「親孝行がしたい」多くの方がそう思うのではないでしょうか。
筆者の知人A子は「孫の顔を見せること」が親孝行だと信じて疑いませんでした。
しかし、実際は少し違ったようです。
彼女の話を聞いて、改めて「親孝行とは何か」考えさせられました。
良かれと思った帰省、まさかの落とし穴?
3人の子供を持つA子にとって、実家への帰省は年に数回の恒例行事でした。
「孫の顔を見せるのが親孝行」そう信じて、毎年欠かさず帰省していたのです。
実家では、母が腕によりをかけた料理を振る舞い、子供たちの面倒も見てくれました。
子供の成長は嬉しいけれど、親の変化に気づいて……
子供たちが成長するにつれて、実家はますます賑やかに。
子供たちが走り回って騒ぐので、食事の準備や後片付けもひと苦労。
そんな中、A子は少しずつ両親の変化を感じ始めます。
「最近、目がかすんでね」「膝が痛くて、長い時間立ってられないのよ」70代の両親からそんな言葉を耳にする機会が増えたのです。
気にはなりつつも、「こんなときだからこそ、孫の顔を見せて元気を出してもらわなくちゃ」とA子は帰省の回数を増やしました。
それが親孝行だと信じて疑わなかったのです。
「お母さん、帰省のあといつも寝込んでいるよ」妹の言葉にハッとした
ある日、実家で両親と暮らす妹から、思ってもみなかったことを告げられることに。
「お姉ちゃんたちが帰ったあと、お母さんもお父さんも、2人そろって寝込んじゃったんだよ。本当は毎回ぐったりみたい。でも、お姉ちゃんに心配かけたくないから、言えないみたいで……」
A子は愕然としました。
孫たちは確かに可愛い。
けれど、高齢の両親にとって、長時間の子供の世話は大きな負担になっていたのです。
それなのに、A子は「親孝行」と思い込んで両親に無理をさせていたことに気づきました。
母は疲れていても「帰ってきてくれて嬉しい」と笑顔を見せてくれましたが、本当はつらかったのかもしれない。
そう思うと、A子は胸が締め付けられる思いでした。
帰省の形を変えて、本当の親孝行を
妹の言葉をきっかけに、A子は帰省の仕方を見直すことにしました。
これまでの「孫を見せる」中心の帰省から、両親の負担にならないような訪問に切り替えたのです。
例えば、宿泊は短くしたり、食事は外食にしたり、家事は積極的に手伝ったり。
ときには、両親だけで旅行を楽しんでもらう時間も作りました。
A子は、親孝行のつもりでしていたことが、実は親に負担をかけていた事実を反省。
これからは両親の気持ちに寄り添って、無理のない範囲で喜んでもらえることをしたいと考えています。
【体験者:40代・女性主婦、回答時期:2025年1月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Yumeko.N
元大学職員のコラムニスト。専業主婦として家事と子育てに奮闘。その傍ら、ママ友や同僚からの聞き取り・紹介を中心にインタビューを行う。特に子育てに関する記事、教育機関での経験を通じた子供の成長に関わる親子・家庭環境のテーマを得意とし、同ジャンルのフィールドワークを通じて記事を執筆。