A24が放つ異色のヒューマンドラマ『終わりの鳥』(4月4日公開)。このたび、本作の本編映像が初解禁となった。
地球を周回して生きものの“終わり”を告げる鳥“デス”と、その鳥と寄り添う病を抱える少女。かたや少女の母親は一心不乱に鳥と闘おうとする。世にも奇妙なデスと対峙することによって、母娘2人は間もなく訪れるであろう別れを次第に受け止めてゆく。そのプロセスが風変わりな表現、アイス・キューブの名曲「It Was a Good Day」に乗せて描かれる。
次世代を牽引する新たな才能を発掘してきたA24のもと、長編監督デビューを飾ったのはクロアチア出身のダイナ・O・プスィッチ。タバコをくゆらせ、ラップのリズムを刻むチャーミングなキャラクター、デスを造形する一方で、死という観念を奇想天外に視覚化し、その苦悩にも触れるなど奥行きのあるストーリーを仕立ててみせた。繊細でウィットに富んだ少女チューズデー役には、『恋人はアンバー』(20)のローラ・ペティクルー。エミー賞常連の人気テレビシリーズ「VEEP/ヴィープ」で知られるコメディエンヌのジュリア・ルイス=ドレイファスが、シリアスとコミカルを横断する絶妙なバランスで母親ゾラを演じる。
今回、解禁されたのは、喋って歌って変幻自在な一羽の鳥<デス>が人々に“死”を告げる瞬間を捉えた本編映像。<デス>には、死を迎える者たちの声が常に響いており、その声に導かれるように“現場”にやって来る。年老いた女性は、突如現れた<デス>に怯むことなく、唾を吐きつけ威嚇。しかし、彼が羽を広げ、ゆっくりと振りかざすと、そっと息を引き取る。次のシーンでは、死にたくないと息も絶え絶えの男性の声にも耳を傾けることなく、羽を振りかざす<デス>の姿が映しだされていく。
メガホンをとったプスィッチ監督は「生と死は明るさと暗さと同じで、どちらか一方がなければもう一方が存在することができない関係。限りのあることによって、生命には価値が与えられています。人生で一度きりの特別な瞬間は、憂鬱で悲劇的だけれど、同時に、美しさ、力強さ、価値を与えてくれるものなのです」と本作に込めた想いを明かしている。
“死”という観念を奇想天外に視覚化した本作。人々の苦悩にも触れる奥行きのあるストーリーに期待が高まる。
文/鈴木レイヤ