はじまりはヨガ。ヨガからつながった宮古島のハーブ
– Paniさんは、店舗運営だけでなくヨガインストラクターをされているんですよね。
Paniさん: はい。8年ほど前に、地域のお子さんやご年配の方々を支援するボランティアをしていたんです。そこで、ご年配の方々とお話をしている時によく聞くのが「腰が痛い」「膝が痛い」といったことでした。何気なく「ヨガがいいらしいですよ」とお伝えしたところ、「それなら、あなたが教えてよ」と言われて。実はそれまでヨガの経験はゼロだったのですが、とりあえずインストラクターの資格をとりに行ってみようと思って、はじめました。
– ヨガインストラクターの多くは自分のためにヨガをはじめられてから、「誰かのために」と資格を取りに行くという話をよく耳にします。一方で、Paniさんの場合は最初から誰かのためにヨガをはじめられたんですね。ヨガを教えるようになってから、何か変化や感じることはありましたか?
Paniさん: ヨガを通して、セルフケアは体だけでなく内側から整えることなんだということに気づけたことは、とても大きかったと思います。私は子どもが2人いるのですが、子育てをする中で、おそらくずっと苦しかったんだと思うんです。それにも気づかないくらい、毎日バタバタしていて…けれど、ヨガを通してペースを落として、自分自身と向き合うことの大切さがとても分かるようになりました。それから、色々身の回りのことに目を向けられるようになったと思います。
– 毎日バタバタしているというのは、とてもよく分かります。自分のことは後回しにされている方は多いですよね。例えば、どんなことに目を向けるようになりましたか?
Paniさん: 一つは、食生活です。心身にとってなるべく優しいものを口にするようになりたいと思いました。また、負担がなく毎日続けられるものは、どんなものだろうと考え、たどり着いたのが、ハーブでした。
View this post on Instagram
肌がきれいになる?宮古島のハーブの特徴
– 最初は、どういったハーブからはじめられたんですか?
Paniさん:もともとモリンガが好きだったので、色々な国のモリンガを飲むようになりました。その中で、一番美味しかったのが、私の出身地の宮古島で無農薬栽培されているモリンガでした。モリンガおじさんと呼ばれている川満さんのモリンガです。
– お店で取り扱っているモリンガですね。
Paniさん: はい。はじめて飲んだ時には、本当に美味しくてとても感動したんです。それでこれを使って何かできないかなと思い、実際にモリンガおじさんの所まで会いに行きました。そこで、色々なハーブの話を聞いたのですが、その中でも特に、月桃に興味を持ったんです。月桃は、女性ホルモンを整えてくれることが期待できるハーブです。私のヨガの生徒さんでも、生理痛など月経トラブルに悩んでいる人も多かったので、こういったハーブが提供できたらいいなと考え、5年前にA post shared by Pani𓇼宮古島のハーブやさん 𖤣実店舗 𖠿埼玉浦和 𖤣オンラインショップ (@pani_385)
View this post on Instagram
– 宮古島のハーブの特徴について教えて下さい。
Paniさん: 宮古島は、沖縄本島と石垣島に挟まれた離島です。山もなく、川もありません。平たいサンゴでできた石灰でできた島なのですが、これが、ハーブ、特にモリンガに適していると考えられています。
– Paniさんが幼少期から高校生の時まで、宮古島に住んでいた時には、モリンガはあったんですか?
Paniさん: なかったんですよ。モリンガおじさんは、宮古島でモリンガ栽培をはじめた第一人者と言われているのですが、15年ほど前に宮古島の土壌調査をして、モリンガ栽培をはじめられました。本当に手間暇をかけて、愛情を注いで育ててくださっています。実は、私の実家は兼業農家です。だからこそ、農薬を使わないものが良いのは分かっているけれど、農薬をある程度使わないといけないことも分かります。無農薬栽培は本当に重労働で、手間暇がすごいから。使わないと生活がやっていけないということもあります。その厳しさが分かるからこそ、それをせずにモリンガを無農薬でずっと育てていることは、とてもありがたいことだと思います。
– すごいですね。美味しい食べ物を食べている時に「美味しい」と思うことはありますが、その裏ではたくさんの工夫や労力がかけられているんだと思うと、もっと色々なことを知らないといけないなと思います。
Paniさん: そうですよね。実は、お店のオープンの時、モリンガがほぼ取れなくなった年なんですよ。売るものがないと思って大ピンチでした(笑)。それで、瓶に小分けにして。ちょっとの量を売るようにしました。モリンガは、葉が柔らかいので、風が強いと駄目になってしまうんです。周りからは「他の農家さんの薬草も取り扱った方がいいんじゃない?」と言われることもあったのですが…やはり宮古島のモリンガおじさんのモリンガに、こだわりたいと思っているんです。
– Paniさんご自身が、モリンガおじさんのモリンガや月桃を生活に取り入れるようになって変わったことはありますか?
