーネの代表作の1つである「太陽の下の18才」に影響を受け、自身の楽曲「朝まで踊ろう」を書いたのだと明かす。

「鑑定士と顔のない依頼人」は見る度に違う発見がある映画。細かな伏線が散りばめられた名作であるとして、舘は同作を表して「脚本が緻密」とひと言でまとめる。改めて「一度見ただけではよくわからない」と繰り返しの視聴を勧め、「本当に面白い映画です」と締め括った。

次回は3月29日(土)放送の戦争アクション「ハート・ロッカー」

3月29日(土)に放送される第9回「舘ひろし シネマラウンジ」は、女性初のアカデミー監督賞を受賞した戦争アクション「ハート・ロッカー」を紹介。舞台は2004年夏、イラクのバグダッド郊外…死と紙一重の任務にあたるアメリカ軍爆発物処理班を描いた作品となっている。アカデミー賞では作品賞など6部門を制覇している本作は、極限まで追い詰められた状態や心の傷を生々しく浮き彫りにした描写が秀逸だ。

<「鑑定士と顔のない依頼人」あらすじ>

天才鑑定士兼、競売人のヴァージルは隠し部屋に飾られてある女性の肖像画鑑賞が楽しみだった。そんなヴァージルに若い女性から、鑑定の依頼が入る。依頼のため、指定された邸宅へ足を運ぶものの、一向に姿を見せない依頼人。顔を見せない依頼人と天才鑑定士の奇妙な鑑定が始まるのだった。

元記事で読む
の記事をもっとみる