Text by ライター
男子日本代表は19日、埼玉スタジアム2002でFIFAワールドカップ(W杯)2026アジア最終予選(3次予選)の第7節バーレーン代表戦(20日、午後7時35分、埼玉スタジアム2002)に向けたトレーニングを行った。
森保一監督の下、5勝1分けの状況でW杯出場へ王手をかけたサムライブルー。勝てば無条件で8大会連続8度目のW杯出場が決まり(引き分けでも他会場の結果次第ではW杯出場へ)、日本代表史上最速となる。
トレーニング3日目にとなったこの日は26選手が練習に参加。今月17日に追加招集となったFW町野修斗(ブンデスリーガ、ホルシュタイン・キール)は2023年3月に行われたキリンチャレンジカップ2023コロンビア代表戦(1●2)以来のA代表復帰となった。
もう一度日本代表へ入るために決意したドイツ移籍
町野は再び日の丸を背負うために、ドイツの地で己を高め続けていた。
2022年夏に行われたEAFF E-1選手権の香港代表戦でA代表デビューを果たすと、2得点の活躍で6-0の勝利に貢献。その試合をきっかけに森保ジャパンへ呼ばれるようになったストライカーは、同年11月に行われたカタールW杯を戦うメンバーにも選出された。
しかしW杯出場の目標はかなわず、チームはベスト16で敗退。町野自身は2023年3月のコロンビア代表戦を最後にサムライブルーからは遠ざかっていた。
それからおよそ4カ月後、J1湘南ベルマーレに在籍していた町野は「日本代表に入るため」と、自身初の海外挑戦を決断した。
移籍先となったキールは当時ドイツ2部リーグで戦っていた。
町野は「僕が少し落ちぎみになってビルドアップに参加しないと、攻撃が組み立てられない。そういう立ち位置にいるチームなので、代表とのズレはあった」と、クラブが勝つために慣れないプレーをする必要があった。
また、異国での挑戦はプレー面以外でも―。
ストライカーは「キールは人工芝でたまに練習したり、どんな状況でも水のシャワーが出てきた」と環境面での苦労を吐露。真冬には氷点下を下回る北国で心技体を鍛え続けた。
日本代表に戻るためならばと、歯を食いしばってきたストライカー。すると移籍初年度ながら、2部リーグ戦31試合に出場し5得点6アシストを記録。キール史上初となるブンデスリーガ昇格に貢献した。
「(日本代表に)呼ばれなくてもやるしかない。どんな状況でもチームのためにというのは当たり前のことなのでそれを続けた」と目の前の一戦、一戦に集中してきた。
そして今季はブンデスリーガでここまで24試合7得点2アシスト。欧州トップレベルでも通用すると証明したストライカーへ、ついに吉報が届いた。
W杯出場を決める、そしてチャンスをつかむ
日本サッカー協会(JFA)は今月17日、アジア最終予選を戦う日本代表のメンバーに町野を追加招集すると発表。「(日本代表に)戻ってこられて良かった」とストライカーは素直な気持ちを打ち明けた。
「(日本代表)活動の前には結果を残すことをとても意識していました。代表のために自チームで戦ってきましたし、そのためにヨーロッパで挑戦しているので、常に意識はしていました」とドイツでの活躍が認められた。
所属チームはブンデスリーガ18位に沈み、残留争い真っ只中のキールでは、コーナーキックのプレースキッカーを任されるほか、ロングボールを投げられる貴重な戦力として重宝されるなど、得点以外の活躍も目立っている。
しかし日本代表のユニフォームを着た町野に求められるものは、あくまでフォワードとしての貢献だ。
戻ってきたストライカーは「(キールでは)前で(身体を)張って、ポストプレーをして、また前に入っていくシーンが増えてきました。森保さんからは『そこを評価している』『そこを観ている』と言われました。代表ではワントップで出すというのも言われているので、(キールとの)役割の違いをしっかりと理解した上でプレーしたいです」と、指揮官の要望に応えたい。
町野にとっては初となるアジア最終予選、目の前に控える一戦はW杯出場を懸けた大一番だ。
今回の追加招集にあたり、時差ボケへの対応といった苦労もあったが、「最後の最後というか…。あと1勝のところまできている中で、(日本代表に)呼ばれたことはチャンスだと思いますし、楽しみたい」と誰よりも燃えている。
ここで勝って、W杯出場を決める。そして今度こそW杯の舞台で結果を残す。虎視眈々とゴールを狙う町野は「(日本代表に)残っている常連の選手は常にチャンスをつかんできた選手たち。僕もチャンスをつかめるようにしっかり準備したい」とゴールチャンスを一つも逃さない。
(取材・文・一部写真 浅野凜太郎)