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安達祐実“りつ”が放った深いせりふ「ひんむきゃ、みんな、人なんて同じ」<べらぼう>

  • 2025.3.19
女郎屋の女将・りつを演じる安達祐実 (C) NHK

【写真】瀬川(小芝風花)は身請けされて瀬以と改名

横浜流星が主演を務める大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜夜8:00-8:45ほか、NHK総合ほか)。3月16日に放送された第11回「富本、仁義の馬面」で、女郎屋の女将・りつ(安達祐実)のせりふが注目される場面があった。(以下、ネタバレを含みます)

数々の浮世絵師らを世に送り出した“江戸のメディア王”の波乱の生涯を描く

森下佳子が脚本を務める本作は、18世紀半ば、町民文化が花開き大都市へと発展した江戸を舞台に、“江戸のメディア王”にまで成り上がった“蔦重”こと蔦屋重三郎の波瀾(はらん)万丈の生涯を描く痛快エンターテインメントドラマ。

蔦重はその人生の中で喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴を見い出し、また日本史上最大の謎のひとつといわれる“東洲斎写楽”を世に送り出すことになる。

蔦重の幼なじみの花魁・花の井(五代目瀬川)役で小芝風花、蔦重に影響を与える“希代の天才”平賀源内役で安田顕、幕府“新時代”を目指す権力者・田沼意次役で渡辺謙が出演。語りを綾瀬はるかが務める。

過去に吉原で差別を受けた馬面太夫

第11回は、蔦重が女郎屋の親父たちから、吉原で行う俄(にわか)祭りの目玉として、浄瑠璃の人気太夫である馬面太夫こと富本豊志太夫/午之助(寛一郎)を招きたいと依頼された。

馬面太夫を知らなかった蔦重は、大黒屋の女将・りつ(安達祐実)と、富本節好きな義兄の治郎兵衛(中村蒼)と共に芝居小屋を訪れ、その美声に一瞬にして引き込まれた。そして、終演後に交渉しようとするが、「悪いが、俺は吉原は好かねえんだ」と、すげなく断られてしまう。

その後、治郎兵衛とりつの調べで馬面太夫が吉原を嫌いな理由が分かった。まだ売れていなかった頃、歌舞伎役者の市川門之助(濱尾ノリタカ)と一緒に素性を隠して女郎屋の若木屋に遊びに来た馬面太夫。だが、門之助の顔を知っていた客が告げ口をし、若木屋主人の与八(本宮泰風)に「役者なんぞに上がられたら、うちの畳が総取っ替えにならあ」と、水をかけられた挙げ句に追い出されたのだった。

差別される側としての思いも…

当時、役者が女郎を買うために出入りすることは禁じられていた。与八の「役者なんぞ」という言葉に透けて見えるのは差別だ。その差別を治郎兵衛が説明していた。「役者は、分としては四民の外。世間様の外だからだろ」。

四民とは、「士農工商」と分けられた江戸時代の身分制度のこと。「士」は武士、「農」は人口の多くを占める農民、「工」は職人で「商」は商人を指す。武士以外は大きな差はなかったと言われたりもするが、役者はそのどこにも属していなかった。

なぜ役者がだめなのか疑問に思う蔦重に、りつが答えた。

「ほっといたら、みんな憧れられちゃうからさ。売れりゃあ騒がれるし、千両の給金だって夢じゃない。けど、みんなが役者なんか目指したら、まともに働くやつなんかいなくなっちまうじゃないか。そうならないよう、役者は四民の外の分ですよってしたのさ。どれだけきらびやかでも、まっとうに働いているもんが、しょせん世間様の外って吐き捨てられるようにしてるってことさ」。

そこに付け加えた言葉に視聴者の注目が集まった。

「ひんむきゃ、みんな、人なんて同じなのにさ。これは違う、あっちは別って、垣根作って回ってさ。ご苦労な話だよ」。

身分を定めたのは幕府だが、役者に夢中になる者がいた一方で、差別的感情を抱いていた庶民もいる。そこで思い返せば、第8回で地本問屋の鶴屋(風間俊介)が「“吉原者”は卑しい外道」と言ったように、吉原で暮らす者もまた差別されていたのである。

SNSには「差別される側だから至れる真理か」「差別の構造について深いことをおっしゃってる」「『ひんむけば同じ』ってすごいな」といった投稿のほか、差別について「みんなが差別する側であり同時に差別される側」「現代も様々な形で存在し、決して江戸時代の話というだけではない」と憂う声もあった。

◆文=ザテレビジョンドラマ部

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