掃除をするのが手間な家電の一つである「電子レンジ」。料理や食材を温めたときに噴きこぼれたり、飛び散ったりした汚れが庫内に付着し、ニオイが発生することもあり、できればこまめに掃除をしたいものです。そんな電子レンジの掃除について、「レモンやレモン水を“チン”すると、簡単に掃除ができる」といったライフハックを聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?
しかし実際のところ、レモンを“チン”することでレンジの中をきれいに掃除できるのか……その真偽について、ハウスクリーニングアドバイザーの有賀照枝さんにお聞きしました。
親油性の高い成分「リモネン」が含まれる
Q.まず、電子レンジ内にたまりやすい汚れについて教えてください。
有賀さん「電子レンジ内にたまりやすいのは、食材や食品を温める際や調理時に飛び散ったり、噴きこぼれたりした汚れや食べ物のカスです。その汚れをそのまま放置して長時間加熱したり、そのまま使い続けたりしていると、庫内に付着した汚れが頑固な焦げ跡としてニオイとともに残ります。また、水分を多く含んだ食品を加熱すると庫内に蒸気が充満し、そのまますぐに扉を閉めて換気を行わないと、乾いて白い水あかになることもあります」
Q.「レモンやレモン水をレンジで加熱すると、庫内が簡単に掃除できる」といったライフハックがよく聞かれますが、実際のところ、この方法は掃除方法として有効といえますか。
有賀さん「軽い汚れやニオイを取り除く掃除方法としては、有効といえるでしょう。レモンの皮の表面には、油汚れに有効で、アロマや香料としても使われる爽やかな香りの成分である『リモネン』が多く含まれています。
レモンをはじめ、かんきつ類の皮に多く含まれるリモネンは親油性が高く、発泡スチロールなどプラスチックや油分を溶かすことができます。そしてレモン汁にあたる果肉部分には、水あかなどに有効な『酸っぱい』と感じる成分のクエン酸が多く含まれています。クエン酸は生臭いニオイ対策にも効果的な成分です。
切ったレモンやレモン水を電子レンジで加熱すると、レモンに含まれる成分と水分が庫内に蒸気として広がります。この蒸気が汚れに付着して、特に乾燥した食品の飛び散りや油分などの汚れを緩め、拭き取りやすくしてくれるのです。また、加熱したレモンから出る香りが庫内をリフレッシュし、気になるニオイを軽減する効果も期待できます。
ただ、長時間放置された頑固な汚れや焦げつきには、レモンだけでは限界があり、別途研磨剤が入った洗剤を使う必要があります」
Q.レモンを使った掃除の方法や、注意点を教えてください。
有賀さん「電子レンジ掃除のためにわざわざレモンを用意しなくても、揚げ物などに添えられた果汁を絞った後に残ったカットレモンで十分です。直接、または耐熱皿にレモンをのせて1分程度様子を見ながらレンジで加熱します。ある程度冷めてレモンを手で触れるようになったら、気になる庫内の汚れをレモンで直接こすって落とし、清潔なクロスなどで庫内が温かいうちに丁寧に水拭きしてください。汚れが落ちたら、庫内に水分を残さないように乾拭きするとよりよいです。
油汚れが気になる場合はレモンの表面の皮部分を、それ以外の水あか汚れには果肉部分を中心に使うとよいでしょう。
張りついた汚れを緩めてラクに落としたい場合は、レモンがかぶる程度の水を入れた器ごと数分レンジで加熱し、そのまま5~10分程度扉を閉じたままにして、水蒸気で庫内を充満させます。その後は同様に、レモンで直接、または加熱してできたレモン水を含ませたクロスを使って、庫内の気になる汚れを落とし、水拭き→乾拭きの順に作業します。
注意事項としては、レモンやレモン水を加熱しすぎないようにすることです。レモンが焦げたり、突然沸騰して爆発する『突沸』という現象が起きてやけどを負ってしまったりする場合があります。加熱途中で様子を確認するとよいでしょう。また、レモン水を加熱する際に金属製の容器やアルミホイルを使用すると、火花が出たり、電子レンジの故障の原因になったりするので絶対に避けてください。
最後に、レモンと一緒に塩素系洗剤を使うことはないかと思いますが、レモン果汁にはクエン酸が多く含まれているので、状況によっては有毒ガスが発生する可能性も否定できません。レモンと塩素系洗剤は同時に使わないようにしてください」
オトナンサー編集部