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上空の寒気がもたらす気象災害! これから夏にかけて要注意

  • 2025.3.21

ゲリラ豪雨や竜巻、大雪などの激しい気象現象をもたらす原因の一つに「上空の寒気」があります。

悪天候をもたらす原因といえば低気圧や前線、台風などをイメージする人も多いでしょう。
しかし、上空の寒気による激しい気象現象は、天気図に低気圧や前線、台風が解析されていなくても発生します。

さらに上空の寒気は季節問わず、様々な気象災害のリスクがあります。
この記事では、上空の寒気がもたらす気象災害や注意点、備えるポイントを解説します。

上空の寒気とは

一般的に寒気とは、予報用語で「周囲の空気に比べて低温な空気」を指します。例えば、冬季の天気予報で「強い寒気が流れ込み、冬型の気圧配置が強まる」というのは、気温が大幅に下がるという意味です。

上空の寒気とは、高度約5,000m~6,000mにおける、周囲より低温な空気のことをいいます。上空に寒気が流れ込むのは、上空で吹いている偏西風の蛇行が大きくなり、上空に冷たい空気が入り込んでくるためです。

「上空の寒気」という言葉を使用する際には、基本的に「上空の寒気の影響で大気の状態が不安定」のように、「大気の状態が不安定」までセットで使われるのが一般的です。

これは、上空の寒気は気温の高低を指すために用いるというよりも、大気の状態の不安定さを表すために用いられるためです。同じ寒気でも、「上空」が付くか付かないかでその意味合いが大きく変わります。

上空の寒気がもたらす気象災害

上空の寒気による気象災害は年間を通して発生します。

年間を通して、上空の寒気によって起こりうる気象災害として「雷」「突風」「竜巻」があります。また、春や秋はひょう、冬は大雪が発生しやすくなります。春、夏、秋はゲリラ豪雨も起こりやすくなります。

上空の寒気が激しい気象現象をもたらすのは、上空と地表の気温差が大きくなって積乱雲が発達しやすくなるためです。
上空に寒気が流れ込むと、冷たい空気は重たいため下へ降りようとし、地表付近の暖かい空気は上に昇ろうとします。この上下方向の空気の運動を対流といい、対流が活発になることで積乱雲も勢いよく発達します。

近年の異常気象との関連

上空の寒気と近年の異常気象には密接な関係があります。

上空の寒気によって積乱雲がどれくらい発達するかは、地表との気温差によって変わります。上空と地表の気温差が大きいほど積乱雲が発達し、より激しい気象現象をもたらします。

例えば、夏は上空5,800m付近に-6℃以下の寒気が入り込むと大気の状態が非常に不安定になるといわれています。

近年は地球温暖化の影響によって夏の気温がどんどん上昇しており、一昔前なら地表近くの気温が30℃程度だった地域でも、現在では40℃近くまで上昇しているところもあります。
一方、上空5,800m付近には昔も今も定期的に-6℃以下の寒気が入ってきています。

つまり、一昔前は大気の状態が不安定というと上空5,800mと地表気温(30℃)の差が36℃だったわけですが、現在だと上空5,800mと地表気温(40℃)の差が46℃になるというわけです。地表気温が上昇している分、上空の寒気の影響で積乱雲が発達しやすくなり、激しい気象現象も起こりやすくなっています。

さらに上空の寒気は線状降水帯の発生や維持にかかわる場合もあります。例えば、令和6年7月23日~7月26日にかけて北日本で線状降水帯が発生して記録的な大雨になり、山形県では大雨特別警報が発表されました。

このときは活発化した梅雨前線に加え、上空約5,800mに-6℃の寒気が入ったことで大気の状態が非常に不安定となり記録的な大雨になりました。
このように、近年の異常気象に上空の寒気は深くかかわっているといえます。

上空の寒気の注意点

上空の寒気で注意することは、上空の寒気で発生する積乱雲は急激に成長しやすく、天気も急に変わりやすいことです。

夏の午後に都市部で発生するゲリラ豪雨も上空の寒気が関係している場合が多いですが、朝から昼は晴れていて夕方ごろから急激に曇ってゲリラ豪雨になることも珍しくありません。

天気予報でも「雨」と予想されているとは限らず、「晴」予想でありながらゲリラ豪雨に見舞われるような場合もあります。上空の寒気というワードを見聞きしたら、いつ天気が急変してもおかしくないと身構えておくことも大切です。

上空の寒気に備えるポイント

まずは、気象情報で上空の寒気というワードを見聞きした場合、「天気が急変する可能性がある」ということを覚えておきましょう。雷注意報や大雨注意報、大雨警報などの注意報や警報の発表に注意しつつ、屋外にいる場合は雨雲レーダーを使って周囲に活発な積乱雲がないかも、こまめにチェックすることをおすすめします。

また、最近は上空の寒気予想サービスを提供する気象会社も増えています。上空の寒気予想をチェックすることで、大気の状態がどれくらい不安定なのかどうか判断できます。ちなみに、上空の寒気予想では高度ではなく「850hPa」や「500hPa」などhPaで表されています。

500hPaが高度5,000m~6,000m付近となるため、大気の不安定さを確かめたい場合は500hPaの寒気予想をチェックしましょう。

・夏の目安:-6℃以下でゲリラ豪雨や突風、竜巻の可能性
・冬の目安:-30℃以下(北陸や北日本は-36℃以下)で大雪の可能性

<上空の寒気予想を提供している会社>
・吉田産業海洋気象事業部
500hPaで薄いブルーに色づけされている部分は大気の状態が不安定、濃いブルーに色づけされている部分は大気の状態が非常に不安定。7日先まで3時間ごとの上空の寒気の推移がわかる。

・マリンウェザー海快晴
500hPaで薄いブルーに色づけされている部分は大気の状態が不安定、濃いブルーに色づけされている部分は大気の状態が非常に不安定。11日先まで3時間ごとの上空の寒気の推移がわかる。

・ウェザーニュース
6℃ごとに等温線が描かれていて細かく上空の気温がわかる。翌日にかけて3時間ごとの上空の寒気の推移がわかる。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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