個性あふれる観光列車で日本の魅力を再発見
デザインを凝らした車両で独自のコースを移動しながら、沿線の風景や料理などの味覚を楽しみ、地元の人たちと触れ合う。乗ること自体が目的になるような列車、それが観光列車です。日本各地に多くの個性ある観光列車が走っており、海外からも注目を集めています。様々な国の人に向けたリーズナブルな観光列車が増えれば、鉄道の旅の人気はさらに高まることでしょう。
観光列車の大きな特長は、手軽な旅で日本の魅力を再発見できること。今回は、私がプライベートでも乗車している多くの観光列車の中から、これぞという魅力溢れる列車を厳選しました。ぜひ一度体験してみてください。
海に面した2つのルートで西九州を巡る
◆JR九州「ふたつ星4047」
「西九州の海めぐり列車」をコンセプトに、西九州新幹線の開業に合わせて2022年9月にデビュー。
運行区間は佐賀・武雄温泉~長崎間で、往路と復路でルートが異なり、それぞれ表情の違う海の眺めを楽しめる。
3両編成で1・3号車が客室、2両目に共有スペースや販売カウンターを配置した「ラウンジ40(よんまる)」を連結。
「観光列車=九州のイメージ通り、『これでもか!』と魅力ある要素が詰め込まれています。特におすすめなのは、午後の[大村湾コース]で、車内で焼き立てが食べられるスフレが絶品。嬉野茶を飲み比べする車内体験などもあります」(鉄道ジャーナリスト渡部史絵)
JR九州「ふたつ星4047」
ルート/[有明海コース(武雄温泉→江北→肥前浜→多良→小長井→諫早→長崎)]4,680円、[大村湾コース(長崎→諫早→新大村→千錦→ハウステンボス→早岐→有田→武雄温泉)]5,000円
【問い合わせ先】JR九州
https://www.jrkyushu.co.jp/
戦国時代に思いを馳せ、信濃路を満喫する旅
◆しなの鉄道「ろくもん」
2024年に10周年を迎えた「ろくもん」は、信濃国上田(現・長野県上田市)をルーツとする武将、真田幸村をはじめとする一族、真田家がモチーフとなった観光列車。
列車名はその家紋「六文銭」にちなむ。戦国時代の合戦を思わせる法螺貝の合図で発車し、軽井沢と長野を結ぶルートを小諸や上田などに停車しながら運行。
食事付きプランもあり、信州の美しい風景と山の幸を堪能できるとリピーターも多い。
「最大の魅力は人の温かさ。専任アテンダントの目配り、気配りが素晴らしく、降車時には一人ひとりに挨拶してくれます。心のこもったおもてなしに毎回感動します」(渡部)
しなの鉄道「ろくもん」
ルート/[食事付きプラン 洋食コース(軽井沢→長野)]、[食事付きプラン 和食コース(長野→軽井沢)]各18,500円
【問い合わせ先】しなの鉄道
https://www.shinanorailway.co.jp/rokumon/
貸し切り可能な車両を備えた観光列車
◆JR四国「伊予灘ものがたり」
伊予灘の海を間近に眺めながら、四国愛媛の伝統工芸や地元のグルメが堪能できる観光列車。2022年にリニューアルし、従来の2両編成から3両編成に。
1号車と2号車は全席指定のグリーン車。3号車の“フィオーレスイート”は、「大切な人と過ごす時間と空間」のコンセプトのもと、2名から最大8名まで利用できる貸切個室になっている。
「1両を丸ごと貸し切りもできる観光列車。家族や友人で貸し切れば、格別の旅になること間違いないと思います」(渡部)
アテンダントの細やかなサービスや沿線の人々による趣向を凝らしたおもてなしも人気が高い。
JR四国「伊予灘ものがたり」
ルート/[大洲編(松山→下灘→伊予大洲)][双海編(伊予大洲→下灘→松山)]各3,980円、[八幡浜編(松山→下灘→伊予大洲→八幡浜)][道後編(八幡浜→伊予大洲→下灘→松山)]各4,330円 ※すべて1、2号車を利用した場合
【問い合わせ先】JR四国
https://iyonadamonogatari.com/
新たなルートでひと味違う山陰の景色を堪能
◆JR西日本「あめつち」
「ネイティブ・ジャパニーズ」をコンセプトに誕生し、列車名は『古事記』の書き出し「天地(あめつち)の初発のとき」に由来。
山陰の海と空のような紺碧色の車体が印象的で、客室には因州和紙や安来織といったこの地方の伝統工芸品がちりばめられている。宍道湖などでは眺望が楽しめるよう徐行運転を行うサービスも。
「2024年4月に木次線と山陰本線(鳥取~城崎温泉駅間)にも運行を拡大し、思わずほっとするような山間部や田園など、今までとは違った山陰の景色が楽しめるようになりました。事前予約が必要ですが、“あめつち御膳”などの食事も魅力的です」(渡部)
JR西日本「あめつち」
ルート/[山陰本線(鳥取~出雲市駅間)]980円~4,630円、[木次線(米子~出雲横田駅間)]980円~2,980円ほか
【問い合わせ先】JR西日本
https://www.westjr.co.jp/
人気の五能線を走り、日本海の絶景に出会う
◆JR東日本「リゾートしらかみ」
「一度は乗ってみたいローカル線」と称される五能線を経由し、秋田と青森を約5時間かけて結ぶ。
「海と山の絶景が魅力です。特に、緩やかなカーブが続く海岸線では、車窓から日本海に沈む夕陽の壮大な眺めを楽しむことができます」(渡部)
「橅」の車体デザインは白神山地のシンボルツリー、ブナの木立と木漏れ日をグリーンの濃淡で表現し、客室の内装にもブナをはじめ秋田産の杉、青森ヒバなどの木材がふんだんに使われている。
津軽三味線といった郷土芸能のイベントや地元の人たちが車内で特産品を販売する「ふれあい販売」も人気を集めている。
JR東日本「リゾートしらかみ」
ルート/[秋田~東能代~五所川原~川部~新青森~青森] ※主要駅5,350円(秋田駅~青森駅間)
【問い合わせ先】JR東日本
https://www.jreast.co.jp/railway/joyful/shirakami.html
江戸の情緒をまとった現代的な車両で日光へ
◆東武鉄道「スペーシアX」
都心と日光・鬼怒川エリアを結ぶ「特急スペーシア」の進化系として2023年に登場した新型特急。現代的なデザインの随所に江戸文化や日光の要素を取り入れている。
シートバリエーションも豊富で、特にプライベートジェットをイメージしたという最上級のシート“コックピットスイート”は、前方と側面の窓に抜群の展望が広がる贅沢な空間。
「環境に配慮した豪華特急列車で、優雅なラウンジ型の1号車や、まさに走るスイートルームといえる“コックピットスイート”の6号車など、6種類の空間をすべて楽しんでほしいです」(渡部)
東武鉄道「スペーシアX」
ルート/[浅草~東武日光・鬼怒川温泉]4,030円 ※浅草~鬼怒川温泉間でコックピットラウンジ(1人用)を利用した場合
【問い合わせ先】東武鉄道お客さまセンター
電話番号 03-5962-0102
https://www.tobu.co.jp/spaciax/
渡部史絵(わたなべ・しえ)
[鉄道ジャーナリスト]鉄道雑誌をはじめ、新聞、テレビ、ラジオなどのメディアで鉄道の魅力を発信。精力的に講演活動も行う。『鉄道なんでも日本初!』(天夢人)ほか著書多数。
文=ジラフ