小さな子どもたちがこれから社会をサバイブしていくにあたりさまざまな場面で出会うことになるであろう「ルッキズム」。親として何ができるでしょうか? 美容をメインにフェミニズムやジェンダーなどに関する発信を行う長田杏奈さんを迎え、読者から寄せられたモヤエピソード・お悩みにアドバイスをもらいました。第2弾となる今回のテーマは「整形」。ハードルが下がってきた昨今、もし子どもに「整形したい」と言われたらどう答えますか?教えてくれた人
長田杏奈さん 美容ライターおさだ・あんな 大学卒業後、ネット系企業の営業や週刊誌の編集を経て、フリーランスの美容ライターに。「美容は自尊心の筋トレ」をモットーに、女性誌やwebメディア等で多くの記事を執筆中。著書に『美容は自尊心の筋トレ 』(Pヴァイン)がある。ふたりの子どもを子育て中。
“子どもとルッキズム”のリアル読者ママにアンケート調査!
Q1 お子さんは、自身の見た目のことで気になることや悩みがありますか?
読者ママアンケートによると、子どもが気にしている見た目の具体例として、背や体格が大きい・小さいこと、体毛が多いこと、肌色が黒いこと、パーツとしてはまぶたが一重・二重が不安定しないこと、鼻の形(丸いなど)、顔の形(エラ張りなど)、歯並びやガミースマイルなど、多岐にわたって挙げられた。
Q2 きっかけはどこで・誰の影響だと思いますか?
この質問には、動画サービス・SNS・TVといったメディアがきっかけになっているとの回答が約半数を占めており、小さい子どもたちにもたらす影響の大きさを窺い知る結果に……。見た目にまつわる悩みが具体的に顕在化している現況や、コントロールが難しいメディアとの付き合い方について、親として何ができるでしょうか。
ママ読者の疑問&お悩みに長田杏奈さんがアンサー!
次は、読者ママから寄せられた子どもの見た目悩みにまつわるモヤモヤについて、美容をメインにフェミニズムやジェンダーなどに関する発信を行うライターの長田杏奈さんにアドバイスをいただきました。
Q.子どもに「整形したい」と言われたら?
「整形が当たり前になっている昨今、子どもに『整形したい』と言われたらどう答えればいいのか……など今から勝手に悩んでいます。(2歳・女の子ママ)」
A.頭ごなしに否定せず、一緒に考えよう
「整形したい」という気持ちを頭ごなしに否定せず、また、「気にしないで」と一言で解決しようとせず、どうしてそう思うのか、子どもの言葉に耳を傾けてみてほしいです。
整形したいという気持ちの背景には「いますぐどうにかしたい」というはやる気持ちがあるのかもしれません。でも、小・中学生は心身ともに大きく変化する時期。あまりにも早い段階で整形手術をすると、成長過程の変化によって想定していたバランスと違ってくる可能性があります。また、失敗や合併症のリスクもゼロではありません。長い目で見たときにどうなのか、冷静に情報を整理するのも大人ができるサポートのひとつです。そもそも、どうして整形をしたいのか、どんなきっかけでそう思うようになったのか、整形をしないと悩みが解消されないのか、話を遮らずに一度言い分や経緯を聞いてみてほしいです。どのみち未成年が整形手術を受けるには保護者の同意書が必要になります。すぐに答えを出そうとせず、時間をかけてお互いが納得するまで話し合うといいのかなと思います。差し向かいでの話し合いが難しいときは、親子カウンセリングも選択肢のひとつ。それとは別に、日頃からお子さんの長所や内面に意識を向けられるような声かけの積み重ねも大切です。
最近は整形だけでなく、キッズ脱毛も増えてきました。小学3、4年生ぐらいになるとホルモンの影響で人によっては急速に体毛が増えたり、濃くなったりするので、気になり始める子どももいます。キッズ脱毛は大人が受けられる医療レーザー脱毛と違って、肌への負担や痛みを最小限に抑える一方、毛の成長を一時的に遅らせたり薄くするような施術が主流。個人的には費用対効果に疑問があるかな……。長期的に体毛が気にならない社会を目指したいのはもちろんだけど、目下の課題として、「水泳や体育の時間が憂鬱」「ハイソックスしか履きたくない」と悩んでいるようであれば、デリケートな肌にも負担が少ない顔の産毛剃り用の電動シェーバーでしのぐのも手。
メディアの影響を話し合い、上手な付き合い方を考える
「平行二重に整形したい」、「毛は恥ずかしいから脱毛したい」と悩む背景には、メディアやSNS、広告の影響が大きい。手を変え品を変え脱毛や整形を呼びかけ、子どもたちのコンプレックスを刺激する。だから、「自分を変えたい」と思うことが悪いのではなくて、社会がそう思わせているんだという構造には、親子で意識的になりたいものです。特にヨーロッパはルッキズムの悪影響についての危機意識が高く、若者の心身の健康や命を守るために国家レベルでさまざまな法律や施策を行う国も。たとえば、フランスでは修正加工を施した商業用写真には「レタッチフォト(加工写真)」と表示をするよう義務化されていたり、BMI値が低すぎるモデルの起用を制限する法律があります。その背景には、摂食障害に悩む女性が急増し、若い女性の死亡原因として交通事故に次ぐ2位が摂食障害という深刻な社会問題が。また、フランスにはインフルエンサー規制法案があり、インフルエンサーは若者の心身に害があるとされる美容整形のPRはしてはいけないことになっています。
日本でも2023年から法律に基づく規制が開始され、「PR表記」 が一般的に用いられるようになりましたが、SNSには美容クリニックやインフルエンサーによる施術写真や動画があふれていて、欧米に比べて社会全体の危機感が足りないように感じます。他国の例を踏まえると、あまりに無防備なのも怖い気がしませんか? メディアやSNSで受け取る情報を鵜呑みにしないこと、正しい情報ばかりが流れているわけではなく、私たちの心身を損なう危険性も潜んでいるのだということも伝えられたらいいのかなと思います。