鍋料理をはじめ、さまざまな家庭料理で活躍する野菜の一つ「長ネギ」。長ネギといえば、根本の白い部分と、先端の青い部分に分かれているのが特徴ですが、皆さんは普段この「青い部分」を食べていますか? それとも、食べずに捨てていますか?
長ネギの「青い部分」について、ネット上では「普通に食べます」「青い部分もおいしいよね」「大好きです」といった“食べる派”の人がいる一方、「切り落として捨ててる」「食べようと思わない」「青臭いし、食べずに捨てるなぁ」といった“捨てる派”も多いことがうかがえます。
食べるのか、それとも捨てるのか……意見が分かれる長ネギの「青い部分」について、管理栄養士の岸百合恵さんは「長ネギには捨てなければいけない部分はない」と断言します。実は豊富に含まれているという、「白い部分」とは少し異なる栄養素についても、詳しく教えていただきました。
青い部分は「緑黄色野菜」
そもそも、「ネギ」がどんな野菜かをご存知でしょうか?
ネギには、根元の白い部分を食べる「根深ネギ」と、葉の部分を食べる「葉ネギ」の2種類があります。このうち、一般的には根深ネギが「長ネギ」「白ネギ」と呼ばれるものです。地域やスーパー、販売店によって呼び方が変わりますが、長ネギと白ネギは同じ野菜であり、関東のスーパーでは長ネギが主流のようです。
長ネギは、生産量の約70%が秋から冬にかけて出荷され、旬は11~12月です。独特のにおいがあり、鍋やスープに入れたり、薬味やたれの下味に使ったりと、加熱の有無や切り方次第でさまざまなおいしさが引き出せる食材です。
薬味などにして生で食べても特有の辛みがあっておいしいですが、加熱するととろりとした口当たりとなり、甘みが増すので、焼いたり煮たりして食べるのもいいですね。つくねやギョーザの具など、いろんな料理に使える万能野菜といえます。
そんな長ネギの「青い部分」について、ネット上の意見を見てみると、「食べる」人と「食べずに捨てる」という人に分かれているようです。「本来、どうするのがいいの?」と思ったことがある人もいるかもしれません。
結論からいいますと、長ネギには捨てなければいけない部分はなく、青い部分を含めて丸ごと食べることができます。長ネギの青い部分と白い部分は、色こそ違えど、どちらも「ネギの葉っぱ」だからです。
ちなみに色が違うのは、ネギの白い部分は地面に埋まっていて日光が当たらず、葉っぱが白いままであるためです。一方、地表に出ていて日光に当たる部分は青くなります。
長ネギの青い部分には栄養が豊富に含まれており、捨てるには非常にもったいない部分といえます。ぜひ丸ごと活用し、無駄なく摂取していただきたいです。
「青い部分」と「白い部分」の栄養、実はちょっと違う
先述したように、長ネギの「青い部分」と「白い部分」はどちらもネギの葉っぱですが、実は、含まれる栄養素は少し異なります。
一般的に、白い部分は「淡色野菜」に、青い部分はβカロテン量が多いため「緑黄色野菜」に分類されます。βカロテンだけでなく、カルシウムやカリウム、ビタミンCなども、白い部分と比較すると含有量が多く、全体的に栄養価が高くなっています。
青い部分からはぬるぬるとした透明の液体が出てきますが、これには「フルクタン」と呼ばれる成分が含まれています。フルクタンは複合多糖類の食物繊維の一つであり、長ネギの甘みを決めるとともに、免疫力を高めてくれる成分です。
また、においや辛みのもとであり、疲労回復に役立つとされるビタミンB1の吸収を高めてくれる「アリシン」や、香りのもとになっている成分の一つで、強い殺菌効果や解熱作用を持っている「ネギオール」といったネギの特徴的な成分は、白い部分に多く含まれます。これらの香り成分の効果が、「風邪をひいたらネギを首に巻くとよい」といったような昔からの民間療法に使われてきた理由でもあります。
このような長ネギの「白い部分」と「青い部分」の栄養素は、おいしく食べながら、なるべく余すことなく摂取したいもの。おいしく、効率的に栄養を取るためのポイントをお伝えします。
先述したように、白い部分は加熱すると中がとろりと溶け出し、非常に甘味が増します。そのため、焼いたり、鍋などに入れたりしてじっくり火を通すのがおすすめです。太く食べ応えがあるので、料理のメイン食材にもなります。
一方、青い部分は少し硬く、繊維が残りやすいですが、香りが強くて辛みもあるので、味を引き締める薬味に使うのがよいです。においの強い納豆の薬味にはぴったりですね。先述の殺菌作用もあるので、生ものや冷ややっこなど、加熱しない料理に使うと効果的です。粘りがあるので、みじん切りにして調味料や肉だねなどに加えるとよくなじみます。
また、青い部分は味を楽しむだけでなく、肉類を煮込む際の臭み消しにも使えます。臭み消しにはネギのどの部分を使用してもよいですが、青い部分の方が加熱しても形が崩れにくく、香りも強いので、肉の臭み消しに向いているといえるでしょう。
青い部分と白い部分に共通する注意点は、アリシンやネギオール、ビタミンC、カリウム、ビタミンB群などの成分が「水溶性」であること。そのため、生で食べる場合も長時間水につけない方がいいです。加熱する場合も汁物や鍋物など、栄養素が溶け出した汁ごと食べられる調理法にすると、効率的に栄養素を摂取できますよ。
オトナンサー編集部