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「香取慎吾なら社会的な重いテーマもポップに見せられる」北野拓Pが『日本一の最低男』に込めたメッセージを明かす

  • 2025.3.19
「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」より (C)フジテレビ

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香取慎吾が主演を務めるドラマ「日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった」(毎週木曜夜10:00-10:54、フジテレビ系/FOD・TVerにて配信)が3月20日(木)に最終話を迎える。本ドラマは元テレビ局の報道マンである大森一平(香取)が、義理の弟・正助(志尊淳)とその子どもたちとひとつ屋根の下で暮らしながら、家族を、社会を、そして日本を変えていくために奮闘する姿を笑いあり涙ありで描くヒューマンドラマ。このたび、WEBザテレビジョンでは、同作のプロデューサーを務める北野拓氏にインタビューを実施。キャスティングや制作秘話、また最終話の見どころなどについて語ってもらった。

香取さんの陰の面と陽の面、2面性の魅力を引き出したいと思いました

――まず、本ドラマを制作するに至った経緯を教えてください。ホームドラマの要素も、選挙に出馬する政治ドラマの要素もありますが、出発点はどこからだったのでしょうか?

出発点としては家族ドラマなんですが、日々の生活の問題は政治につながっていて、個人で解決するには限界があると感じ、必然的に選挙ドラマをかけ合わせることになりました。

――X(旧Twitter)では毎回トレンド入りを果たすほど視聴者の話題となっていますが、そういった反響をどう捉えていますか?

ありがたいことですし、うれしいです。香取さん演じる主人公が家族ドラマで感じたことを胸に、選挙に出馬するというストーリーの流れを丁寧に描いてよかったと思っています。

――今期の「御上先生」も「パーソナルイズポリティカル=個人的なことは政治的なこと」をキーワードに描いていて、本ドラマとともに「御上先生」も考えさせられる作品だという声がSNSで複数見受けられます。

僕もSNSのコメントで見ています。今の日本の厳しい社会状況の中では、同じテーマでドラマを作る方がいても不思議ではないと思います。

――香取さんと志尊淳さんのキャスティングの経緯についても教えてください。

劇中で裏の顔を見せる陰の面と、ホームドラマを演じると言いつつ、本当に向き合っているように見せる陽の面、香取さんの2面性を1つの作品で同時に見せたいと思いました。「人にやさしく」(2002年、フジテレビ系)の“陽”も、「凪待ち」(2019年)の“陰”も、両方ともに素晴らしいので。さらに言えば、社会的なテーマを背負っているドラマでもあるので、香取さんが演じてくださるならば、重くなり過ぎずにポップに見せられるのではないかという狙いもありました。志尊さんには、香取さん演じる昭和的な価値観を持つ一平と対極にある正助という人物を託しました。佇まいを含めて、好対照でいいのではないかと考えました。

中山美穂さんは香取さんとの共演を楽しみにされていた

――実際に演じられているのをご覧になった感想を教えてください。

香取さんについては、唯一無二の存在感だと思いました。陰と陽の2面性を上手く表現してくださいましたし、相手に合わせられるバランス感覚が素晴らしいです。7話では「こちら葛飾区亀有公園前派出所」(2009年、TBS系)の両津勘吉、9話は「新選組!」(2004年、NHK総合)の近藤勇のイメージで演じたとご本人がおっしゃっていて、香取さんの過去の引き出しを含めて、すべてを出し切ってくださったと思います。志尊さんは子役オーディションにも参加してくださって、その熱量に感動しました。香取さんと志尊さんの二人の関係性も非常に良かったです。

――また、草彅剛さんが約27年ぶりに香取さんと共演されたことや、中山美穂さん、中山忍さんの出演も話題となりましたが、それぞれ感想をお聞かせください。

草彅さんは香取さんと本当の友情があったので、舞台終わりで駆けつけてくださり、ゲスト出演してくださいました。1シーンだけだったんですが、お二人が一緒にお芝居をされている姿に胸が熱くなりました。

中山美穂さんは衣装合わせの時から眼鏡をかけることや衣装の色についてもご提案してくださり、とても意欲的に取り組んでくださっていました。「Love Story」(2001年、TBS系)で共演された香取さんとの久しぶりの共演を楽しみにされていたので、本当に残念でなりません。

中山忍さんは「お姉さまのやり残した仕事を自分が引き継ぎたい」と希望されて、役を引き受けてくださいました。美穂さんと同じメガネやエプロンを身に着けて、一生懸命演じてくださいました。放送後にこの作品が前に進むきっかけになったとおっしゃってくださって、ご出演いただけて、本当によかったと思いました。

分断のその先にあるものが描けていると思うんです

――北野さんは「フェンス」(2023年、WOWOWプライム)や「フェイクニュース」(2018年、NHK総合)などでも報道に携わる人物を描きながら社会に一石を投じる作品を手掛けられてますが、作品を生み出す時のモチベーションを聞かせていただけますか?

沖縄で報道記者をしていた経験が根底にあり、より良い社会を築くにはどうすればいいのか、権力に対してどう立ち向かうのかといった思いがベースにはあります。

――エンタメと社会的メッセージを両立させるうえで気をつけられていることはありますか?

ドラマは感情に訴えかけるのでプロパガンダになりやすく、危険性もあると思っています。ニュースは基本的に事実がないと報道できませんが、ドラマはそれを無視して自分のメッセージのために物語を安易に作ることができてしまうので。僕は丁寧に取材やリサーチをして専門家の監修も入れて、事実を無視しないことはいつも意識しています。

――北野さんがこの作品で1番伝えたいことを教えてください。

伝えたいことは沢山あります。今回は脚本家の蛭田直美さんのおかげで、分断のその先にあるものが描けていると思っています。第7話の柄本明さん演じる一平の父親が登場する回もそうでしたが、古い昭和的な価値観を断罪して終わりとはならず、そこから誰かを否定することなく、さらにその先でわかり合うためにはどうすればいいのかを描いています。そういった意味でも、脚本家の蛭田さんは今の時代に合った作家性をお持ちですし、今後の日本のドラマ界を背負って立つ作家さんになるのではと思います。

――では、最後に最終話のみどころを教えてください。

これまで視聴者のみなさんが疑問に思っていたこと、例えばタイトルの“日本一の最低男”はどういう意味なのか、サブタイトルは誰の目線なのか、一平と真壁の関係性はどうなるのかなど、たくさんの伏線を回収していくところは一番のみどころです。脚本を粘って作ったので、今起きている社会情勢や政治状況をタイムリーに取り込んでいると思っています。蛭田さんの珠玉の脚本、香取さんたちの選挙戦での熱演にぜひ注目していただきたいです。

◆取材・文=入江奈々

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