筆者の話です。トイレットペーパー購入時についていたシールで、製紙会社の懸賞に応募しました。島暮らしの両親の負担を減らせるかもしれないと思い、実家の住所で申し込んだのです。
思いがけない当選
ある日、母から 「大きな箱が届いたよ」 と連絡がありました。 何のことかわからず首をかしげたのですが、箱を開けると 「当選おめでとうございます」 の文書とともに、12個入りのトイレットペーパーが6パックも詰められていたとのこと。
「ああ、懸賞に応募してたんだった!」
私はようやく思い出し 「しばらく買わずに済むね」 と母に伝えました。 母も 「助かるわ」 と喜んでくれていました。
予想外の展開
1ヶ月後、帰省前に母へ 「何か買っていくものはある?」 と尋ねると 「トイレットペーパーを買ってきて」 と言われました。
「えっ? もうなくなったの?」
驚いて聞くと、母は笑いながら 「近所のお返しに使ったのよ」 と言ったのです。
「いやいや、それ、使ってほしかったのに!」
私は思わず声を上げました。 せっかく送ったのに、配ってしまうとは思っていなかったのです。
母の「助け合い」精神
理不尽だなと思いつつそのまま買い物を済ませ、実家へ向かっていると、近所の人たちに出会いました。 すると、口々に声をかけられます。
「お母さんにトイレットペーパーもらったよ。助かったわ、ありがとう!」
「うちもちょうどなくなるところだったから、ありがたかったよ!」
そう言いながら、近所の人たちは笑顔を向けてくれました。そして 「これ持って帰って」 と、とれたての果物を手渡してくれる方も。
「ああ、そういうことか……」
母は、自分が楽をするためではなく、日頃から支えてくれる人たちへの感謝として渡したのだ。
私は 「両親の負担を減らしたい」 と思っていたけれど、それは単なる自己満足。
母にとって、物の豊かさよりも大切なのは、人とのつながりだったのです。
気づかされたこと
私は「買い物の負担を減らせれば」 と考えていましたが、それは単に「自分が買い物に行かなくても済む」 ことへの安心感だったのかもしれません。
母は、同じ環境で暮らす近所の人々もきっと大変なはずだと考え 「助け合い」 の一環としてトイレットペーパーを配ったのでした。
母は 「助け合い」 のある環境の中で暮らしているんだと気づいた瞬間。
自分の考えが浅かったことを反省した出来事です。
【体験者:50代・筆者、回答時期:2025年3月】
※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ltnライター:Kiko.G
嫁姑問題をメインテーマにライター活動をスタート。社宅生活をしていた経験から、ママ友ネットワークが広がり、取材対象に。自らが離婚や病気を経験したことで、様々な悩みを持つ読者を元気づけたいと思い、自身の人脈や読者の声を取材し、記事として執筆。noteでは、糖尿病の体験記についても発信中。