わたしのお母さんは、わたしたち家族のためにほんとうに毎日毎日、美味しいごはんを作ってくれていた。
今でも帰省するときは、お母さんのごはんを楽しみにしていて、実家に帰る少し前から作ってほしい料理を、リスト化してLINEで送っている。いつも欲張って、あれもこれもと送りすぎてしまい、「そんなにごはんを食べる回数ないから無理でしょ」という返信が来てしまう(笑)
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とある日の特別な朝ごはんが、今でも思い出に残っている。
朝ごはん、昼ごはん、夜ごはんの3食をお母さんは毎日作ってくれていたのだが、朝ごはんはいつもパンだった。理由は、お父さんがパン好きだったからだそうだ。
お母さんの家は、おじいちゃんの気分によって朝食がご飯かパンか、その日によって違っていたらしいが、お父さんの家は昔から毎日、朝はパン派だったらしい。わたしが小学生の頃、一緒に朝登校していた友人から夏のある日、「今日の朝ごはんは、お茶漬けだったから、早く食べられた!」と聞いたとき、すっごく驚いたことを覚えている。
朝食はパンが当たり前だったわたしにとって、朝食にごはん、しかもお茶漬けとはいったいどういうことだ?と衝撃だったのだ。それを聞いて、旅館に泊まったときに出てきた朝ごはんは、卵焼きや焼き魚、ほうれん草のおひたし、お味噌汁、お漬物、白ごはんだったことを思い出し、なんでうちは毎朝パンなのか、お母さんに尋ねた。お父さんがパンが好きだからよ、という返答にわたしは納得できなかったが、その後も相変わらず毎朝パンを食べていた。
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それからというもの、わたしが何度も朝ごはんに和定食のようなものが食べたいとねだっていると、ピアノの発表会という特別な日の朝に、なんといつかの旅館で朝、食べたような一汁三菜のそろった朝ごはんを用意してもらえた。
イベントの日の朝なんて、いつも以上に時間がないにも関わらず、わたしのためにとっても豪華な、そして理想の朝ごはんを準備してくれたのだ。発表会のピアノの出来は覚えていないが、その日の朝食はとても印象的で、その後も何度かお願いした。
大学生になって、健康を意識するようになってからは、パンを控えたくなった。自分で用意するなら朝にごはんを食べても良いと言われ、さすがに一汁三菜を朝から準備する時間はなく、納豆ごはんを食べて大学に行っていた。
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周りの友人のように外食にもっと行きたいな、と思ったときもあったが、クリスマスケーキもおせち料理も毎年、手づくりする家庭で育って、ほんとうに良かったと思う。そのおかげで、ひとり暮らしをしている現在も、毎日お弁当を持っていく習慣や週末に作り置きをする習慣、コンビニにフラっと立ち寄らない習慣がついている。
簡単なパンを焼いたり、最近だと節分の恵方巻きも外で買わずに、自分で作ることができている。料理上手なお母さんの傍で育ったわたしは、ほんとうに恵まれていたのだとひとり暮らしで自炊している今、実感している。
■白百合のプロフィール
自己肯定感高めだけれど繊細。進学校とコロナに奪われた青春を取り戻し中。趣味はカフェ開拓と読書。