人間誰もが何かしらのコンプレックスを抱えているもの。それは時に悩みの種となり、精神を蝕んでいく。しかし一方で、自分を深く見つめるキッカケや、前に進む原動力になることもあるのではないだろうか。本稿で紹介する3つの作品は、コンプレックスと向き合い、乗り越えてきた人たちの物語だ。
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まとめ記事の目次
40キロ痩せても幸せになれなかった話
自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ
アゴが出ている私が彼氏に救われるまで
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40キロ痩せても幸せになれなかった話
痩せれば幸せになれる……。そんな風に思っている女性は多いはず。『40キロ痩せても幸せになれなかった話』(やじまり/祥伝社)は、タイトルの通り40キロのダイエットに成功した著者・やじまり氏の実話を基にしたコミックエッセイ。「幸せになりたい」と思うあまり本質を見失ってしまった彼女の経験談が描かれていく。
昔から食べることが大好きだったやじまり氏は、中学生になった頃には制服のスカートがはけなくなるほど太っていた。特に気にすることもなかったが、女子校の友達に恋人ができたと聞き、そこから異性との付き合いに憧れを抱いていく。しかし恋愛に無縁だった彼女は、次第に「彼氏のいない自分は幸せではない」という考えに囚われる。そしてある時、男性の心無い会話を聞いてしまったやじまり氏。「太っている自分がだめなんだ」と思うようになっていき、やがてダイエットを決意するのだった。
これで私も幸せになれる……かと思いきや、そんな彼女を待ち受けていたのは、かつて思い描いていた幸せではなかったのだ。やじまり氏の努力は決して悪いことではなかっただろう。ただ理想を追い求めるあまり、自分の本当の気持ちが見えなくなっていた。同じような悩みを抱えている人、似た経験がある人にこそ読んでもらいたい1冊だ。
自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ
人気イラストレーターのhara氏が自身の体験に基づいて描いた『自分サイズでいこう 私なりのボディポジティブ』(hara/KADOKAWA)。タイトルにある“ボディポジティブ”とは、「自分の体をありのままに愛そう」という考え方である。
hara氏は中学時代に無茶なダイエットを試み20キロも体重を落とすものの、それが原因で過食症になってしまう。高校時代には体重が30キロ増え、大学時代には過食嘔吐がやめられず、手に吐きダコができるほどだった。しかし“ボディポジティブ”の考え方に出会ったことで、自分自身の体を受け入れてもいいと思えるようになり、少しずつ前向きになっていく――。
自分のありのままを受け入れる。人によってはそう簡単なことではないかもしれない。しかし、悩みながらも自分の心と体が心地よいものを選んでいければ、きっと人生はより良いものになっていくはず。hara氏がどうやってボディポジティブを受け入れていったのか、ぜひ彼女のマインドを参考にしてみてほしい。
アゴが出ている私が彼氏に救われるまで
『アゴが出ている私が彼氏に救われるまで』(枇杷かな子/KADOKAWA)では、長年コンプレックスに苦しみ続けてきた著者が、自分を少しだけ受け入れられるようになるまでのエピソードが描かれていく。コンプレックスは簡単には消えてくれないけれど、もしも誰かが肯定してくれたなら……。
「私はアゴが出てる。ヤスリで削りたい、叩いてなぐって引っ込めたい。好きな人に絶対見られたくない」。そんなコンプレックスを幼少の頃から抱えていた主人公。高校生になって彼氏ができても、彼の前ではクセのようにアゴに手を添え、横顔はあまり見せないようにしていた。しかし彼は、なんでもない顔で「俺…そこ好きだけど?」と著者のコンプレックスであるアゴを全肯定。それが今の夫である。
著者が夫にしてもらって嬉しかったエピソードがたくさん詰められている同作。同じようにコンプレックスを抱えている人にこそ、ぜひ読んでもらいたい。きっと救われたような気持ちになれるはず。読み進めるたびに温かい気持ちになれるので、心が冷えてきた時にもオススメだ。
コンプレックスを受け入れるのは、決して簡単ではない。ただ少し考え方を変えるだけで、気持ちがグッと楽になることもあるだろう。そんな力を持った作品をぜひ手に取ってもらいたい。
文=ハララ書房