Paniさん: 一番変わったのは、肌質ですね。実は、ハーブを毎日飲むようになるまで気づかなかったんですけど、それまでとても肌がくすんでいて、でもその当時はそれが普通だと思っていて。今考えると肌が分厚くて、肝斑もひどかったですね。ファンデーションでも隠しきれないほどでした!それが、ハーブを毎日少しずつ飲んだり、あとはハーブ蒸しをするようになったら、肌の透明感が増して、ツヤが戻ったような気がしています。
– お茶を飲んで、ハーブ蒸しをするだけで、肌質が変わるのはいいですね!
Paniさん: そうなんです。また、お茶を飲む時間を作ること自体がセルフケアだと思っています。忙しい現代社会で、お茶を淹れるということもなかなか難しかったりするじゃないですか。忙しく、時間に追われている中で、お茶を淹れるということ自体、ハードルが高いように感じます。けれど、そんな忙しない中でも、お茶の時間を確保することで、心に余裕が生まれ、考え方が優しくなったような気がしますね。
健康に興味のない人たちに注目されるために、Paniさんがしたこととは?
– 『Pani』では、宮古島で育った無農薬のモリンガや月桃といったハーブを中心に取り扱われていますが、「スパムおにぎりの日」というのもありますよね。私のイメージのスパムおにぎり=ハワイ、だったので少し意外でした。宮古島の方々は、スパムおにぎりをよく食べるんですか?
Paniさん: 実は、宮古島は缶詰文化がとても根付いている地域。それは、やはり離島なので食料品が入ってきづらいからです。また台風が来たら船が入らなくなるので、スーパーには何もなくなってしまいます。加えて、沖縄はアメリカ文化に強く影響されている土地なので、缶詰のスパムは各家庭に必ず常備されています。いわゆる、ソウルフード的な感じで、スパムおにぎりはよく食べられてます。ただし、私がお店でスパムおにぎりを販売する時は、なるべく自然なものをと思っていて、ゴーヤだったり、もずくの佃煮を使ったりと工夫しています。
View this post on Instagram
– スパムおにぎりの日を作ったのには何か理由があったのでしょうか?
Paniさん: 一番大きな理由は、健康に意識が向いていない方を迎えたいと思ったからです。例えば、ヨガを習慣にしている方は、もともと健康に興味のある方が多いじゃないですか。だから、ハーブにも馴染みがあったり、興味を持ちやすいと思います。一方で、一般的な方が、ハーブに興味を持つかと言ったら、そうでもないと思うんです。ヨガをやっている方の感覚と一般の方の感覚には、かなり差があるなと思っています。私は、そういったヨガや健康にまだ意識が向いていない方々にも、Paniの商品を届けたいと思っているんです。そもそも、届く人だけに届けられたら良いという思いでハーブを売るだけだったら、オンラインだけで良かったと思うんです。店舗がなくてもヨガ関連でインスタでつながった方々がオンラインで買ってくれていましたし、実店舗がなければその分の経費も浮いて、生活は潤っていました(笑)。
– おっしゃることはよく分かります。自分にとって興味のないものには見向きもしないというのは人間の性質のような気がします。スパムおにぎりの日をはじめて、一般の方々から反応はありましたか?
Paniさん: そうですね。沖縄が好きな人だったり、「面白そう」と言って、興味を持ってくれる方が増えていきました。ヨガなんてしたことないようなご近所の方も、スパムおにぎりがきっかけでお店に立ち寄ってくれるようになりました。そういった方々と、立ち話をしていると、意外と「高血圧が気になっていて」とか「妊活をしているんです」というお話をしてくださる方もいらっしゃったりして。それで、ハーブをさりげなくオススメすると、おにぎりと一緒に買っていってくれるようになりました。このようにして、ヨガのクラスだけでは関わらないような方々と出会えるようになったのは、本当に良かったと思っています。おそらく、ヨガの教室や、オンラインショップだけでは、出会えなかった方々にまでリーチできるのは、実店舗の強みなのではないかと思っています。
〈インタビュー後編へ続く〉
【お店情報】Pani
宮古島のオーガニックのハーブを使用したお茶やさん。島の恵みをたっぷり受け育っているのでココロとカラダが元気になります。お茶のほかにも宮古島産"佐渡山さんのはちみつ"や、おばぁが編んだ民具なども販売中!
住所: 〒336-0021 埼玉県さいたま市南区別所3丁目4−1 結晶ビル 201号
Instagram: @pani_385
オンラインショップ: Pani Life
桑子麻衣子
1986年横浜生まれの物書き。2013年よりシンガポール在住。日本、シンガポールで教育業界営業職、人材紹介コンサルタント、ヨガインストラクター、アーユルヴェーダアドバイザーをする傍、自主運営でwebマガジンを立ち上げたのち物書きとして独立。趣味は、森林浴。